ブルー・シュガー
翌日、朝早くから開かれる市場へダンジョン内で手に入れたアイテムを換金するために足を運ぶことにした。
『裏東京』における『裏東京駅』より赤煉瓦の建物が特徴的な本は丸の内方面の広場の中央に鎮座する『メインタワー』から各都道府県の『メインタワー』へワープが可能で、今日は最前線の顔見知りの市場へと赴くことにした。
今日も今日とて快晴だった。
『裏日本』にも季節はあるのだが、ステータス欄からわかりやすく月毎に季節が割り振られていることが確認できる。
今月は春に相当する月の為、まだ少し冷え性の人は寒さをまだ感じるであろう気温であった。
『裏大阪』の『メインタワー』へワープが完了後、マップを開いてかつて元の世界だと巨大なテーマパークがあった場所だったが、今のこの世界では巨大市場となった場所にファストトラベルを行った。
市場へ到着するとそこには有名なソロプレイヤーや、ギルドプレイヤー、『政府』の役人、この世界におけるトップレベルの天才たちの組織『魔女会』の有名なメンバーも、何かの調達のために自分が持っているリストと睨めっこをしていた。
そんな中、お目当てのすでに顔見知りとなった『マスター』が営む施設の人達も何人かいた。
その人達声を掛けようとしたところで、
「ふぅー、疲れた、おはよーさん」
「へぁっ!?」
音もなく俺の後ろに現れた『マスター』に驚いて軽く飛び上がってしまった。
『マスター』はそんな俺をみていたずらが成功した子供みたいに、ニヤリと笑った。
「そんなビビるかえ?」
「アンタのその図体の割に音もなくやって来るのは本当なんなんだよ、隠密なスキルでも取ったのか?」
『マスター』は俺の抗議を否定する事はなく仕方なさそうに笑って肩をすくめると、施設の人たちに声を掛けた。
いちいち人の背後に立つときに隠密スキルを使うのはどうかとは思うが、という言葉は飲み込んで『マスター』の後についていくことにした。
『マスター』が経営している施設は、主に親がこちらの世界に来てから育児を放棄された子供や、何かしらの訳ありである程度、人里から離れて暮らさなければならない人達が主な構成員になる。
しかし、そんな訳ありの構成員達でも、この世界における戦闘や商売、果てには物作りの技術力にかけてはトップレベルの人たちが揃っている。
それに何故か、俺たちの世界ではみないであろう長い耳を持った人や、ケモ耳の明らかに言葉での意思疎通を行おうとしない人もいたりするのだが、『マスター』曰く、
「細かくは聞かないでちょ?」
らしい。
そして、今日市場に来ているのはそんな中でも取り分け、人当たりが良く、人気もある人達だった。
『魔女会』メンバーのロボットだったり、『ギルド』とは別の組織『連合組合』を設立した少女だったり、攻略組の最前線を走る美人中華姉妹だったり、何人か見知った顔がいた。
「オーゼン、京都の方で漁業権と、ある程度の物件を買ぉといたから、向こうで漁師してた人たち向けに依頼出しといてくれん?あと、その近海に、出没するユニークモンスターも狩って来たから、適当に下ろしといてくれーい」
「は?また無茶したの?」
『マスター』の話を聞くにつれて顔つきがだんだん険しくなっていくオーゼンに対し、『マスター』はなんともなさそうにため息をついて返した。
オーゼンは俺とおそらく歳が近くて、『マスター』が拾ったおそらく日本人ではない人物の一人。
短髪の白髪でオレンジ色の瞳をしている。
体つきは大人らしいとまでは言わずとも、しっかりと女性である主張はあるがしっかりと腹筋は割れている肉体美をしている。
会った当初は、箱入り娘だったのか常識についてなどの知識が乏しかったところがあったが、ある日『マスター』の資金援助を受けて、数多くの『ギルド』との仲介を果たす『連合組合』を設立した紛う事なき女傑だ。
そんな彼女は『マスター』に対して、弾丸の如く文句を浴びせ始めるのだった。
そしてそんな様子見見ながら、『マスター』がここにいる理由を思い当たった。
俺の予想が当たっていれば今日は当たりの日だ。
「わかったわかった、今日はその大阪湾のモンスターから採れた肉と、さっき仕入れて来た最高な野菜類の大放出デーにしましょかねー」
「「「よぉし!」」」
「まったくもう!そういう話じゃないのに!……だけどよしっ」
最後に何か聞こえた気がするが、俺たちは様々な反応をしながらも全員揃ってガッツポーズをした。
月に一度、ストレスの溜まった『マスター』は、施設の関係施設の一部にてゲリラで、溜まりに溜まったレア食材などを開放してコスパの良い食堂を開くのだった。
レア食材などを使うにあたり、経験値が上がりやすくなるなど、信じられないぐらいの良質なバフであったり、そもそもいい素材を使っているから、色んな意味で、とてもうまい。
そんな『マスター』の食堂は『裏日本』におけるSNSにて拡散されると、攻略組だけでなく、この日のためだけに貯金していた人達もこぞって、どんな場所であろうとやってくる。
待ち時間は三十分程で、持ち帰りも受け付けている為、意外と並ぶ時間も短くて済むのだが、人が多い故、俺としては出来る限り、人のいないタイミングでありつきたかったのだ。
何度、人だかりをみて頓挫したことか……。
そう考えると、先ほどの有名人たちがこの市場にたくさんいたのは・・・。
「原価率は割らない?」
「割る、が……ほれ、今回のユニークモンスター討伐報酬金とか職場以外の素材がコレや、あとで鑑定して選別して換金しといて」
『マスター』は特に手元を見る事なく、慣れた様子でオーゼンとにアイテムと金銭を譲渡した。
渡された内容を見て彼女は目を見開いたが、すぐに何事もなかったかの様に続けた。
「いよいよこの金額になって来たのねー」
「今回は流石に疲れたわ」
「『マスター』もしかして新規ユニークか?」
「あたり、やな」
そんな考えをよそに厨房に入っていく『マスター』を、俺はあきれつつも尊敬と羨望のまなざしで見つめるほかなかった。
この世界におけるモンスターの中でも特殊個体、通常ユニークモンスター。
各都道府県の有名なポイントや、全く関係のないランダムなポイントにそれぞれ生息している。
個体としてそもそもが強力、もしくは難解なギミックを突破しないと討伐はほぼ不可能やモンスターたちになるが、そんなモンスターたちをソロで討伐する変態たちがいる。
『マスター』はそのうちの一人だ。
この世界一番初めの討伐者ではないにせよ、片手で数えるほどしかいないユニークモンスターのソロ討伐者だが、その際の攻撃パターンなどをそれなりに細かく記載した攻略情報を、無償で『マスター』は流しているのだ。
しかし、あの人の特殊な立ち回りのせいで、本来のギミック攻略や立ち回りをする際にあまり参考にならない部分が多い。
俺も一度はそれをみて名古屋城の鯱鉾の様な二匹のモンスターに挑戦してみたが、結局ジリ貧になって体力を両方半分以下にしたところで切り上げるほかなかった。
もちろん、その際に死にかけたゆえに、二度とソロでは挑戦しないと誓ったのだが……。
さっきの反応を見るに、また新しいユニークモンスターを見つけてソロ討伐をして来たらしい。
『マスター』を見送ったところでオーゼンに声を掛けてアイテムを見せてもらった。
「やっぱりソロだと報酬量に少しバフかかってるか?」
「そうだね、これで次の事業を始められるわね」
彼女は『マスター』から依頼されてさまざまな事業を展開して行っている。
最初はこの世界に馴染めず、『政府』の生活保護を受けて暮らす、東京の公共住宅街から出られない人達向けに、回復魔法などを使える医者を用意したり、
『マスター』が購入した土地で人を雇って野菜などを育てて、販売の全国展開を行ったり、
何よりも一番な功績は、『マスター』の莫大な資金援助を受けて、攻略組ややる気のある人達だけで作られていた仲間内の組織としての『ギルド』とは異なる、一般人の依頼を受けてギルドに所属している人から個人までの幅広い攻略者達に依頼の仲介を行う本物の『連合組合』を発足した事だ。
所謂『会長』としての立場を確立した彼女だが、人前には滅多に姿を現さないことで有名なのだが、
そんな世間一般の認識ではあるが、俺と『マスター』との付き合いもあって、コイツとは何度も色々とあった仲になる。
「新しい水属性の武器が欲しいから素材とそれを使った武器を融通してくれないか?」
俺は本来の目的であったアイテム換金依頼と、せっかくなので素材の購入の見積もり依頼などをオーゼンに出した。
「図々しいわねアンタ、適正価格でなら取引はしてあげるけど?ほら、アンタが持って来た素材を見せなさい」
彼女はそういうと、ウィンドウを操作して素材をアイテムボックスから取り出して現物化させ、彼女に渡して鑑定をしてもらい始めた。
そうして鑑定を行なっている彼女を待っていると、大きな男の子から小さな男の子までの人気を確立しているロボットのケテルが声をかけてきた。
「一応の忠告にはなるが、君の女神を呼んでおくといいぞ?今は鑑定中だから忘れているかも知れないが、それが終わればオーゼンはここのオープンの知らせを飛ばして、人がやってくるだろうからな?」
「あっ!そっか!有難う!ケテル!」
ぽんと手を叩いて大急ぎでウィンドウを操作し始めた。
そう言えば、まだありつけたことが無いから来たいって言ってたなぁ。
と、考えながらも昨日ひどい別れ方をしたことを思い出した。
「あっ」
『はい、もしもし?君、昨日のこと忘れたの?』
なんと話そうかを考える前に彼女が通話に出てしまい、更に言い訳を考えようとした内容まで言われてしまった。
「あ、あー、『マスター』が食堂を開くみたいだから誘おうと思って、ほら、食べた事ないって言ってたろ?」
下手な言い訳をするよりも、いっそ誤魔化してしまう事にした。
『言いたいことはあるけど……一旦そっちに行ってから話しますね?』
優しい言い方とは裏腹に、妙な敬語が俺の背筋を剣先でなぞる様に通り過ぎた。
残念ながら俺の目論見はバレてしまったらしい。
「はい……」
そんな俺が返すことができたのは情けなくも、この言葉だけであった。
ふと傍を見ればオーゼン達がクスクスと笑っていて、俺の耳と顔がとても赤くなる事が感じられた。
オーゼンと素材等のやり取りをし終わって、暫くしないうちにユウカと、少し間が空いてから昨日一緒にいたお付きの人がファストトラベルで店の前にやって来た。
「ユウカさん!ここら辺はガラが悪いからやめといた方がって何遍も言ってるじゃないですか!」
「ここら辺のガラが悪いなんて初耳ですけど?もしかして『ギルド』の会長と、アマミチさんが開店させた食堂周りの治安が良くないと、そういう事ですか?」
「え?へっ!?」
また一緒にやって来たお付きの人だったが、『マスター』の店の前であることと、そんなことを言った当の本人たちが目の前にいることに驚いた様子だった。
そしてそのようなことを言われたの本人たちは苦笑しながらも、それぞれ書き入れ時が始まるのを予感したのか、いそいそとそれぞれの商売の用意をし始めた。
気をまずくしたのか、少しあたりを気にしたようなそぶりをして、咳ばらいを一つ大きくした。
「では、私はギルドのものに『食堂』の開店を報告いたします。くれぐれも羽目を外しすぎないように」
そういうと、お付きの人は俺たち二人に背を向けてウィンドウを起動して、あちら側のギルドマスターである通称『デーモン』さんとの通話を開始した。
「あー・・・今のうちに中に入ろうか?」
俺はそんなお月の人を尻目に、こういう時はいつもそうなのだが、少しドキドキしながらユウカの手を引いて、『マスター』の店へと入って行った。
「あ、ちょっと?」
困惑する声が背後から聞こえてきたが、何か言われる前にと俺たちはまだ誰も座っていない奥の個室席へと入っていった。
落ち着いた雰囲気の木造のカフェのようなインテリアが多く設置されている店内だが、実のところほぼすべて『マスター』が購入したり見繕ってきた物たちらしい。
そのたびにオーゼンが俺達に下らないことにお金を使いすぎ、と頭を抱えながら嘆いていたのをなぜだか今思い出した。
固くはなくとも柔らかすぎない椅子のクッションに身を預けて二人で向かい合うように座ると、備え付けの半透明のカーテンを閉じた。
このお店には先ほどみた有名人たちが来たりするため、このようなカーテンが取り付けられている。
今回はせっかく中の席を取れたのだから、使用させてもらうとしよう。
「……」
「……あー、えっと、き、今日は俺が奢るよ!」
無言でこちらを睨みつける彼女を真正面から見ることが出来ずに目を逸らすばかりだったが、
ガン!
と、ついに足を踏まれてしまった。
「いっ!?ご、ごごごこ、ゴメンナサイ!」
すぐさまテーブルに頭を下げて、店内に鈍い打撃音を響かせた。
「なっ!?何してるの!?」
自分から頭を下げさせておいて何をしているの、は酷いと思うが、その反論の余地は俺に持てるものではないことは当然理解していた。
「す、すみませんでした……昨日は」
「倒置法で何で……まぁ、いいか」
そう言って彼女は店の幾つかあるメニュー冊子のうちスイーツの冊子を取るとパラパラと巡り始めた。
「今後はもう無理やり帰ったりしません……」
と、最後に肩をすくめて言うと適当に1冊メニューを手に取った。
少しパラパラとめくって、朝だけどハンバーグ定食にしようかなと考えていると、メニューの奥から視線を感じた。
「な、何でございましょうか?」
「……私今日に限って朝ごはんを食べてきたんです」
「は、はい」
「ダイエット中なので食べる量は減らさないといけません」
「だとすると朝ごはん食べてからデザートは……ハイナンデモアリマセン」
彼女からの殺意を感じて、俺は手遅れになる前に口をつぐんだ。
……まだ手遅れじゃないよな?
「……ですがアマミチさん達の作るスイーツは中々市場に出回りません、それにアマミチさん達は中々同じものを作ろうとしませんし、レシピも公開しようとしません、ご存知ですよね?」
「はい」
「なので、できる限りのスイーツを食べ比べしないといけません、分かりますよね?」
「……俺もデザートが食べたい気分だったから、お前が食べきれない分は俺が食うよ」
「わー!ありがと!ふふ、今日は誘ってくれてありがとうね?」
「ドウイタシマシテ」
彼女の理詰めによる、分かってねオーラがただよっていた為、すぐさま舵取りを変更きたのが功を奏したようだ。
まぁ、彼女の笑顔が見れたのならこの足の痛みを差し引いてもプラスの当たりがあるぐらいの気分にはなれたかな。
そうして彼女は次々とスイーツを注文して、スイーツが次々と机の上に並べられていった。
彼女が美味しそうにパフェやらケーキやらを食べる様子を見ながら、俺は順次回されてきた残り二口ほどで食べ終わる量の残りを粛々と食べ進めていた。
すると、突然前の方からフォークに乗った一口分のケーキが差し出された。
「……あーん」
彼女は顔は赤くなってはいないが耳を真っ赤にして、こちらに笑顔でそれを差し出してきた。
俺はそれを確かに食べて、確かに幸せな味を噛み締めた。
「ありがとう、美味しいなこれ」
「でしょ?きっと君の口にも合うと思ったんだ」
か、顔が熱いな……。
彼女は先程まで耳だけだった赤さが顔にも広っていたが、おそらく俺の顔も真っ赤になっているだろう。
「「……へへへ」」
二人で幸せを噛みしめながらケーキを食べ勧めていると、ユウカが自分の隣をポンポンと叩いた。
俺は示された彼女の隣に座ると、まだ手をつけていないケーキを一つとって仕返しとばかりに、フォークで掬って彼女の前に差し出した。
「ほら、食べな?あーん?」
彼女の口には少し多かったのか、口元にクリームを少し残しながらも何とか食べ切った。
彼女の口についたクリームを拭う為に顔を近づけ、彼女も目を閉じ、クリームに揺れようとした瞬間、店の外から小声ではあるが自分達の名前を出す会話が、ここ最近でよく聞いたことのある声で流れてきた。
『おかわりはもういいですって!』
『馬鹿野郎!テメェは最前線でタンク張ってんだからもっと食え!』
徐々にヒートアップしていく声に彼女は仕方なさそうに顔を綻ばせると、自分でクリームを拭って立ち上がった。
「それじゃあ今日はご馳走様でした、次もあったら、今度は普通のご飯にしましょうね?」
そうやって微笑んで出て行こうとする彼女の手を俺は引き留めた。
「こ、この後、一緒にレベリングしませんか?」
「……はい、はい!一緒に行こう!行きましょう!」
彼女はパァッと顔を輝かせて俺の手を握った。
「そうと決まれば……オーゼン!キッチン借りるね!」
「ごじゆーにー」
少し離れた個室からオーゼンのフニャフニャになった声が聞こえてきた。
彼女はキッチンへと髪をくくりながら歩いていくと、いくつか食材を取り出した。
暫く彼女がトントンと包丁で食材たちを切っているのをカウンター越しで見ていると、肩に小さな蜘蛛状の機械が登ってきた。
『見ているだけじゃなくて、手伝うのが吉』
そこからケテルの声が聞こえて小さく飛び上がった。
「ん?どうしたの?」
「え、いや、何でもない、それよりも俺も手伝うよ」
「えぇ?どうしたの?急に、でもありがと、これ切っといて?」
俺は手を洗って彼女の切っていた食材の続きを切り始めた。
包丁を使うのは得意なわけではないが、強制的に始まった一人暮らしのおかげで、人前で食材を買っても問題ない程度の練度にはなっていた。
彼女に比べるとリズムは悪いながらも着実に、食材を切ってふと、彼女を見てみると、『ウィンドウ』のアイテムボックスを見て何か考えていた。
「どうしたんだ?」
「ん?あー、お腹どうしようかなって、お弁当用のお肉だから何でもいいんだけど、私がさっき買ったやつとはあんまり合いそうじゃなくってね?」
そう言って、彼女が唸っていると、俺はちょうど良い肉が入ったことを思い出した。
「そう言えばコレ、手に入ったんだけど、使えそうか?」
彼女は俺がアイテムボックス内でキラキラと光っているものを見て目を丸くした。
「買ったの!?」
「いや、たまたま昨日の帰り道で狩れた」
「へぇー!どこらへん!?あー、帰り道だから吹田方面?」
「え、えー、どっちだっけかな?」
元々大阪の地形には詳しくない為、アタフタとしながらマップを開いたが、彼女はもぅ、と笑っていいよ、と手を振った。
「そのお肉でも合うかもしれないけど、せっかくならシチューとかにしたいかなー、あぁー、今晩空いてる?」
「勿論、今晩特に用事はない」
「よかった、じゃあ今日は私が晩御飯作ってあげるね?ほとんどいつも屋台のご飯しか食べてないんじゃない?」
全くもってその辺りその通りなので、栄養が偏っているんじゃないかと言われそうな気がして、話題を逸らすことにした。
「それにしたって、料理のスキルもだいぶ上げてるだろ?見ればわかるぞ、そんなに綺麗に盛り付けて」
「あー……、そうだね?元々料理は好きだったし、この世界の食材は調理しがいがあるのが多いしね?」
彼女はそんな俺の考えを知ってか知らずか、こちらを見てニヤリと笑った
「じゃあ決まりね?そのお肉は今晩のとっておきって事で!料理スキルがとっても高い私が作ってあげます。ケテルさん?見てるんでしょー?『赤牛』の切り落としを300買うから持ってきてくれませんかー?」
彼女がそう言うと、別のキッチンにいた人間体のオーゼンが待ってましたと言わんばかりに身を乗り出してきた。
「はい、ご注文の『赤牛』切り落とし323.1グラムだ、23.1グラムはオマケだ、金額は差し引かせてもらったぞ、毎度どうも」
「有難うございます!それじゃあお昼は焼きそばパンで!」
そういうと彼女は肉をそのままフライパンに放り込んだ。
暫く二人で焼きそばを作り上げると、フランスパンほどの大きさのパンを縦に切れ目を入れて、そこに焼きそばを詰め込んだ。
それぞれ、大きさが通常の焼きそばパンと二倍ほどの大きさになったが、それでも俺たちは笑いながら作った焼きそばパンをアイテムボックスに仕舞い込んだ。
使わせてもらった所を綺麗にして外へ出ると、『マスター』とユウカのお付きの人の人が言い争っていた。
「あんた!また!どんだけ大盛りにするつもりだ!値段が適正じゃないだろ!どう考えたって!」
「だから何度言わせんだ!てめぇは攻略組の最前線でタンク張ってて、いざとなったらユウカを守らなきゃならん大人だろ!?しっかり食って強くなれよ!」
「申し訳ないだろうが!」
「やまかし!食え食え食えー!」
「そこまでにしとけ、アマミチ」
皿に料理を盛ろうとした『マスター』を止めたのは、ユウカが所属しているギルドの『ギルド長、ダイモン』さん、皆んなからは『デーモンさん』と呼ばれている人であった。




