第20話 犯罪者
翌日は朝から大忙しだった。
まだ太陽が沈んでいる早朝、王城内の大広間には7つに分かれた軍隊が整列していた。1つの小隊につき7人で計63人。残りの騎士は通常業務に当たっている。団長のメルデミシスは王城でも仕事があるために、今回は留守番ということになる。
私は国王という立場の為、またまだまだ仕事もたくさん残っている為に今回は同行しない。
しかし、これが軍を派遣する初めてのことのなのだ。何か1つ言葉をかけないといけない。
「諸君、早朝からご苦労である。そなたらは今から我が国を荒らす不届き者を捕まえに行く。王国騎士として誇りをもって任務にあたるがいい!」
それを受けて騎士たちは「ニシゾノ王国万歳!!」や「国王陛下万歳!!」といった声をそれぞれ上げ始める。なんか照れ臭い。
きっと犯罪人とその家族が王城に届くには1週間ほどかかるだろう。その間にもやらないといけないことはあるのだ。
私はすぐに執務室へ戻り、フィネメイゼから提出された書類の確認を行っている。フィネメイゼはどうやら私たちが寝た後も1人で作業を行ってくれていたらしい。そして今もこの場にいる。
「フィネメイゼも少し休んだら?」
「いえ、私の確認不足で招いたことです。解決するまで休むわけにはいきません。」
「そんなこと言ってないで寝てきなさい。」
「いえ、ですから。」
「これは王命だ!!さっさと休んで来い!!」
「はい。ありがとうございます。」
すべてがフィネメイゼの責任ではないのだ。確かにフィネメイゼにも責任はあるのだが、一番悪いのは地主のやつらやグレイスだ。フィネメイゼはまだ私と同じ年齢の少女だ。そこまで負担をかけさせるわけにはいかない。
フィネメイゼから報告された書類によると、グレイス以外にも協力者がいたようで、グレイスが処刑されたと聞いてすぐに自首をしに来たらしい。
尋問をした結果、正直にどうしてこうなったのかを1から正直に白状したようだ。どうやらフィネメイゼが自ら尋問したらしく、文字の感じが尋問前後で異なっていたのはそういうことなのだろう。
レイナと言いフィネメイゼと言い、私は幼い子につらい仕事をさせてしまっている。心苦しい。
フィネメイゼからの書類を隅々までしっかりとチェックしていると、執務室の戸が叩かれた。
「ねね!どうして起こしてくれないのですか!」
「あ、ごめん。悪いかと思って。」
「もう、レイナはねねの護衛なのですから、お仕事ちゃんとやりますよ。」
そういってレイナは頬を膨らませる。
しかし、私が動き始めたのは朝の4時ごろだ。こんなころからまだ7歳のレイナを働かせるわけにはいかない。
「ごめんね、レイナ。じゃあ、早速で悪いんだけどこの書類を郵政大臣のリフレインに渡してくれる?」
「わかった!」
リフレインとはこの王国の郵便担当である。
部下やほかの大臣からの信頼も厚く、てきぱきと丁寧に仕事をこなしてくれているので非常に信頼している。近々爵位を授与する予定の1人だ。
リフレインに渡したのは呼び出し状である。犯罪者7人以外の地主を王城へ呼び出して今後の方針についての話し合いを行う場を設けることにしたのだ。
それから1週間後、犯罪者7人が王城へと到着した。
7人は腕を手錠でつながれ、ひもで結ばれて大広間に並べられている。
「陛下!私はグレイスという男に騙されていただけなのです!!」
犯罪者は開口一番そのようなことをほざいた。
「は?」
そういって私は土魔法で石を生成してちょび髭のおっさんへ向かって勢いよく飛ばした。
「騙されていただと?よく私に嘘をつこうと思ったな。」
「嘘ではございませぬ!!私たちは皆グレイスに騙されていたのです。」
(いや、俺取引の現場天界から見てたけどみんなノリノリだったぞ。)
(やっぱりか。ん?ちょっと待って、天界から見てた??じゃあこういう状況だったの知ってたってこと??)
(え、そうだけど。)
(ちょっとこれ終わったら1対1で話そうか。)
はぁ……、どいつもこいつも!!!
「私は!お前らが嘘ついていることくらいわかるんだ!!私がどうしてこの国の国王になったのかお前らも知らないわけではないだろう!!私を甘く見るなゴミどもが!!」
私の大声を受けて犯罪者どもはいっせいにシュンとなる。
しかし、その状況が私をさらにイライラさせていく。なんでシュンとなってるんだよ!お前らが悪いんじゃねえか!しかもここは普通謝罪じゃないのか??
「ねね、魔力。」
どうやら怒りで魔力が漏れてしまっていたようだ。
この部屋の中には私とレイナ以外にフィネメイゼを始めとする大臣、騎士、執事やメイドなどもいるのだが、レイナ以外は皆、私の魔力にビビッて顔を青くしている。
私の怒りを直に受けている犯罪者の中には顔を真っ青にしながら震えている者や、恐怖のあまり失禁しているものまでいる。
さすがにまずいと思って魔力を抑える。
「お前らは処刑とする。家族の扱いに関しては後日決めることとする。レイナ。」
「はい。」
レイナは犯罪者たちを地下の牢屋へと連れて行った。
犯罪者たちが部屋を出る際、「私は悪くない!」という者、「家族は何もしていない!」という者に分かれていた。家族を庇わずにひたすらに自身の無罪を主張していた者にはため息が出た。
その夜、家族の今後の扱いに関する会議が開かれた。
参加者は私、レイナ、フィネメイゼ、メルデミシスの4人である。
「私の考えを伝える。私は成人である15歳未満の子供の場合は王立孤児院へ入れさせ、他の者にのみ刑を与えたいと思う。」
「ねね、多分孤児院でいじめられちゃうよ。」
確かにそうだ。もともと孤児院にいたレイナが言うのだから間違いないだろう。いじめというのは非常につらいものだ。精神的にも身体的にも懲役刑よりも場合によってはつらいものになるだろう。
私は幼い子供にまで責任を追及するつもりはないのだから。
「レイナ、家族に子供は何人いる?」
「確か9人だったと思う。」
「そうか。」
しばしの沈黙が流れる。
「あの、今の国のお金は相当量な余分があります。」
そういったのは国の財政も管理しているフィネメイゼだ。
「新しく王立の孤児院を設立し、身分を隠すような形で最初のメンバーとしてそこに入れさせるのはどうでしょう。」
「確かに。それがいいだろう。反対は?」
異論は上がらなかった。
そしてそのまま大人への対応に移った。
1人1人それぞれに刑を決めたために相当長い時間の話し合いとなった。
結果としては最大30年の懲役刑ということになった。現在刑務所の設立が急ピッチで進められているため、そこの最初の入所者になる予定だ。
「では、これで会議を終了とする。何かほかにある者は?」
「あの、陛下!この後少しお時間いただけますか?」
「ああ、構わない。レイナ、先にお部屋戻ってて。」
「はい!」
そうしてほかの人が退出した後、私はフィネメイゼと2人きりになった。
「あの、この度は本当に申し訳ございませんでした!」
「え、だから。大丈夫だよ。」
「ですが、私の不手際で陛下にも、ほかの方々にも多大なご迷惑をおかけしている状態です。どのように償えばいいか。」
「気にしなくていい」と出かけたが、私はそれを言うのをやめた。フィネメイゼの目には涙が浮かんでいたからだ。きっと逆効果になってしまうだろう。
そう思った私はフィネメイゼをそっと撫でた。
「まだ16歳、私と同じ年齢。私だって間違えることはいっぱいある。私がもともといた国ではね、16歳はまだ未成年だったんだよ。子供は間違えて当然。今回のミスはこれからの活躍で償ってくれればいいから。」
そういうと、フィネメイゼは大粒の涙を浮かべながら、「はい。ありがとうございます。」と呟いた。
しかし、次の瞬間、フィネメイゼはクラッっと体勢を崩したと思ったら地面に倒れてしまった。




