ー2章ー 16話 「初めての勝負と、モフモフな朝」
リシアとルナ、それぞれが初魔法を成功させた。
その行方をずっと見ていたが、自分事のように胸が熱くなった。
ガルドも僕と一緒に様子を見ていたが、彼なりに思うところがあったのだろう……成功の瞬間を見る前と、明らかに顔つきが変わっている。
オルセアに僕が錬成した大盾を貰った時は、少し面倒くさそうな顔をしていたのに。
しかし結果としてやる気が出たのなら、それは良い事だ。
さて、次は僕たちが二人を感動させる番だ!
結末はどうあれ、これまでやってきた事を全力でやるだけ。
僕もガルド同様、気合いが入った!
オルセアが二人と話を終え、こちらにやって来る。
「二人とも、これは練習だ。今まで教わった事をそのまま出せばいい」
試合前に監督が告げる常套句だが、不思議と肩の力が抜けた。
……練習以上の事なんてできないんだ。
さぁガルド、始めるぞ!
僕は教わった通り剣を振るった。
ガルドはすかさず盾を構え、これを防ぐ。
木と木の乾いた音がカンカンッと鳴り響く中、攻撃と防御の応酬が辺りを支配していく。
ガルドは時折大盾で剣を弾き、攻撃のような動きを見せてくる。
三歳児サイズとは言え、あの大盾で弾かれると剣ごと体を持っていかれそうになる。
中々やるじゃないか!
だがあの剣を弾く動きには弱点がある。
そこを上手くつけば勝機が生まれるはずだ。
僕はガルドが大盾を降りやすい袈裟斬りを使った。
するとやはりガルドは大盾で弾こうと腕が動いた。
よし、今がチャンスだ!
僕は剣の動きを大盾に合わせるように動かし、当たる瞬間に切りつけるのを止めた。
ガルドは勢いで振った腕を止められず、胸が完全にガラ空きになった。
この瞬間を待っていたんだ!
すかさず止めた剣先を真下に向け、下から上へと切り上げるようにガルドへ攻撃した。
……結果、木製の刃がガルドを捉え僕が勝利した。
「逆袈裟斬りか……一体どこで覚えたんだ?それに戦いの最中に相手の弱点を見出すとは...末恐ろしい子だな!」
オルセアは戦いのプロとして僕らの動きを観察していた。
逆袈裟斬りは咄嗟に思いついた動きだったが、そういう型があるのね……知らなかった。
それにしてもガルドの防御は硬かった。
そしてあの盾で弾く動き。
今は大盾しか持っていないが、更に武器を持っていたらこうはいかなかっただろう。
今回はたまたま僕が勝っただけ……次はどうなるか全く分からない。
「二人とも、スゴかった」
「ガルド、今度は私の魔法を防いでみなさい!」
こうしてそれぞれが喜びと課題を再認識できた日になった。
そして三歳児の僕らが、小さな希望を胸に宿した日でもあった。
だがこれはまだ、僕らが戦うという事の最初の入口をくぐった出来事に過ぎない。
明日からもっと頑張ろう!
翌朝。
今日も元気に鶏が鳴いている。
最初はうるさかったが、不思議なもので今ではすっかり慣れた。
鶏が鳴けば、牛も鳴く。
これがいつもの朝の光景だ。
「メェ~」と鳴くのは……聞いたことがないぞ!?
僕はバサッと布団から飛び起き、玄関の扉を開いた。
そこにはモフモフな羊が三頭、元気よく草を食べていた。
「アレン、起きたか。どうだ、可愛いだろ?」
また謎に現れた動物が……。
僕は羊を凝視しながら言葉を失った。




