第86話 未開の森③
「ここが未開の森かぁ……、本当に森だね」
「えっと、そりゃ森だからだよ……」
「そうだね。そりゃそうか」
私がアホだった。
未開の森はその名前の通り、本当に人の手が加わっていないようだ。下に何があるのかよく分からないので、現在はその森の上でホバリングをしている。
山脈に周りをグルと囲まれた森は、淡い緑色の木の葉で覆われている。地面の方にちゃんと光は行っているのだろうか。
探知魔法で辺り一帯を調べてみる。
「うぉ、まじでアリンコばっか……」
多少の動物の反応はあるが、中心部は本当にアリばかりだ。相当大きな巣のようで、地下までびっしりアリだらけ。正直来なければ良かったと後悔している。
ぞわわっと背筋が凍る。すごく嫌だ。
レイナちゃんは下が気になるのか、絨毯から顔だけ出して興味津々に下を見ている。
正直気が引けるけれど、まあせっかく来たから行くか。
空はまだ明るい。なんて言ったってまだお昼にもなっていないのだから。
周りを囲む環状山脈の外側で夜を明かした。山脈の内側に何があるか分からないからだ。
おなかいっぱいご飯を食べて、じっくり寝て、しっかりと疲れを取ってここに来ている。
アイテムボックスの中には王宮から持ってきた食料がたくさん。水もあるからこまめに水分を取って、頑張っていこう!
「あそこにギャップがあるから、そこに降りよう」
「はーい」
森の中に倒木などの影響であいた僅かに光の差し込む隙間。そこに着地をすることにした。
木の中に無理矢理入っていくわけには行かない。とりあえずはこのギャップを雁の拠点にして動こうと思う。
上から見渡すと、着陸地点は大体山脈から中心まで3分の2といった所にあり、探知魔法で見ればアリがそこそこ居る。なので、アリが入って来られないように、魔法で2メートルほど沿った形の土台を作り、その上で休む。
「薄暗いね」
「少しこわいね」
「確かに。でも思ったより風が吹いてて気持ちは良いかも」
久しぶりにちゃんと冒険らしいことをしている。
明らかに国王がするような仕事ではないのはわかっている。それは分かっているのだけれど、今は冒険者としての仕事を果たしているのだという暗示を掛ける。そう、私はS級冒険者だからね!
……先ほどからせっかく森にいると言うことで少し休憩したいなーと思って2人でだらだらしていたのだが、これ異常なほどにアリが居るね。
でっかいアリがそこら中をうろちょろしている。
2センチって聞いていたのに、中には10センチを超えるような大きなものまでいる。これはどうなってるんだ?
(神~、これどうなってるの?)
(えぇ? あー、ちょっと待ってね)
久しぶりの神様登場。神は問いかければ現れてくれるから非常に便利だ。
(神を便利道具扱いするのやめてもらえる?)
はいすみません。でも事実だからね。
この能力は非常に便利だ。だって全知全能、創造神といつでも会話できる。この神様暇なのか分からないけど呼んだらすぐに出るからね。どうせだらだらとお菓子でも食べていたんでしょ。
(……)
(なんか言ったら?)
(あー、っと、アリのこと分かったぞー、これはクロチャオオアリっていう種類のアリみたいだね)
神様曰く、でけえアリはクロチャオオアリ。なんかもっとジャイアントアントだとか、そういう異世界風の名前を期待していたのだけれど、和名みたいなのが来た。
確かにあまり気にしてなかったが、この大きなアリはどこか茶色みが掛かっている。それでいて大きいからクロチャオオアリなのだろう。
安直だ。
神様曰く、このクロチャオオアリはダンジョンのそれも地下深いところに出るらしい。
ではそんな虫がなんでここにいるのかというと、元々クロチャオオアリが居たダンジョンが寿命を迎えて崩落。行き場を失ったアリさんたちが地上まで勢力を伸ばしてきたのだとか。
このクロチャオオアリだけど、他のアリよりも強い毒をもっていて、数日間激痛に見舞われるとか。そのほか、顎は非常に強力で、下手すれば指とかは飛ぶだろうだって。
……いや、危ないじゃん。
これ駆除しないとダメだね。
今実際に居て感じているのだが、この森は空気中の魔力量が少ない。そのため、魔物の発生がない。また、周りを山脈に囲まれているためなのか分からないが、獰猛な動物もあまり居ないそうだ。
アリさえ居なければ、ここは天国のような環境らしい。ただ、このアリが居ることによって環境は大きく崩れている。
アリを居なくすれば、きっと観光地化することも出来るし、地形を生かして要塞都市を造ることも出来るそうだ。
もう、駆除するしかないよね?




