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第92話 冬の日々

 この冬の間にやらなければならないことがたくさん出来た。メルレルを放り込むための牢屋の準備をしないといけないし、そして何よりフィネメイゼの結婚準備をしないといけない。

 フィネメイゼには兄弟はいなくて、家族も当てにならないとなれば上司である私がやってあげるべきだ。

 忙しすぎてパーティーに出してあげられていなかったことを後悔している。ああ、国内にいい人いるかなぁ……。


「フィネメイゼって学校とか通ってる?」

「通ってないですね」

「だよね……。結婚のアテは?」

「ないですね」


 困った困った。

 まさかこんなに身近に最重要課題があったとは。ていうか私自身も結婚しないといけないんだけどな。

 レイナちゃん……、はちょっと嫁に出したくないかも。あれ? 婿さんを貰う場合はどうやって表現するのだろう。

 まあいっか。




 実は、この国の貴族は結構増えている。なんて言ったって領土が広く、人手が足りないと言うことで仕事が出来る有能なやつを多く貴族にしていたりする。

 選定は基本的に私以外に任せていて、私が選ばないときはもう適当に流していたわけ。だから誰が貴族で誰が貴族じゃないのか分からない。

 国王としてどうなのかと思うけど、まあ一応爵位上げるときは出席していたし、顔は分かる。名前が一致していないだけ。


「はぁ、そろそろ貴族の名前覚えた方が良いかもなぁ」

「え? 覚えてなかったんですか?」

「うん」

「私も覚えてない~!」


 ああ、レイナちゃんは味方だね。


 貴族が増えていると言っても、まだ出来たばかりの国と言うこともあって他国に比べたら圧倒的に少ない。その中から結婚相手を探すのは大変か……。

 もういっそ他国か?

 いやいや、フィネメイゼを他国にもっていかれる可能性があって危険すぎる。


 この国の貴族は大半がつい最近まで平民だったわけで、別に貴族じゃなくて平民を婿に迎えるのもアリだな。これは大きなパーティーを開く必要がありそうだ。


「フィネメイゼ、メルレルの件で忙しいと思うんだけど、大きな仕事を任せても?」


 メルレルはあと牢屋にぶち込むだけ。フィネメイゼには部下の失態とか関係無しで働いて貰わねば困る。余計な勢力に茶々を入れられないために、メルレルに関しての情報は私の権力で握りつぶす。

 だからこの件はいったんおしまい。


「はい。任せて下さい」

「この国の貴族と、平民合わせたパーティーを企画して」

「パーティー、ですか?」

「そう、パーティーだよ。フィネメイゼの結婚相手を探さないと」

「……ふむ、そうですか。別に私は結婚しなくても――」


 キー! 何言っているんだこの人は!


「ダメダメ! フィネメイゼが結婚しなかったらメルデミシス侯爵家が途絶える。これは国家の重大な損失だよ!」

「そ、そうですか」

「うんうん。それにもう18で婚期もギリギリ。今のうちにしておかないと将来後悔するって!」

「そういうものなんですかねぇ……」

「そういうもの! とにかくパーティーのセッティングをお願い」

「わかりました。私なりになんとか」


 さぁ、フィネメイゼの相手は見つかるのでしょうか。








 冬も中盤にさしかかっていて、今が寒さのピークと言った所でしょうか。

 暖かい部屋でぬくぬく育ってきていた私にとっては、この世界の冬は厳しくて寒い。これで私が雪国とかの出身だったら良かったんだけど。


「はぁ、寒いよぉ」

「ねね様しっかり!」

「相変わらず陛下は寒さに弱いですね……」


 私は優秀な部下兼お友達兼ほぼ家族の2人に見守られながら、暖炉の前で縮んでいる。

 レイナもフィネメイゼもさすがはこの世界生まれこの世界育ちといった感じ。寒さに慣れているらしい。寒く感じているのは私だけか……。


 前世では家まるごと暖房みたいなものがあったけど、そんなものはこの王宮には備わっていないわけで、廊下がとにかく寒い。使用人のみんなも基本的には部屋にこもっていて、料理を運んだりとかするときや、1週間に1回の掃除の時とか、そういう限定されているときに廊下に出てくる。

 私に1人つける話もあったけど、そこら辺はレイナが全部やってくれるので大丈夫だ。メイド兼秘書兼護衛。さすがだ。


「そういえば、パーティーってどのくらい進んだ?」

「はい。王宮の機関の活動が少し出来ていないと言うこともあってゆっくりではありますが、着々と進んでいる感じですね。私のためにここまでやって頂いて申し訳ないです」

「いやいや、これは私のためでもある」

「そうですね。陛下も結婚を……」

「いや? 私はしないことにした」

「え?」

「私はフィネメイゼに必死にアピールするイケメン達を見て楽しみたいだけ~」

「ねね様性格悪い~! 世の男性の恋心を弄んじゃダメだよ!」

「えへへ~、ごめんごめん」


 いつも通りの執務室。フィネメイゼもメルレルの件をだんだん乗り越えて、いつものように私らのアホな会話を聞いて苦笑いをしている。やっぱり王宮執務室はこうでなきゃね。









 ねね様は東京の辺りの出身だったのでしょうか。私は北海道の内陸部出身だったので、冬の寒さは結構強い自信がありますね。逆に夏はダメですけど。

 別にこの寒さの中で廊下に出ても少し寒いと感じるくらいで、ほとんどなんともないです。

 ねね様の中ではこの世界出身だからという結論らしく、私の正体はばれていないようですね。まあ別にばらす必要もないですし、知られれば今のような関係ではいられないでしょう。

 今が一番心地良いですからね。


 ついにあのフィーも婿を迎えると。でもお二方のお話を聞いている限りではフィーはこちらにいて、お婿さんは領地の経営を行う感じになりそうですね。

 せっかく結婚したのに離ればなれになるのは少し可愛そうとも感じますし、同時にフィーが王宮に残ることに対しての安心感もありますが。


 今でこそニシゾノレイナという名前ですが、私も成人し次第家名を頂いてこの国の貴族家当主になるわけです。ねね様は結婚させてくれるのでしょうか……。


 私は前世で生を受け、こっちに来て名前が変わり、また名前が変わる可能性があると。何回名前が変わるのでしょうかね。

 この世界では姓名の順番ではなく、名姓の順番なので、公では私はレイナ・ニシゾノという名前になりますね。孤児院に行く前はオプスティンという姓がありましたが、まあうちの家はフィヨルナンド王国時代に没落しているので、前世から考えるとどういう名前の移り変わりになるんでしょうか。


 “高槻青葉 → レイナ・オプスティン → レイナ → レイナ・ニシゾノ”という順番ですね。ここにまた新たに名前が加わるわけですね。ややこしい。


「ん? レイナちゃんどうしたの」

「なんでもないよ~」


 まあ別に良いですね。ねね様に出会ってなかったら私はこの世界でやっていけてなかったのだと思います。そんな恩人から名前をいただけるんだ。ありがたい限りですね。

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