ー2章ー 18話 「暖炉のある暮らし 〜森にぬくもりを灯す日〜」
僕は急いで大工さんの元へ向かった。
暖炉なんて異世界の暖房器具としては初歩的な存在なのに……それをどうして今まで見落としていたのだろう。
ここは森……暖炉に必要な薪ならいくらでも作り出せる。
恐らく錬成でも。
大工さんも大工さんだ。
なぜ設計段階から暖炉を組み込んでいなかったんだ?
色々疑問はあるけど、とにかく暖炉を作れないかを話さなくては!
幸い気候的にはまだ夏の終わりといったところ。
冬まではまだ時間の猶予がある。
ここは何としても間に合わせたい。
赤ちゃんの頃はどうにもならなかったが、今は会話も移動もできる。
今年は暖かい部屋で過ごしたいと願うのは、ごく普通の欲求だ。
大工さんの元へたどり着いた僕は、仕事の邪魔にならないように聞いてみる。
「大工さんは何で暖炉を家に作らないの?」
ズバリその答えを聞きたい。
恐らく暖炉は存在しているはず。
なら作らない理由はないと思うのだが……。
「暖炉は上流階級の方に許された贅沢品なのですよ...…我々のような身分の者の家に設置する事は許されていないのです」
そういう理由があったのか!
また新たにこの世界や国の常識を知る事ができたが、随分と傲慢な制度だな。
寒さを乗り切る手段に階級なんて関係ないと思うのだが……まぁそこはいいや。
僕はふとオルセアの言葉を思い出した。
確かこの森は王都領の外。
他の国の領地でもないと以前話していた。
なら、階級なんてものはここでは意味をなさないし、文句を言われる筋合いもない。
……なら暖炉を作れるじゃないか!
僕は大工さんに暖炉を作れると説明した。
大工さんも盲点に気が付いたのか、目を丸くしていた。
今まで王都暮らしでそこにある制度を純粋に守ってきたという、ごく当たり前の慣習が染み付いていたのか……。
家を建てる際も、その制度に沿って建ててきたことで、この森でもその様にしてしまっていたのだろう。
だがこの森はどこにも属していないし、どこにも属さない村となる予定だ。
「ね?暖炉、作れるでしょ?」
目から鱗といった感じ。
僕は全ての家に暖炉を標準装備する事を進言した。
これから王都を追われた人達をこの森に作る村に迎え入れるなら、王都よりも良いと思える家を提供した方が定住率も上がるだろう。
まだ気がついていない点はあるだろうけど、できるだけ住みやすい環境は作っておくべきだ。
大工さんは早速設計の変更に取り掛かり、僕らの家も暖炉を導入すべく、改築プランを練り出した。
暖かい布団、暖かい部屋……最高じゃないか!
今の僕は助言しかできないけど、それでも役に立ちたいと思っている。
手始めとして、試しに薪を錬成してみる事にした。
これができれば供給に困る事はないだろう。
いつも通りのやり方で薪をイメージすると、白い光を放ちながら錬成されていく。
暫くすると巻の束が完成した。
「アレン坊ちゃん!……まさか巻の束をお作りになるなんて...おい、お前ら!こっちも負けてられないぞ!」
錬成の様子を見ていた大工さん達の心に火を付けたようだ。
これで今年の冬からは、みんな暖かい部屋で過ごせそうだ。
しかしこの森には未だ足りないものが多い。
三年という歳月を経て尚、その日暮らし感が否めない。
こうなったら色々と策を講じるしかないな。




