月まで蹴り上げて
私はレナ、とある町の道具屋の店員だ。プレイヤーからなんでも買い取ることがメインの仕事。たまに、いい剣と盾を売るプレイヤーもいるが、大体の場合は初心者だ。この町に、王都とかのように、いい値段を付けられない。上級者なら、ボロボロな布とか、ゴブリンの牙とかしか押し売りにこない。そして、カウンター後ろのタンスの中を略奪していく。世の中に善と悪があると信じていたが、私はこの件について、別に気にしていない、「レナ」じゃないから。
「道具屋へようこそぉ。どうぞご覧ください。目に合う良いものがあるのなら、ぜひ買ってください。」
目の前の盗賊のプレイヤーが窃盗スキルを使いたいらしい…小さい町に衛兵隊がないのを狙っているのか。回復ポーションくらいならやっていいけど、どうぜリポップされるから。
アイテムを盗みたいと思ったら、もっとやらしいやつだったわね。このゲーム、確かに年齢制限のかかったゲームではないから、スカートをググっても判定されないわ。
「伝説の勇者でも呼ぼう?」
その行為がし続けたら、プレイヤーキラーに変わる隠語だ。きっと心が狭い女でも思われるのだろう。いや、プログラムに、性別があるのか?
何も買わず、何も盗まず盗賊が立ち去った。
また別の常識のないプレイヤーが来た。
「いらっしゃいませ」
「なんだか冷たいね」
「道具屋へようこそぉ。ご用はなんでしょう?」
「先日の話を続けたい…」
「どれにいたしましょう? 」
「人間関係リセット症候群でもかかった?」
「なんだその古臭い単語…」
「でも、リセットは文字通りかも」
「それは残念です」
「その反応、やっぱり秋水さんだ」
向かいのプレイヤーがメニューを開いて、アイテムを選択して、売りに出した。そして、私も、決められた買取値段でコインを相手にあげた。
でも、渡されたのは、ゲームの中のアイテムではなく、「100日後に月まで飛び跳ねるうさぎ」のストラップだ。
若いごろ、一目で気に入って、課金して一気見て、グッズまで買って、私の好きだったマンガだった。ゲームのアイテムでもないのに、なぜ表示された?
「ほかにも何かご用は?」
「あ、これ、チップ」
NPCにチップを与えても、意味がないじゃない。生きていないから。
「持ちきれなくなったら、使わない品物は預かり所に預けるといいわよ。」
「僕を秋水さんに預けていい?」
「こっち、迷子センターじゃないわよ」
どうしてだろう…その変ったプレイヤーとであってから、NPCを演じるとき、定型文でない返事が増えてきた。なんとか強い効果の薬がかけられていないのね、目の前のプレイヤーに、親しみを感じてしまった。その後は、私がなんだかんだの感情を抑えず、NPC失格の行動をしてしまった。設定に反して、あのプレイヤーを蹴り上げた。
こういう性格はもしかしたら、「秋水」の設定だ。