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「う、うぅ……」


 むにゃむにゃ……うぅ、とけいとけい、時計はどこだ……あと何分寝れるか逆算するから、誰か時計を俺の手に……


「ありゃ?」


 俺は目覚めた。

 ……なんだ? 寝起きだというのにやけに明るい。

 いつもは部屋のカーテンを締め切ってることにより昼間でも暗いはずなのに。

 俺は周りをキョロキョロ見渡してみる。


「うん、どこだぁ?」


 視界には黄緑の草原がいっぱいに広がっていた。

 俺はそんな草原の中の丘のような場所で寝転んでいる。

 枕にしていたのは、一本だけ生えている木の根っ子だ。


「えっと……」


 知らない場所でぐーすか寝ている。

 物凄い夢遊病を発動させてしまったのだろうか。

 俺は自分自身が怖くなった。


「ってそんなわけあるか! 俺は確か、学校から帰ってて…………あぁ!」


 悩み抜いた挙げ句、迫りくる車のシルエットを思い出した。

 ああそうだ、車に轢かれて、完全に終わったと思っていたところで神様的なおじいさんに呼び出されたんだ。

 てことは、俺って、


「転生してるのか?」


 青い空白い雲。

 草花とのきれいなコントラストがとても美しい。

 ここが異世界というわけだ。

 


「ガチかー、つまり俺はこれからここで暮らしていかないとならんってことか? やばいな、流石に興奮してきたかもしれんな」


 これはすごいことだ。

 だって異世界転生だよ?

 こんなの本当にあるんだって感じだ。

 すごすぎて、マジで今すぐに腹筋を百回くらいしたい気分だった。


「待てよ、落ち着け俺。冷静になるんだ」



 俺のやるべきことを冷静に考えろ。神様はなんて言ってた? 魔王を倒せとかってことだったよな? 本当にそんなことができるのか? でも確か俺にはすごい力が宿ってるってことだよな。


「今のところは何も感じないけどな……」


 俺は不安に駆られた。

 まさか能力なんてのは嘘っぱちだったなんて言わないよな……?

 

「そ、そんなの許されないぞ! よーし、まぁ適当にこのよくわからない俺が寄り添ってた木でも壊してみるか。そうだな。俺は木こりだ、怪力やばすぎマンなんだ、おりゃ!」


 木を倒すくらいはできてもらわないと困る。

 俺はやけくそ気味にジャンプした。

 が、それだけで数メートルは軽く跳んだ。


 え……? なにこれ、すごい、すごい飛ぶ! 体が軽い! オリンピック選手だ!


 俺木を軽々飛び越え、その木に向かって狙いを定める。まぁ、いくらなんでもな。


「どりゃ!」


 そう思いながらも、俺は落下がてら手刀ならぬ手斧を繰り出した。


 木はなんの感触も感じさせず真っ二つにさけた。

 それだけでなく、すごい地響きと共に地面に亀裂ができた。

 亀裂は大地震の後かとツッコみたくなるほどデカかった。


 ……や、やばすぎる。こんなの木こりにできっこない。マジで木こり以上だ。そうか、これが勇者の力……


 俺は自然と頬が紅潮していくのを感じた。


「やばい! どんな力だよ! もう目ん玉飛び出しそうだわ。でもこれならもう大抵のことはできそうだよな」


 俺は思いつきで空を飛ぶイメージを持ってみた。

 子供の頃から夢見ていたことだ。

 すると簡単に宙に浮いた。

 え、なにこれ魔法じゃん!! これ完全に魔法だろ。

 俺は調子に乗ってグルングルン宙をジェットコースターのように舞った。

 勢いよく地面に着地すれば、再び地面にクレーターができた。


「ファイヤーボール!」


 俺は天に向かって巨大な火炎球を放った。

 球は勢いよく射出され、ある程度まで登ったところで花火もかくやの大爆発を巻き起こした。


「ははは! これってもうできないことないんじゃないか? 最強過ぎるだろ俺。いや、でももしかしたらこの世界の人はこのくらい簡単にできたりするのか? 試してみるか?」


 そう思った良い標的を探すべく、周辺を散策することにする。

 ひゅん、と勢いよく離陸し、空を飛ぶ。

 ああ、もうすごいな、鳥顔負けだわ。

 眼下を見てみれば、深緑の大自然がその威容をまじまじと俺に伝えてきた。


「すっげえ眺め。もうこれだけで転生した価値あったかもな」


 そんな感じで散策を進めていると、ふと、目につくものがあった。

 自然界の中で、些細な変化であろうとそれは目立った。


 なんだ? 道っぽい場所で何か動いてるのが見えるぞ……こういう時に魔法使えるのかな……よしよし。


 俺は双眼鏡のように遠くの視界を映す魔法を使った。

 するとその光景がしっかりと目に映った。


 そこでは激戦が繰り広げられていた。

 なんだろ、馬車があって……人もいる! しかも女かあれは? 騎士っぽい装いのいかにもって感じの女どもが数人……それと戦ってるのは、なんだか野蛮な感じのやつらだな。こっちの男らのほうが数が多いぞ。このままだと押し切られちゃうんじゃないか?


「待てよ? これはひょっとしてガチで美味しい展開なんじゃないか?」


 俺は閃いてしまった。

 正義のヒーローは遅れてやってくるものなのだよ。



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