ー2章ー 15話 「芽吹く力、灯る炎と癒しの光」
あれから1ヶ月が経った。
僕らの日常は相変わらずだったが、森には少し変化があった。
大工さん達が村の敷地を確保するために、僕らの家を起点として周りの樹木を伐採し初めたのだ。
森の中心にあるこの場所は、外から見たら全く見えない。
どこかの街に繋がっている街道のようなものも特にない。
つまり、完全な孤立集落である。
オルセア的には過去に王都と何かがあったのだろうから、こういった場所を選んだのは都合が良かったのだろう。
生活面でも、もはやここの住人となった牛や鶏もいるし、森には動物やキノコなども採れるので特に困ることはない。
僕が唯一不便だと感じていた街にしかない商品の調達も、今後はボルンの奥さんが経営するお店ができれば解消される。
そして以前から大工さんたちが森の一角に建てていた住居が、少しずつではあるが完成してきている。
王都からの移住に備えて着々と準備は整ってきた。
僕はそうした変化を日々楽しんでいる。
翌日、オルセアは僕たちを集めて練習内容を変えると提案してきた。
毎日個々に練習を積み重ねてきた訳だが、そろそろ新しいやり方を取り入れようという試みだ。
まず、僕とガルドがペアとなり僕は攻撃、ガルドは防御という形でそれぞれが実戦のように戦ってみるというもの。
剣を振るだけだった練習に比べると、より詳細な経験が積めるだろう。
僕もガルドもどこまで自分の力が通用するのか、試してみたいと思っていた。
そしてリシアとルナはというと、彼女たちはまだ魔法自体が使えなかった。
この一ヶ月の間、二人はオルセアの指導の元自分の魔力を感じ取ったりそれを制御する練習をしていたらしい。
僕たちみたいな物理系の特性ではないので、その辺は結構大変そうだった。
「よし、リシアは火をイメージして掌に出してみろ。ルナはそこの萎れた花を癒すイメージで魔力を注いでみなさい」
二人にとってこれが初めての実践なのか。
そう思うと何だかこっちまで緊張してくる。
僕とガルドは自分たちの事をそっちのけで、二人の行方を見守った。
二人とも凄い集中力をみせている。
これまで頑張ってきたんだ……きっとできる!
そう思った瞬間、リシアに変化が起こった。
構えていた掌に僅かではあるが、オレンジ色の何かが確かに見て取れた。
それは徐々に大きくなり、色もはっきりとしていく。
そしてボッという音と共に、球体の火が具現化したのだった!
「や……やった!」
自分でも驚いたのだろう。
初めて魔法を生み出したリシアの声は少し震えていたが、それ以上にできた事の喜びで笑顔が溢れていた。
僕とガルドも思わずガッツポーズを取っていた。
次はルナだ。
彼女も凄い集中力をみせている。
大丈夫……きっとできるはずだ!
僕は息を殺し、ルナの初魔法の成功を見守った。
すると、優しい緑色の光が萎れている花をそっと包み、キラキラと輝き出した。
それまで下を向いていた花が、陽の光を求めるかのように立ち上がっていく。
それと同時に失っていた本来の色彩を徐々に取り戻し始めたのだ!
その癒しの光は確かに花を蘇らせた。
まさに奇跡の力……それ以外の表現ができない。
「できた……できたよ、オルじい!」
ルナも初魔法を成功させ、感極まっていた。
オルセアも満足そうに二人を抱きしめていた。
さぁ、次は僕たちの番だ!
二人から勇気を貰った僕たちは、互いに向き合ったままその闘志をぶつけ合っていた。




