親友の好きな人、実はすでにあたしの彼氏です
「なんなの?なんでアンタみたいなのが、イケメンと付き合ってんの?意味わかんない」
知らないよ……。あなたよりあたしのほうが、告白が早かったからでしょ?
「ムカつくんだよね」
勝手にムカつかれても、こっちが困るわ……。
あたしは赤坂ナオ。いま、親友という名の「年頃の女子の悪いところを凝縮したような奴」に絡まれていて、困っている。その名を、斎田アヤという。
どうしてそんな奴に絡まれているのかと言うと……
◇ ◇ ◇
あたしがまだ中学生だったころ。中学二年生だろうか、ひそかに想いを寄せていた相手に、告白された。夢のようだった。
ちなみに、彼は川井アオトという。その顔を見た人はみな「かっこいい」と言うほどのイケメンだ。
そんなイケメンがあたしに振り向いてくれるなんて、と、当時のあたしは信じられない気持ちでいっぱいだった。頬につたう涙をこらえながら告白を了承し、あたしたちはカップルになった。
しかしそれから二年後、高校一年生になり、彼とは違う高校に通うことになった。関係は変わらなかったけど、さみしかった。
彼はとある塾に通っていた。
あたしは高校で新しい友達を作り楽しんでいた。そいつが、斎田アヤである。
彼女はある日の帰り道、好きな男子ができたとあたしに言った。あたしたちは女子高なので、どこの誰だろう?と話を聞くと、塾で知り合ったイケメンで、どうもあたしの彼氏と似ているところが多い。
名前を聞いたら、「川井アオト」だった。
あたしはそれを聞いて、どうしようか迷ったけど「その人彼女いるよ……」と言った。トラブルになるのを避けるために、誰とは言わず、知っているという事実だけを伝えた。逆に今言わないと、後々面倒になると予測していたので、ここでは言わざるを得なかった。
そしたらアヤは、「知ってる」と言った。
なんだ、知ってるなら好きとか言わないでよぉ……ヒヤヒヤするじゃん。
しかしアヤは、すごくイライラした感じであたしに絡んできた。
「なんでアンタがイケメンと付き合ってんの?アンタみたいなのが」
はぁ?
「すっごいムカつく」
いや、勝手にムカつかれても。
◇ ◇ ◇
……まあ、そんな感じでイライラされちゃったんだ。
正直、この問題だけで考えたらあたしに非はないんじゃないかと思う。
そして、あたしは彼女に嫌がらせをしたわけでもない。
つまり、あたしはれっきとした被害者を主張できる。
自分磨きをして手に入れた彼氏と付き合って何が悪い。何も不正などしていない。
しかし、アヤはあたしに対し嫌がらせばかりしてくる。
仕方ないよね、あたしも恋してたからわかるよ。そりゃ、好きな人に付き合ってる人がいたら嫌だよね。それが友達だったらなお嫌だよね。わかるよ。
けど、嫌がらせはしちゃいけないんだよ……。
そこであたしは、良い方法を思いついた。
あたしはこのことを彼氏本人に言ったのだ。
そして、あたしたちは作戦を決行する。
◇ ◇ ◇
その日の帰り道も、あたしはアヤに嫌な言葉をたくさん吐き散らかされた。
「なんでアンタみたいな普通の女が」
「あたしのほうがお似合い」
「……そんなことない。あたしはちゃんと告白されて」
「噓つけ、どーせアンタが一方的に好きになってつきまとって、向こうはストーカーしてくるアンタを止めるためにしぶしぶ了承したんでしょ」
はぁ、もう、アンタどんな人生歩んだらそんな被害妄想ができるのよ。
「君……俺の彼女に何言ってんの?」
あっ。きたぁっ。
「え……あ、アオト……くん?」
「俺の彼女はストーカーなんてしてない。ちゃんと、俺が愛した相手だ」
「いや、い、今のは冗談で」
「冗談にもほどがあるよな?そもそも俺は、全部聞いてる。嫉妬したからって、そうやってあることないこと妄想して、俺の彼女を傷つけるのはやめろ。もう話しかけんな」
それだけいうと、アオトはあたしを連れ出して少し離れた場所に行った。
ようやく、二人きりになる。
「……ありがと。すっきりした」
「何言ってんだよ、彼女が嫌がらせされてるのに放っておけないだろ」
やっぱり、この人は顔だけじゃないんだ。
あたしはそれを知ってる。外側だけじゃなくちゃんと内側の性格まで見てるよ。
正義感を持ってこうして思っていることをはっきり言えて、素敵だ。
やっぱり、あたしも見た目は釣り合ってないけど、中身ならばっちりじゃない?
って、自分で言うことじゃないか。あはは!
……彼氏のおかげで、久々にちゃんと笑えた。
あたしは幸せだ。
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