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第38話 おとり捜査

「ねね~、これは食べれる奴?」

「ん~?これは食べれる奴だよ~。」


 これはおとり捜査だ。しかし、なぜか過去一の幸せを感じる。


「はぁ……幸せだわ……。」

「へっへっ、嬢ちゃんたち?こんな山奥で何をしているのかな?」


 私が幸せをかみしめていると、木の陰から身長が高めで筋肉モリモリな大男が出てきた。

 私の幸せな時間を妨害しやがって!!


 そう心の底から強く思うのだが、今はあくまで仕事中なので抑える。王宮に戻ったらレイナちゃんをよしよしする。


「えーっと、私たちは木の実を集めているのです。」

「そっかそっかぁ、お父さんお母さんはいないのかい?」

「はい。お家にいます。」

「じゃあ今は2人きりなのか。」

「はい。」

「しゃあ!聞いたか野郎ども!」


 話していた大男がそう叫ぶと、私たちの周りを囲むように盗賊らしい姿をしたやつらが出てきた。

 私たちは驚き、困惑するような“演技”をする。


 気が付いていないわけがないでしょう。


「うっひょー、大きいほうはともかく、小さいほうはきれいな髪で上物じゃないか!」

「ほんとだぜ!ちぇっ、今時黒い髪とか珍しいけどあんまり売れないんだよな。それに胸もないし。」


 あ?


「あのちっちゃい子は高く売れそうだぜ!えっと、姉の方はまな板だからあれか。」


 あ?


 クソあの野郎。絶対許さない。


「俺は黒い子好きだぞ。」


 うんうん。わかってるなお前。


「うそだろおまえ、目ぇ腐ってるんじゃねえのか?」


 ……


「ちょ、ねね様抑えて!」

「お前ら!こっちが少女だからって好き勝手言いやがって!!私だって可愛いだろうが!!!!!」

「「「「「「……」」」」」」

「なんか言えや!!!」

「いや、俺は可愛いと……」

「うるさい!!嘘をついて機嫌を取ろうつったって私はそんな嘘で機嫌がよくなるほど甘くはない!」

「え、ちょ」


 もう怒った。マジでめちょめちょにしてやるわ。


「レイナ、後ろ頼む。」

「はい!」


 レイナは素早く隙の無い動きで腰に隠していたナイフを取り出した。

 私は盗賊が逃げないようにあたり一帯に魔法を使って塀を作った。

 ものすごい音と揺れで盗賊たちはざわめく。


「な、なんだ!?」

「いいか!よく聞けあほう共!!私の名前はニシゾノ・チナリ!ここニシゾノ王国の国王だ!!」


 盗賊たちは何言ってんだといわんばかりの表情で突っ立っている。

 甘いわ!こんな戦闘時に警戒を怠るなんてあほじゃないのか!


 隙だらけだったので軽く氷で作った槍を飛ばしてみた。


「ぐはッ!?」

「「「「「親分!!」」」」」


 は?親分?

 私が放った一発はものすごい速度で大男の胸元に飛んで行き、深くまで突き刺さった。

 当たった男は吹き飛ぶように倒れた。


「お、親分が一撃で……。」


 どうやら私の実力を奴らは甘く見ていたようだ。

 私は不覚にも古龍と同じくらいの強さを持っている。

 盗賊たちは私がただの村娘ではないことにようやく気が付きだしたらしい。全員が戦闘態勢に入り、剣を向けている。

 私は軽く合図をし、レイナと別れて前の方へ戦いへ向かった。


 私の魔法の使いかたはほかの人とは異なっている。圧縮されている魔力、その魔力に加えている圧力を少し弱め、溢れ出てきた魔力を使って攻撃するのだ。

 そのために、私には詠唱が必要ない。脳内詠唱とかでもなく本当に必要がないのだ。

 しかも、力の弱めかた次第ではものすごい力で発動できるし、詠唱がない分素早く魔法を発動できる。


(チナリ、あれをやってみたら?)


 脳内に話しかけてきた神様が言う『あれ』とは私が密かに研究してきていた最強の魔法である。

 やってみるか。


 『あれ』とは簡単に言うと魔力を相手に送り込んで爆発させるという開発中の新しい魔法だ。魔法と言っていいのかはわからないけど。

 さすがに爆発させたら死んじゃうので、爆発しない程度に注ぎ込む。そうすることによって魔力過多で身動きが取れなくなるのだ。


 この魔法を使うためには相手に接触する必要がある。

 接触しなくても発動する方法に関しては今研究中だ。できるにはできるのだが、魔力を空気中に流して範囲内の敵を一掃するような魔法になる。

 別に1人だったらそれでもいいのだが、今はレイナがいる。下手するとレイナが死ぬのだ。


「ほっ!」


 私は足に身体強化魔法をかけて一気に地面をけりこむ。

 そして土魔法で跳び箱のようなものを作って上に乗り、再び身体強化をして相手に向かって突撃する。

 そして相手の首元を掴み一気に魔力を注ぎ込む。


 私に魔力を注ぎ込まれた盗賊はたちまち立っているのが困難になり、地面へと倒れこんだ。

 彼は何かが体内に注ぎ込まれていることはわかっただろうが、量が多すぎてそれが魔力だとは気が付かなかっただろう。

 何が起きているのかもわからないままに身動きが取れなくなって倒れる。

 これが新しい魔法である。

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