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第78話 突然の使者

 圧勝で幕を閉じた戦争から時が流れ、一冬越してまた春が来た。

 新たに併合された元ケルスレイド帝国の領土も、戦争による被害が少なかったためかそれほど大きな問題が発生することなく冬を越すことができた。


「……で、ヘリティア王国から使者が来たわけだ」


 ようやく経済が活性化するというこの時期、使者は突然現れ、今は待機してもらっているとのこと。

 どうしてきたのかはわからないが、会わないわけにはいかないだろう。とりあえず謁見の準備をしてもらう。







「面を上げよ」


 どうどう?随分と威厳たっぷりな感じじゃない!?


(……そうだな)


 ふん。いいですよーだ。


「ニシゾノ国王陛下、お初にお目にかかります。私はヘリティア王国から参りました、モンダ・イオコスーで御座います」


 そういって顔を上げた使者3人。

 何やら様子がおかしい。レイナもなぜか所作1つ1つに警戒の意を見せている。

 思わず私の思考が嫌な方向へと流れていく。

 なにかとてつもないことが起こるのではないか。私の体をピリピリと焦りが刺激する。


 こちらの様子を窺うように顔を向ける使者の1人は、突然ニヤリと笑い立ち上がった。

 そしてその瞬間、モンダ・イオコスーはどこからともなくナイフを取り出しては、己の胸元に勢いよく突き刺さった。

 口や胸元からは血が流れ、真っ青に顔を染めながら地面に吸い寄せられるかのように倒れていく。

 それを怪しい笑みを零しながら見る残りの使者、おそらくモンダの従者であろう2人は何もせず、突っ立っているだけ。


 あたりをざわめきが支配する。


(神、あれ死んでる?)

(死んでるな)

(だよねぇ……)


 我が国の貴族たちは何が起きたかわからず、ただ茫然とその死体を眺めるだけ。

 そんな環境に1つ、私の耳に鋭く突き刺さるように声が届く。その発生元はモンダの従者である。


「同盟国からの使者を殺害するとは!ああ、なんと恐ろしいのでしょう!」

「は?」


 口を開いたかと思えば、どうやらこの自殺は私らのせいであると主張をするらしい。思わず口から声がこぼれる。

 何を言っているんだこいつは?


 そうまたもやあっけにとられている間に、救護班がやってきてはモンダを救護室へと連れて行った。

 気が付いたときにはそこに2人の姿はなかった。











「緊急会議だ。どういうことかわかるものはいるか?」

「先ほどレイナ殿下と軽く話をすり合わせたので、私から相手側の目論見の予想を説明させていただきます」


 出席していた貴族を集めた会議室、フィネメイゼが立ち上がりそう告げる。


「今回やって来たヘリティア王国と我が国は同盟関係にあります。同盟関係は決して破られることのない国と国同士の固い固い約束事です。それを破った国は国際的に“野蛮な国”として非難の対象になります」


 その言葉から始まった彼女の発言をまとめる。


 どの国も野蛮な国とは思われたくはないし、非難の対象にはなりたくない。だから同盟というのは基本的に破られることのない固い固い約束。

 我が国ニシゾノ王国は最近できたばかりの新興国だ。ただ、周辺の国々を併合し、今ではヘリティア王国を凌駕するほどの広大な領土を保有している。経済力、軍事力共に最強クラスだ。

 そんな国を周辺国はよく思うだろうか?

 答えは否だ。できることならそんな危険分子は潰しておきたい。


 おそらくヘリティア王国を始めとする我々の同盟3国は、私たちに戦争を吹っ掛けたいのだろう。ただ、同盟がそれを阻害する。


 使者を殺すというのは、この国と戦争をしますよ。と言っているのとまったく同じことだ。

 つまり同盟3国は、使者を殺したという濡れ衣をニシゾノ王国に吹っ掛け、それを理由に同盟を破棄、一気に戦争を吹っ掛けようということなのだろう。

 2人もその殺害を証言する者がいる。

 殺した側が殺したというわけがないのだ。いくら我々が殺していないと主張したところで、それは嘘であるといわれてしまうだろう。彼が自殺した時点で、従者2人を逃がしてしまった時点で、我々はもうどうすることができない。

 おそらく姿をくらましたその従者が国に着くなり戦争が始まる。これは今までの1対1の戦争とは大きく異なる。

 多分1対3以上。ケルスレイド帝国は不可侵条約があること、この前の戦争に疲弊していることなどから参加することはないだろう。

 ただ、ほかの国はわからない。


 大戦争の火蓋が切られた。というわけだ。

先日、私のTwitterアカウント(@bechiten)を作成しました。くだらないことばかり呟いていますが、もしよかったら覗きに来てくださると私が喜びます。よろしくお願いします。

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