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ー序章ー 0.5話 【剣聖オルセアの伝説】

剣聖――そう呼ばれた英雄、オルセア。

彼はかつて、魔王ヴァルザドの軍勢からグランゼル王国を守った男である。


世界は魔物が跋扈する混沌の時代にあった。

王国随一の剣士として名を馳せたオルセアは、幾度も軍勢を率い、各地で勃発する魔物との戦を平定してきた。


だが、魔王にあと一歩と迫ったある戦で、仲間を庇った彼は深手を負ってしまう。


戦列を離れざるを得なかったオルセアは傷の癒えを待つが、それは想像以上に重く、数年を費やすこととなった。


その隙を突くように、魔王軍は攻勢に転じる。


だが、オルセアはそれを予期していた。

もしもの時に備え、彼は密かに勇者の育成を進めていたのだ。

この時、オルセア四十七歳。己が剣一本で戦場を駆け抜けるには、もはや年を重ねすぎていた。


だからこそ、次代を託す若者が必要だった。


王国軍の中から選び抜かれたのは、乱戦を勝ち抜き、生と死を最も理解した者。

華麗な剣技と冷静な判断力を併せ持つ若者は、オルセアによって「勇者」となり、混乱を鎮める存在と目された。


勇者は魔王軍の攻勢を押し返し、着実に勢力を削っていった。

しかし、ひとりの力には限界がある。


そこで第八代グランゼル王国国王――グランゼル・ドラクマが動いた。

「強欲王」と陰口を叩かれる王であったが、この時ばかりは金に糸目をつけず、国内随一の戦士たちを集め上げた。


大魔導士、鉄壁の大盾を操る将軍、状態異常の秘術に長けた回復士。

彼らを勇者の仲間として雇い入れ、勇者パーティが結成される。


戦況は一気に好転し、ついに魔王ヴァルザドを追い詰めた。

だがその力は常軌を逸していた。

ヴァルザドは傷を負うそばから回復するという恐るべき耐性を備えていたのだ。


戦いは果てしない消耗戦と化し、勇者たちの力は削られていく。


その時――姿を現したのは、傷を癒しきらぬまま戦場へ戻った剣聖オルセアだった。


彼はただ一人、魔王の耐性の正体を知っていた。


「倒せぬなら、封じるしかない」


そう悟ったオルセアは、伝説と謳われた剣の魔力を解き放ち、封印の術を発動する。


大地が震え、空気が圧縮されるような重圧が広がる。

さすがの魔王も動きを封じられ、悔恨の声を残す。


「おのれ人間ども……! 目覚めの時まで、せいぜい楽しむがいい……クククッ……」


――そして世界は救われた。


魔王封印ののち、勇者パーティは解散し、それぞれが研鑽を積む為に、新たな道を歩む事となった。


王国に残ったオルセアは、国王より英雄の称号を与えられ、兵の育成を命じられる。

しかし彼はそれを拒んだ。


深手を理由としながらも、実際は長年に渡る国に対する不信と、次代に託すべきだという信念があったからだ。


その頃、悲劇が訪れる。


魔王軍との戦で婿を失った一人娘が、三つ子を産み落とした後に命を落としたのである。

残されたのは、生まれたばかりの三人の孫。


オルセアは孫を抱き、人里離れた森へと移り住んだ。

まるで外界との縁を絶ち切るかのように――。


こうして剣聖の時代は終わり、次なる世代の物語が幕を開けようとしていた。


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