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第93話 お見合いパーティー?

「つ、疲れた……。まさかお見合いパーティーがこんなに疲れるものだなんて……」


 早いことで、もう冬は明けて春が訪れた。春と言えば社交の季節で、我が国でも春の時期に多くのパーティーが開かれる。その最初のパーティーがフィネメイゼのお見合いパーティーだったわけだ。


「疲れるって言ったって、あんた相当ボコしてたじゃん……」

「ボコす? 誰をでしょうか……」


 時は遡り数時間前。








「思ったより人がいますね」

「そうだね~」

「ちょっと陛下! 人々の前なのですから、言葉遣いを正しましょう!」


 うぐっ……、確かに今のままの言葉遣いでははしたないったらありゃしないかもしれない。でもこれが私だし……。


「大分不服そうですが」

「あら、そうですの? わたくしったら顔に出てしまいましたわ」

「うげぇ、ねね様似合わない~」

「レイナ! この~!!」

「……はぁ」


 どうやら私にお嬢様言葉は似合わなかったそう。もう私の礼儀のなさと言ったら残念なことに国内中に広がっているわけだし、別に気にしなくても良いね。


「はぁ、柄にもなく緊張してきました」

「大丈夫だよ。いざとなりゃ私が助け船くらい出してあげるから」

「大分沈みそうな泥船ですが……」

「うるさいわい! ほら、主役行ってらっしゃい!」


 そう言って暖かく背中を押してあげたと思ったのだが、私はこの社交場に1匹の虎を放してしまったのかもしれないと、今になって自責の念に追われている。


 フィネメイゼは非常に顔が良い。体格も私よりほんのちょびっと恵まれているから、本当にほんのちょびっとだけど、まあモテモテね。

 明らかに彼女の周りだけ雰囲気が違うのを感じる。


 フィネメイゼはモテない理由がない。容姿端麗で優秀、数少ない侯爵家の現当主であり、王である私の側近。私と共に公務をする際は、私をサポートし、その姿はまさにニシゾノ王国の女神。

 当然世の男子は彼女に釘付け。会場に放たれた一人の女神の周りを、あっという間に分厚い壁が覆ってしまった。

 私の名前は、だとか、なんかいろいろと口説き文句が聞こえてくる。隙間から見ていれば、それに対して笑顔で対応している彼女。

 でも明らかにその笑顔が歪んでいる。困っているというか、イライラ?イライラしているみたいなそんな感じ。


 そんな様子を見ながら、私もなんだか妙な気持ちになった。親友が口説かれているのを間近で見るときがやってくるとは思っていなかった。すぐ近くにこの国の王たる私がいるのに、誰一人としてこちらに見向きもしないのだから。

 私だって独身ですよ~!

 まあ普通に今日はフィネメイゼのお見合いパーティーだから、彼女以外に声を掛けるのは失礼と言うことで、私に声を掛けていないのでしょう。

 レイナちゃんは先ほどから私の近くでジュースをちょびちょび飲んでいる。

 うん。この場所は子供にはまだ早いから、おとなしくご飯でも食べていようね~。




 それにしても、全然集団が解散しない。フィネメイゼったら口説き文句の嵐でそろそろ疲れてきたんじゃないだろうか。


「さすがにマズいかな……」


 社交の経験なんてほぼ皆無。そんな彼女の周りに突然こんなバリケードが張り巡らされて困っていると思う。だから私が助けてやろうと思ったのだが、その瞬間、突如としてそのバリケードの中心部から大きな声が響き渡った。


「ああ! うるさいうるさい!! 私を娶りたいのならば、私を倒してみなさいよ!!」

「は?」


 この声の出所は? どこかのお転婆令嬢かしら……、と思っていたのだが、そんな現実逃避虚しく、もちろん出所はフィネメイゼ・メルデミシス。


「ダメだこりゃ」




 そういえば冬の間、フィネメイゼがレイナちゃんに剣術を教わっていたのを目にした。私は強くなるんだ! とか言いながら剣を振っていたな。

 私は単なる暇つぶしなのか、はたまた体を温めるための運動なのか、と思っていたのだが、どうやらそれは間違いで、どうやらお見合いのためだったらしい。

 どこにお見合いのために剣術を学ぶ令嬢がいるか!


 そんな馬鹿げた彼女を中心とした団子を見ていたら、その団子が徐々に扉の方向へ動いているのに気がついた。一部の令息はその団子から抜け出し、走ってこの部屋を出て行った。

 そして戻ってくるときにはその腰に剣を携えて。


「さあ、闘技場へ行きますよ!!」










「で、こうなったわけね……」

「はい。この国の男子は貧弱です」

「はぁ、困った」


 手をパンパンとはたいて手に付いた砂を落としながらこちらに向かってきたフィネメイゼ。その後方には無様にも破れた男性諸君。見事、連戦連勝。

 適度に汗をかき、軽く乱れたその髪の毛は、彼女をより色っぽくしている。ただ、それを最もみたいであろう男性諸君は地面に突っ伏して草臥れている。

 かわいそうなこった。


 さすがはこの国トップクラスの剣の使い手と名高いレイナに教わっただけはある。


「はぁ、とりあえず執務室に戻ろうか」

「はい」








 こうして今、私たちはここにいる。


「ねぇフィネメイゼ」

「はい。なんでしょう」

「私もうフィネメイゼのお見合い手伝わなくて良い……?」

「はい! 私だけでもなんとかやれそうです! お見合いというのはやはり疲れますが、なんとなくスカッとしますね!」

「そ、そうですか……」


 ああ、フィネメイゼは一生独身かなぁ。

 メルデミシス家は1代で途絶えてしまうのだろうか。

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