ー2章ー 21話 「森に潜む影と、初めての共同戦線」
草陰に潜む怪しい気配。
それが何なのかは確認できていないが、最悪の事態を想定しておくべきだ。
もしもそれが野うさぎ程度の存在ならば放っておけばいいが、イノシシだったらかなりマズい。
前回は住まいから近い場所だったから僕の声が届いたし、偶然錬成も成功したから何とかなった。
しかし今は森の奥……助けなんて来ないだろう。
恐らく向こうもこちらの様子を伺っている。
ならば今のうちに作戦を考えておいた方が良さそうだ。
まずは戦力から。
ガルドは防御型だが、肝心の盾を持っていない。
だけど手に持っている小さいスコップを上手く利用すれば、身を守る事はできそうだ。
リシアは攻撃魔法を使えるが、この森で覚えたての火魔法を放てば森が燃えてしまう。
そうなればこちらも危険に晒される事になるので、リシアの力には頼れない。
そしてルナ。
彼女はヒーラーである以上、何としても守らなければならない。
彼女が居なければ戦況が大きく変わってしまうだろう。
この状況を踏まえた作戦の要は……やはり僕になるか。
僕は小声で皆に今の状況を説明した。
一瞬怯えた表情を見せたが事態を理解し、みんな覚悟を決めたようだ。
そして考えついた作戦をみんなに伝える。
成功するかは分からないが、やるしかない。
ガルドはリシアとルナを自分の後ろへ下がらせ、守りの体勢を取る。
僕は前線で迎え撃つべく、三人の左前方へ立った。
陣形が整った所で、ガルドに石を投げて敵を誘き出す。
出できた敵に僕が斬りかかり、怯んだ隙に錬成の檻に閉じ込めるという作戦だ。
頼む……上手くいってくれ!
震える手を抑え、僕はガルドに合図を送った。
次の瞬間、「うおりゃぁぁぁぁ!」と声を上げ石を投げた!
そんなに力まなくても……って、ウソでしょ!?
僕は掌サイズの石を想定していたのだが、彼は僕の予想の上をいっていた。
両手じゃないと持てないであろう大きさの石を、まるで砲丸投げの選手のようなモーションで、敵目掛けて投げたのだ!
それは綺麗な弧を描きながら真っ直ぐに、だが確実に潜んでいる草陰へと飛んで行った。
そして「ゴンッ」という鈍い音と共に、敵の悲鳴が聞こえた!
よし、命中したぞ!
僕は次の一手を取るために石刃を抜いた。
練習の成果だろう……石刃は僕の体のサイズにピッタリな長さの剣へと変化した。
しかし、重い!
木剣とは比べ物にならない重さだが、扱えない程ではない。
だけど、初めて体感する重い剣を上手く扱えるだろうか?
不安はあるが、やるしかない!
「ガサガサッ……」と音と共に敵が姿を現した!
……やはりイノシシだ!
前回ほどの大きさではないが、明らかに大人のイノシシ。
しかし様子がおかしい。
脳震盪でも起こしているのか、フラフラとこちらに向かって歩いて来る。
これはチャンスだ!
僕は攻撃体勢のまま、イメージを膨らませ檻を錬成した。
するとイノシシの上空に発生した白い光から檻が現れ、音もなくスーッとイノシシ目掛けて落ちてくる。
檻が「ズサッ」とイノシシを捕縛……まだダメージが残っているのか、弱々しくイノシシは座り込んだ。
「やったーー!!」と全員が歓喜の声を上げた。
……ひとまず何とかなった。
僕たちはホッと胸をなで下ろした。
これが僕たち四人の初めての戦いになった。




