第75話 皇帝
2人のみが残ったこの謁見の間の中を、コトコトと音を響かせながら少しずつ進んでいく。
「お前!何しに来た!!」
「何しに来たって、この戦争を終わらせに来たに決まっているでしょう?」
「はッ、負けを認めたか?」
はい!?何言ってんのこのおっさん!!
この状況で私が負けを認めるためにここにやって来たとでも思っているのか!?
確かに王がこんなに幼くて華奢な可愛い少女だったらうまく丸め込んでできるだけ被害の少ないようにすることを考えるだろう。
甘いッ!砂糖を大量に投入した蜂蜜より甘いッ!!
私がそんなものに乗るわけがないでしょうに!!
「いやいや、何をおっしゃっているのですか?あなた方は負けたのですよ。この状況を見てもわからないと?」
「いや!まだ負けていない!先にそちらからこちらに交渉にやって来たのだから、負けを認めたということだろう!」
――――――
「いいや!認めんぞ!!」
「だから!あんたたちは負けたんだって!!」
先ほどからずっとこの押し問答が続いている。
帝都まで侵入に成功しているのだ。こちらが勝利であることは明白だろうに、目の前のこいつは一向にその事実を認めようとしない。
10分以上の時間「負けたんだ!」「負けていない!」の繰り返しである。
さすがにこれ以上はやってられない。
「最後に言います。あなた方は負けたのです。」
「だから!負けていないといっておるのだ!!」
その言葉を聞き、私は一気に皇帝の横まで刃物を持って詰め、皇帝の首元にそれを突き付けた。
「これ以上負けを認めないというのなら、お前の首を討ちとって国民に知らしめる。」
「ひいッ!」
私が少し魔力を外に放出しながら耳元でそう告げると、顔を真っ青に染め上げた。
「そ、それでも負けていない!」
(こいつこの状態になっても反抗するのかよ……。さすがに往生際が悪いのでは?)
これ以上やってもらちが明かないと思い、ナイフを握る力に手を入れる。
あらゆるものを反射して映し出していたまるで鏡のようなナイフが赤く染まっていく。
「ぎゃぁぁぁああ!わかった!負けた!すまなかった!!」
(ようやく負けを認めてくれたよ。)
彼からこの言葉を聞けたので、私はおとなしく首元につけてあったナイフを遠ざける。
すると――――――
「馬鹿め!そんな嘘に乗るとは!」
そういって右手をぎゅっと握って私の顔めがけて飛ばしてきた。
そんなものはもちろん私に当たるわけがなく、私は手首をつかんでひねるように相手を一回転させた。
地面にたたきつけられた皇帝は「ぐはッ!」と声を上げ、白目をむいて気絶した。
「はぁ……」
広大な領土を治めてきたという彼の腕は認めるが、何とも……、う~ん……。
しばらくすると、白目をむいて気絶していた皇帝が目を覚ました。
「お前ッ!よくも!!」
目を覚ますなりいきなりこちらにとびかかりそうになって来た皇帝であったが、アイテムボックスから出した縄で皇帝は玉座に縛り付けている。
「ほどけ!ほどけーッ!!」
「ほどいたら暴れるでしょ?」
「暴れるッ!!」
(ぶッ!)
神の笑い声が聞こえた。
暴れるって、普通暴れんって返すところじゃないのかよ!!と思わず突っ込みたくなる。
「はぁ、いい?条約結びたいんだけど……」
私が魔力を開放しながらそういうと、皇帝は観念したかのように「わかった。」と小さくつぶやいた。
これでようやく本題に入ることができる。




