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風を描く〜絵師・英一蝶異聞〜  作者: 紫波吉原 ※5000PV超え感謝
第一章 人間の谷を渡る風
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第11話 胡蝶の夢

板倉重常の陰謀により吉原に売られ、過酷な遊女の生活を送る胡蝶。彼女は、この一年間の「いいこと」を数え、現実から目をそらそうとする。

◇胡蝶の一人語り


 私が吉原に人柱として売られてから一年。いいことと悪いことがあった。悪いことは数え切れないから、いいことだけ挙げていく。


 一つ目は、板倉重常(しげつね)よりも酷い男はこの世に存在しないってこと。この事実に私はだいぶ救われている。


 二つ目は、私の人柱によって村の人たちの命が守られてるってこと。いや、これは別にいいことでもなく、()()()()()()ことだから数え直す。


 改めて二つ目は、一つ目と重なるけど、面白い男たちが結構な数いるってこと。中でも俳諧師の連中は面白い。特に松尾芭蕉、あいつの句を耳にした瞬間、ぱーっと頭の中に像が浮かんでくる。それにうまく下の句を返せた時、鈴鹿では味わったことのない喜びに満たされる。


 三つ目は、吉原はこんな濠に囲まれた狭い世界だけど、たくさんの絵に溢れてること。貸本屋が本を持ってきたり、客が絵を持ってきて見せたりする。そう、私だけじゃなく、ここにいる女たちはみんな絵が好きだ。


 最近、評判の狩野派の絵がある。無銘だけど、なんだか温かい。みんなこの狩野派の絵が好きだ。私は、この絵を見ると、なぜか大嫌いな故郷を思い出させるくせに、たまらなく愛しい気持ちになる。


 四つ目。つい最近、この無銘の絵師の作品に名前が書かれるようになった。

 

 「多賀朝湖(ちょうこ)


 私は涙が止まらなくなった。



吉原の闇の中で、胡蝶は「多賀朝湖」という名に、かすかな希望を見出す。しかし、その希望は、まだ胡蝶の「夢」の中にしかない。現実の吉原では、一郎が、運命の糸に導かれるように、胡蝶へと近づいていく。

次回:第12話 コチョウと胡蝶

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