第64話 探索開始
「あ、中はたいして……って、そんなことなかったわ。」
溢れ出てくる魔力に比べれば、中は比較的マシなものかと思ったが、入った瞬間こちらをじろりと見てくる巨大蜘蛛を見て、その考えが間違っていることを分からされた。
「攻撃魔法久しぶりに使うなぁ……。」
国王になってから使う魔法は収納とか移動とかそういうのばかりで、なかなか派手な攻撃魔法は使っていなかった。
久しぶりだからなまっている可能性があるため、気持ち強めを意識する。
「ほッ!」
小さな掛け声とともに放たれた風の魔法は、轟音を掻き鳴らし、地面を大きく振動させながら雲をめがけて一直線に飛んでき、胴を真っ二つに切り裂いた。
それだけならまだよかったが……。
「やべ、やってしまった。」
放たれた魔法は蜘蛛を切り裂いたくらいでは威力が弱まることはなく、洞窟の中に美しい青い空を眺められる観光スポットになり得る何かが爆誕してしまった。
幸い、上に人は乗っていなかったようで、人的被害はなかったものの、一歩間違えれば大災害になるところだった。
以後、気を付けます。
「これほんとに進んでるのか?」
(進んでるよ。ていうかさ、こっちに来て間もない頃に渡したマップ機能使ってる?)
「あ!忘れてた!」
そういえばこっちの世界に来てすぐ、マップの機能を使えるようにしてもらっていたのを長らく忘れてしまっていた。
「マップ!」
そう唱えると、あたり一帯の地図が出てきたのだが……。
「なにこれ、全面黒塗りじゃない!」
(あ、ダンジョン内は使えないんだった。)
「ちょ、何やってるんじゃい!早く対応させて!」
(え、えっと、ダンジョンは入り組みすぎててマップにできないというか、なんというか……)
どうやらダンジョンはマップに起こすことが不可能らしい。
理由としては、ダンジョンは短期のサイクルで環境が変わっていくし、現在もみるみる成長しているため、マップに起こすと処理量がとんでもないことになるかららしい。
マップの処理には私の脳の一部を使っているらしいのだけど、そこにダンジョンのマップを加えると、脳がパンクして処理が追い付かなくなるらしい。
「うん、そんな危険なことしないで?」
(じゃあさ、空間把握の魔法使ってみたら?)
「空間把握?」
この世界には魔力が充満している。
その充満している魔力の中に、自分の魔力を少し混ぜ込むことにより、あたり一帯の環境を把握することができるらしい。
その範囲というのは発動者の魔力量に依存するらしいのだが、78億2735万8672もの魔力を有する私の力を駆使すれば、この国はおろか、大陸全体に魔力をいきわたらせることが可能だとか。
さすがにそんなことはしないが、まあダンジョン内を把握するというのは造作もないということだ。
「じゃあさっそく~!」
“混ぜ込む”という表現だと少しわかりにくいが、魔力をうっすらとあたりに広げる感じでいいようだ。
私は魔力を圧縮して無理やり体内に閉じ込めているため、その圧力を少し弱めるだけで魔力は体外に広がっていく。
通常、魔力を体外に魔力として放出するのは非常に難しいとされているが、私はその難しい工程をカットすることが可能なので、非常に早く空間把握に成功することができた。
「お!来た!」
この世界に存在するすべての物質には魔力があるのだが、自身の魔力がそれらの魔力と接することで、魔力を通じて私に空間の状態を知らせてくれるらしい。
コウモリの出す超音波と似たような感じなのかな?と思う。
どうやらこのダンジョンは5層の構造になっているらしく、現在地は1層。
層が変わるところにはボスモンスターのようなものが存在しているが、それと戦うのは非常にめんどくさい。
どうやらこのダンジョンを区切っている床は厚さ50mほどの岩盤らしい。
(え、ちょ、何してるの!?)
さっき風魔法で天井に穴開けられたし、意外といけるんじゃないか?
(ちょ、チナリ!ちょ、ちょちょ!おい!)
えっと、こぶしに魔力を込めてっと!
「ふッ!」
私のこぶしが勢いよく地面に触れた瞬間、あたりをまるで隕石が落ちたかのような振動が包み、地面は陥没した。




