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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

わらし!第一話

作者: ゆきぽ

幽霊のわらしと人間のこまりとのあったかくも深いおはなしになります。

わらしのパワーにより、こまりが変わっていく様子が暖かく書かれています。

初めてのなろう投稿になりますので、慣れてないところもありますがよろしくお願いいたします。


わらし!

僕はこの古い旅館に住み着き始めた座敷わらし。座敷わらしは住み着く家の守り神とされているけれど、いなくなるととたんに悪いことばかりが襲う恐ろしい疫病神とされている。

僕は疫病神として色んな家族から追い出され、今の旅館に住み着くことになった。

僕は本当は人間のことが大好きで労り尽くせりが大好きなんだ。人間のためならなんでもしたいくらいなんだ。

だからこの旅館では誰かに歓迎されるくらいに良いことたくさんするんだ。

誰か気づいてくれないかなぁ…

(?)あのぉ…お部屋お間違えないでしょうか?ここの間は竹の間でして…

(わらし)えっ!僕が見えるの?

(?)いや、ですから...

(わらし)僕、幽霊のわらし。最近ここに住み着いてきて、そうだ!僕と関われば、良いことしかないよ?君は…泣いてばかりいるんだね…大丈夫。僕が笑顔にする!

(?)ちょっと待って…幽霊?というかなんで私のこと分かるの?子供も詐偽をする時代になったのかしら…?

(わらし)君の名前は?

(?)詐欺師に名前なんか教えるわけないでしょ?

(わらし)しらさぎが飛んでる間に3回お願い事をすると叶うとかいうけど、それだったら僕に頼んだほうが秒速で早いよ?

(?)ここはお客様のお部屋ではありません!

私はここの旅館で仲居のお仕事をしている宮崎こまり。理由があって四つも仕事を掛け持ちしていて、毎日疲れきった状態で働いている。

それをあの子供のお客様が知っているってどういうこと?ていうか…子供連れのお客様いなかった気が…

ほんとに…幽霊だったりして…

意を決して竹の間に入る。

(こまり)お客様失礼します。

シーン…

なんだ。やっぱりどこかの子供が間違えて…

(わらし)わっ!

(こまり)キャー!

(わらし)そんなに驚かないでよ!僕は守り神だよ?

(こまり)で…でた!やっぱり幽霊!

(わらし)やっと信じてくれた?あっそうだ。こまりさんにこれ!持っていたら必ず助けてくれるアイテム。あげる。僕の力がどれほどのものか分かるよ?

(こまり)受け取れるわけ!

(わらし)会うんでしょ?今日、お兄さんと。

(こまり)なんで…兄のこと…

(わらし)いいから受け取って?

それは小さな赤いお守りだった。

(こまり)今忙しいからあとで!

私の家族はみんなバラバラでほとんど連絡を取っていない。けど、お兄ちゃんだけは私を頼ってくれる。

お兄ちゃんと待ち合わせをして外で久しぶりに会う。

(お兄ちゃん)元気か?こまり。

(こまり)うん。お兄ちゃんは?

(お兄ちゃん)こまりのおかげでなんとか。それで今日の本題なんだけど…

(こまり)お金でしょ?いいよ。お兄ちゃん今大変な時期だし、返してくれるなら全然。

(お兄ちゃん)ありがとな。こまり。

その後銀行から三百万ほど引かれていた。まかないだけで食べていけるかな…でも仕方ない。優いつの大切な家族なんだから。

旅館に帰ってため息をつく。未来に不安しかなくて怖くて仕方なくてこれからまた別の仕事があるのに行きたくない。

(わらし)大丈夫?

(こまり)わっ!また来たの?私の部屋に勝手に入らないで?

(わらし)こまりさんがまた泣きそうになってるから。今日は休もう?こまりさんずっと寝てないでしょ?ご飯もまかない一食しか食べてないしここでもみんなこまりさんに優しくない。

(こまり)今、頑張らなきゃいけないの。あなたは子供だから分からないでしょ?

(わらし)子供じゃないよ?実は年齢は君と同じくらい。大人の姿にもなれる。こまりさんがそうしてほしいときは大人になる。僕も家族はいないのと同じようなものだから気持ちは少しは分かるつもりだよ。

(こまり)あなたには分からない!

私はすぐに夜のバイトの支度をした。今日はなんだか頭が痛くてそれでも休むわけにはいかず、なんとかやりとげた。

翌日になって更に頭痛は時間の経過と共にひどくなって手も少し震えてきていてでも休んだら、女将さんになにされるか…

大浴場の掃除を頼まれたけど酷い頭痛でうまくできなくて長く長く怒鳴られた。

ご飯も運ばなきゃいけないのに手に力が入らない。カタカタと震え出す。

ヤバい…息が上がって立ってるのも辛い。頭…割れそう…

ガタガタガタガタ!

(こまり)ひたいぃぃ…

ご飯が乗ったお盆を持ちながらうずくまる。そこに女将さんが来てドンと後ろから勢いよく突き飛ばされた。

どしゃぁっ!!

(女将)なにしてるの?お客様の御夕食でしょ!いつまでも役たたずなんだから!早く立って作り直して!

立て……ない……

(こまり)はぁっはぁっはぁっすみ……ませ……

その時、女将さんに蹴られそうになってぎゅっと目をつぶった。

あれ…女将さん…いなくなった。

(?)大丈夫?部屋まで運ぶから。本当は救急車呼びたいけどこまりさんが嫌がるだろうから部屋まで運ぶね?

その人は浴衣を来ていて私を抱いて部屋まで運んで布団に寝かせてくれた。

(こまり)はぁっはぁっはぁっ痛いぃっ!

頭を抱えて布団のなかでうずくまる。今までこんなに痛みを感じるのは初めてで怖い。

(?)こまりさん薬、これ飲んだらすぐに直るからね。大丈夫だよ?

自力で飲めない私にゆっくり飲ませてくれた。震える手も優しく握ってくれた。もしかして...

(こまり)わら…し?

(わらし)うん。頭痛いのすぐに直るから、何日も寝てないでしょ?寝よう?

(こまり)どう…やって…寝る…だっけ?

(わらし)僕が頭に手を当てるからゆっくり目をつむって?

(こまり)うん。

わらしの力は本当にすごかった。頭痛もすぐに直ったし、不眠症の私をぐっすり寝かせてくれた。

次の日にはわらしは子供の姿に戻っていた。

(わらし)おはよう!こまりさん!ゆっくり寝れてよかったね!

(こまり)わらし、大人にもなれるの?

(わらし)本来の姿が昨日の僕なんだ。死んじゃった時が子供だったからいつもは子供の姿なんだ。

(こまり)そうなんだ。

(わらし)こまりさん、これからは毎日寝れるようにお仕事一個減らそう?夜のバイトこの紙で辞表書いたらすんなり辞められるから。

(こまり)一個減ったらお金が足りなくなっちゃうくらい分かるでしょ?それは無理…

(わらし)でもそしたらこまりさんまた倒れちゃう!昨日だって完全に過労で…

(こまり)お兄ちゃんに見捨てられたらもう家族いなくなっちゃうんだよ?わらしに私の気持ちは分からない!

(わらし)分かるよ。僕は家族に殺されたんだ。お母さんが僕を産んでお姉ちゃんが三人もいたから産後うつになっちゃって僕はいらなくなっちゃって…でも、お母さんはうつにならなかったら僕をずっと育ててくれてたと思うから悲しくないんだ。だから家族を信じたい気持ちは分かる。

(こまり)わらし…でも、お金が…

(わらし)僕の言う通りにして?僕は守り神だから絶対にこまりさんを守るから...僕のこと信じて?

わらしも私と同じなんだ。だから守ろうとしてくれている。

(こまり)分かった。夜のバイト、辞める。お兄ちゃんにも分かってもらえるように説得する。

そう言うとわらしはニッカリ笑った。

夜はわらしの力で毎日眠れるようになった。ご飯もできるだけ三食食べれるようになってきたし、わらしと出会う前より断然充実している。

(わらし)こまりさん、元気になったね!たくさん笑うし、僕、それがすごく嬉しいんだ。座敷わらしは守り神とされているけど疫病神って呼ばれてるからそう呼ばれないようにこまりさんを守りたい。

(こまり)ありがとうわらし。わらしは疫病神じゃないよ?

こまりさんをいじめるのは女将さんだけじゃない。みんな結託してこまりさんをいじめている。

今日は着物を汚した上に着物が切れてしまったと笑って帰ってきた。

(わらし)こまりさん。

(こまり)ん?

(わらし)ぎゅうしていい?

(こまり)え?なに突然びっくりした!大人をからかわないで?

(わらし)その着物直せるから。気に入ってたでしょ?

わらしが小さな姿でぎゅっと抱きしめた。その瞬間にほわっと気持ちが暖かくなってやられたことも言われたことも暖かさと優しさで全部消えてなくなりそう。この気持ちは…なんだろう。

着物はすっかり綺麗に切れた部分も直っていた。

わらしは本当に優しい守り神だ。

帰ってくるといつもわらしがいて、楽しい話をたくさんしていつも傍らにいてくれる。それが何より心強かった。

そうして仕事でも少しずつ味方になってくれる人が増えてきて、いじめはなくなっていった。

(こまり)わらし。わらしと出会えて本当に良かった。

(わらし)幽霊にそんなこと言ったら一生取り憑いちゃうよ?

(こまり)取り憑いていいよ?一生涯かけて。わらしはいつか成仏しちゃうの?

(わらし)心残りがなくなれば成仏する。心残りが解消しなければ悪霊になる。きっと疫病神になるんだ。そしたらこまりさんにはつかない。

(こまり)やだ!わらしが悪霊になって一人でみんなから嫌われるなんて!

(わらし)それが幽霊の運命だから仕方ないよ。それまでこまりさんにお願いがある。愛されごっこして?

(こまり)愛されごっこ?

(わらし)僕、誰にも愛されたことがないんだ。だから嘘でも抱きしめてくれる?できたら…好きだよって嘘でも言ってくれたら…

その時とてつもなく心がぎゅぅっと痛くなっていたたまれない気持ちになった。

(こまり)何言ってんの?大好きに決まってる。私のこと、こんなにも想ってくれた人いなかったから。愛してるよわらし。好きだよ。何回でも言わせてよ。

私はこれ以上にないくらいにぎゅぅっとわらしを抱きしめた。

(わらし)うそ…じゃない?

(こまり)本当に大好きだよ!消えないでよわらし。ずっとそばにいてよ。幽霊でもいいから。私が悪霊にさせないから。

(わらし)こま……りさ……僕も...好きだよ。ずっとずっとこまりさんを守りつづけたい。

その日しばらくお互いにぎゅぅっと抱きしめあっていた。

それから数ヶ月が経った頃。

(こまり)わらし!明日お兄ちゃんと会うんだ。ちゃんと自分の気持ちを言う。

(わらし)頑張ってね!きっと大丈夫!

お兄ちゃんにもうギャンブルは辞めてほしいとこれ以上お金は払えないとそう伝えに行った。

こまりさんは夜遅くなっても帰ってこず、心配でずっとソワソワしていた。

その時…

わらし…たす…けて…

こまりさんの声が確かに聞こえた。僕はすぐに大人の姿に変化し、こまりさんの元へ移動した。

こまりさんは雨の中公園の椅子に座っていた。

(わらし)こまりさん?大丈夫?雨でびしょびしょ…

ゆさゆさとこまりさんの肩を揺さぶるとこまりさんはどさっと僕のほうに倒れ込んだ。

(わらし)こま……りさ……

こまりさんは原型をとどめていないほど顔が晴れ上がっていて青アザがたくさんついていて血もダラダラと流れていて…早く病院に連れていきたいけど僕じゃできないしどうしたら…

(わらし)どうしよう!こまりさんの血が止まらない…とりあえず誰かに知らせないと!

僕は近くにあった看板を力で倒して大きな音を出した。

ガシャーンッ!!

すると近くにたまたま通りかかった人が気がついてくれた。

(わらし)助けてください!こまりさんを助けて!

こまりさんは救急車で運ばれ、一日入院した後包帯を顔にぐるぐると巻いた状態で帰宅した。

こまりさんは一言も喋らなかった。その後…

(女将)あなたは問題ばかり起こして!お給料を上げてくれと催促するわ、手際は悪いわ、お客様からのクレームばかりでその上その顔で対応されたら…正直これ以上おいておけません。申し訳ございませんの一言もないの?

(わらし)違うの!こまりさんは声が出せなくてお兄さんのせいで...だから怒らないで?こまりさんは一生懸命お仕事頑張ってたじゃん!

こまりさんは旅館を辞めた。僕はこまりさんについていった。ボロボロのアパートで埃っぽい場所だった。こまりさんの顔と体はまだ治らずお仕事もできなくて光熱費を払えず、一口も水を飲んでいなかった。

こまりさんは壁にもたれかかるようにしてぐったりしていた。誇りのせいで咳もでていて見ているだけでも辛くなる。精神的にもボロボロな状態だ。こまりさんは声も出せなくなるくらい怖い思いをしたんだ。

(わらし)こまりさん、お水、今持ってくるから待っててね!体辛い?全身怪我してるもんね…ご飯もコンビニの廃棄だけど持ってくるから大丈夫だからね!

コンビニに移動して、水とまだ食べられるけれど廃棄する予定のお弁当をこっそり持っていく。

(わらし)こまりさん、これ、食べられる?

こまりさんは首を横にふった。

(わらし)一口だけでいいからこまりさん、お願い。自分で食べられないなら食べさせてあげるから。…無理なら病院で点滴射とう?すごい...痩せてるからこまりさん…

こまりさんが紙にボールペンで文字を書く。

「何もできない。ごめんね。」

ポタポタと紙にこまりさんの涙が落ちる。

僕は弱々しいその字にこまりさんの姿に心をえぐられた。

そっとぎゅっとこまりさんを抱きしめた。

(わらし)謝らないでよ。こまりさんはなんにも悪くないんだから。明日、お医者さん連れてくるから点滴射ってもらお?お顔と体のアザ、よくなるようにお薬ももらってさ。お金は僕がそこらじゅうの道で落ちてるのを拾ってくるからさ!だからこまりさんはなんにも心配しないで?僕に任せて?

こまりさんはここ最近で初めてこくりと頷いた。

毎日毎日、借金が増えていく。お兄ちゃんに暗証番号を教えろと言われ、無理やり教えさせられた。何百万と取られてしまってすぐに億を越えてしまいそうだ。

わらしが連れてきたお医者さんからは顔の歪みの手術は早急に必要で手術をしないと治らないと鋭い痛みも手術が必要だと言われた。手術なんてお金がなくてできない。

こまりさんの顔の痛みや全身の怪我はひどく血が止まらない状態で、何度も僕が包帯をまき直してすごくぐったりして水分も十分にとれていなくて病院にすぐにでも連れていきたいくらいだった。

(こまり)わ…ら……し……わら……し?

(わらし)こまりさん大丈夫僕ここにいるよ?

(こまり)わら……し……わ……ら……し……

泣きながら震えるその声に僕の心がかき乱された。取りついた人のことを幸せにするのが座敷わらしの使命なのになんでこまりさんのすべてを救うことができないんだろう。全部うまくいくようにしてあげたいのに…

ピンポーン!

その時家のチャイムがなった。こまりさんは寝込んでいて出れずにいると、ガチャッと玄関が開く音がした。

(?)うわ!なにお前こんなとこ住んでんの?埃まみれじゃん。

この人が…こまりさんをこんなにしたお兄さん。

(わらし)ねぇ!こまりさんにお金返してよ!今すぐ手術が必要なんだ!手術しないとずっと痛みと顔が治らないんだ!

そんなことを言ってもこまりさんにしか見えない幽霊だから通じるわけがなく…

(兄)なんかさぁお前の使ってるローン会社から利用停止の催促来ててさぁ…どうすんの?またどっかから借金してくれないとさぁ…あっ!自己破産はやめろよ?もう借りられなくなるから!

なんで?なんでこまりさんばっかり…

(わらし)何にそんなに使ったのさ!こまりさんは点滴も射ててない状態なのに!このままだと本当に…

(兄)なぁ、他のローン会社探してくんない?なぁ聞いてんのかおい!!

お兄さんはこまりさんの胸ぐらを掴んだ。

(わらし)やめてぇ!少し動くだけでも痛いんだ!

(こまり)それ……以上は……

(兄)あぁ?家族に逆らうのか?

ガッ!!ゴッ!!ガッ!!ガッ!!ガゴッ!!

(わらし)やめてぇ!!

僕の力でお兄さんを別の場所に瞬間移動させた。

お兄さんがようやく去って、こまりさんはほとんど顔が潰れてしまっていて血がダラダラダラダラと大量出血していて…

(こまり)あっ...…あっ...…

(わらし)こまりさんが…死んじゃう!!

僕が疫病神だから…こまりさんを幸せにしたかったのに...それなのに...こんな…

隣の部屋の女の人が猫さんを飼っていたような…猫さんを説得して、こちらに誘導すれば!

(わらし)猫さん!今緊急事態で、飼い主さんをこの部屋に呼んで?

(猫)にゃにゃ!

分かったと了承してくれた。そうしてこまりさんは救急車で運ばれたけど、手術の費用が…

こまりさんは顎がずれてしまっていて、それでもどんなに痛くても僕の名前を呼び続けていてくれていて…

(こまり)わ……あ...…ひ……

(わらし)こまりさん大丈夫だからね?絶対助けるから...!絶対に!

僕は血で汚れたこまりさんの手を握った。こまりさんは死なせない。絶対…

血だらけの包帯をぐるぐるに巻いてうーんうーんと低く唸るこまりさんの手を握って念じる。力をすべてこまりさんに使うと決めた。こまりさんのことが好きだから...一番幸せになってもらいたいから。

目を開けた瞬間、私はふかふかのベッドの上で寝ていて痛みも全くなく、鏡を見たら元の綺麗な顔に戻っていた。まるで今までのことが嘘のように、借金もなくなっていて…

僕のお母さんは陣痛の中で懸命に生んでくれた。たとえそれが望んでいないお産だったとしてもそれだけで僕は嬉しかった。だから恨みはない。恨みがあると悪霊になるけど、僕はお母さんのおかげで守り神として今、大切な人を救えるようになれている。

心残りはお母さんにありがとうを言えなかったこと。それだけだ。

(こまり)わらし?わらし大丈夫?私に…全部力を使ったんじゃ…

(わらし)ちょっと…頑張りすぎた…

わらしは私にすべての力を使い、ぐったりしていた。

(こまり)わらし、私にできることはなんでも言って?わらしの心残りを今度は私が解決する。

(わらし)お母さんに…殺されたんだ…

(こまり)え…

(わらし)僕は末っ子でお姉ちゃんの女の子三人で手一杯だったみたいで、ずっとおしいれの中で閉じ込められてた。

小さな頃の記憶は真っ暗な景色だけで扉の向こう側につっかえ棒がかかっていて開けることは不可能だった。ご飯は残飯を投げつけられてそれを拾って食べて耐えしのいでいた。

一番苦しかったのは一日に一回知らない白衣を来た女の人が僕に注射をうつこと。毒素が体を巡るような苦しさが襲ってくる。

それがのたうちまわるくらいに苦しくて苦しくてつっかえ棒がかかった扉を壊して外に飛び出て床に倒れ込んだこともあった。

一瞬お姉ちゃん達の悲鳴が聞こえたけど、少ししてまた笑いだして。毎日狭くて暗いところにいたから外の世界が百八十度ちがくて驚きと恐怖でいっぱいになった。お姉ちゃん達は綺麗な服を着ていて僕は汚れきった服を毎日着て臭いもきつくてどうしてそんなにサラサラな髪なのか汗で全身がベタついていないのか分からなくてとにかく苦しくて苦しくて体のあちこちがするどく痛くて…

息ができない。助けてと声を出したくても声を出すのもものすごく苦しくてできなくて「あっあっ…!」とただただ声を漏らすだけで…

誰かが手袋をはめて僕をゴミのように扱ってまたおしいれの中に投げるように戻されてようやく落ち着いた頃には冷や汗でびしょ濡れだった。こんなことを毎日繰り返していた。

僕はゴミのような存在なんだと改めて知った。そうして注射と栄養失調でもう体を少しでも動かすのがものすごく辛い。息もうまくできなくて空気を探すので精一杯で…扉を開けたくて手をかけても全く力が入らなくて…

お母さん助けて…抱きしめて?そうしてくれたらもう少し生きれる。

その時…扉が開いた。助かった…思い直してくれた。

お姉ちゃんの顔がみえた。

(お姉ちゃん)ひぐひぐうるさい!静かにして!

何?聞こ……えな……

(わらし)いきっ……できっ……ませっ……!くっ…るっ……しっ……

(お姉ちゃん)しゃべらないで!

パタンと扉が閉まってまた笑い声が外から聞こえてきて…あいつくさいと大丈夫もうすぐ死ぬからと聞こえて。

死ぬ怖さより死んだら今より良いところにいけるかなと考えたりした。

死んだら僕みたいな人を救う守り神になりたいな。

あれからずっと息苦しさと痛みにぐったりと倒れ込んだまま、残飯さえ口にできず苦しくて苦しくて息を荒げたまま助けてと声も出せずにただただうずくまっていた。

すると外からお母さんの声がした。

「まだ死んでないの?早く片付けて!」

お母さんが何かしゃべってるけど苦しくて苦しくて聞こえなくてもう、目を開けてるのも…くる……しい……お母さん…苦しいよ…助けて…

体勢を変えても変えてもものすごく苦しくて涙を流しながら悶えて悶えて悶えて…悶えて…

「ガタガタうるさい!」

(わらし)おっ………かっ……たっ………けて……くっ……しっくっしっ…くっ……しいっ!!

苦しすぎる中で声を絞り出してようやく助けてと言えた。

だけど…

お母さんは僕の手首を紐でしばって頭にビニール袋を被せた。

(わらし)クハッ!カハッ!カハッ!アハッ!カハッ!!カ…ハッ…カ……ハ……

口にビニール袋が張り付いて全く息ができなくなって最後は苦しんで苦しんで死んだ。

お母さんに一度でいいから愛されたい。そう願いながら希望通り守り神として全うすることができた。

わらしとこまりのお互いの愛をぎゅっと詰め込みました。

こまりが変わっていく様は見所です。

そしてわらしのかわいさを盛り込みました。

皆様に愛される作品になるよう気持ちを込めて書かせていただきました。

わらしのパワーと優しさが皆様に届きますように!

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