第70話 帰還と出発
「ただいまー!!」
1週間くらいかかると思っていたんだけど、まさか半日でダンジョン攻略が終わるとは思ってもみなかった。せっかく準備した食料たちがアイテムボックスの中でいまだ眠りについている。
「ッ!?ねね様!大丈夫!?怪我は!?」
「へ、陛下!まさか半年も攻略にかかるとは思ってもみませんでした!」
は、半年?
「え、ちょ、今って季節は?」
「え?今は秋ですが……」
は?秋?
(チナリ、俺の推測なんだが言ってもいいか?)
(うん。)
ダンジョンというのは高濃度の魔力が満ちているために、通常では考えられないようなことが発生することがある。
例えば、ダンジョンの中なのに空があったり、重力の向きがおかしくなったりといったものだ。
今回の場合はその中でも時の流れがおかしくなるような現象が発生していた可能性があるとのことだった。
先ほどのレイナの話を聞く限り、ダンジョン内の1日は通常の1年ということになるだろう。
「どうやら時の流れがダンジョンの中と外では違ったみたい。半年のうちに大きな問題は発生した?」
「絶賛発生中だよ!!」
へ?発生中?
「およそ2ヶ月ほど前、国王であるチナリ様がダンジョンから戻ってこないということがどうやらニシゾノ王国内にいた諜報員によってケルスレイド帝国へと伝わったようです。それを受けてケルスレイド帝国は我が国へと宣戦布告をしました。」
は?宣戦布告?
「だから今この国はケルスレイド帝国と戦争中だよ。そのせいで兵力をダンジョンに割くことができなくて、ねね様の探索が遅れたんだ。」
それを聞いた私は、思わず目の前にあった机を大きく叩いてしまった。
私がいないうちに好き勝手にこの国を攻めやがって!
「諜報員は?」
「はい。すでに拷問ののち処刑済みです。」
諜報員がこの国の中にいるというのは前々からわかっていた。ただ、今回の戦争はそれに大した危機感を覚えずにいた私のせいだ。
「私が行く。」
「「へ!?」」
「私がそのケルスレイド帝国とやらを滅ぼしてくる。」
「えぇ!?」
幸いダンジョン探索用に溜めていた食料はまだアイテムボックスに入っているし、物資も同様だ。
(ねぇ、ここからケルスレイド帝国帝都まで飛んだらどのくらいかかる?)
(フルで飛ばして4時間くらいじゃない?)
4時間もあれば着けるのか。
「じゃあ行ってくる。」
今思うと、あまりの怒りに国王として取るべきではない行動をとってしまったかもしれない。
ただ、私の国の大切な民達が戦争によって苦しんでいるのだ。許すわけにはいかない。
まだ状況がつかめていないような2人を置いて、私はケルスレイド帝国へと飛んで行った。




