第18話 裁判所と会議
現在、この国に存在する貴族は私を除いて5人だけなのだ。しかもその全員が王城で働いており、領地を一切持っていない。忙しくて管理ができないのだ。
そのため、今この国の領地はすべて私が管理している。そして憲法は作ったものの政治や立法、裁判などはすべて私が行っている状態だ。
これは極めてまずいと思っている。私に権力が集中しすぎてしまっているのだ。そのため、少しでも権力を分散するため、私は以前から計画していた裁判所を作ることとした。
場所は城壁内で、以前別の国で法律に関する仕事を担当していたというアンジェリカという26歳の女性を裁判官として据えることにした。
日本のように裁判所をランク付けして分けるわけではなく、王都中央裁判所としてここですべての判決を行うことにしている。アンジェリカのほかにもその手の物に詳しい者や、一般の人の目線からの考えを教えてほしいので、今の日本でいうところの裁判員制度も導入した。
まあ、このようなものがあるとしても最終判決はすべてアンジェリカに一任されるわけで、それこそ大臣とかとは比にならないほどの重役だ。アンジェリカの判断によって極端な場合生きているから死刑とかもできてしまうのだ。さすがにここまでのことはないだろうが、そのようなことだ。
そのような重役に爵位を持っていない人が就けるわけはないので、アンジェリカには伯爵になってもらってアンジェリカ・テミシスと名乗ってもらう。
アルジェリカに関してはレイナと神様にも手伝ってもらってしっかりと調査をしており、そのような自分勝手な行動はしないという判断になっている。
私の国で用意された処罰は基本的には懲役、あまりにひどい場合は死刑となる場合もあるが、レアケースだろう。
罰金刑は作らなかった。この世界では言ってしまえば貧富の差が激しいのだ。農民はお金を持っていないのに一部の富裕層は大量のお金を持っている。
自分はこの状態に疑問を持ち、問題視をしているのだが、現状はそう簡単には変えることはできない。
もし罰金刑を導入してしまったら、富裕層のやつらが罰金刑で済む程度のことは簡単に犯してしまう可能性があるのだ。だから罰金といった公平ではない罰則はつけないことにした。
一応、他の国では犯罪奴隷と呼ばれるものも存在しているのだが、私は日本で生まれ、日本で育ってきたために奴隷というものにあまりいい感情は持っていない。
だからそれも導入はしないことにした。
「今から法律の制定に関する会議を始めます。」
裁判所の設立に伴って法律を新しく何個か作ることにした。一応憲法は存在しているのだが、それは罰則などを詳しく定めているものではない。そのために新しくしっかり作ることにした。
この会議の参加者は、私とレイナ、爵位持ち5人、その中にはもちろん新しく貴族となったアンジェリカも含まれている。そして、町に住む一般の人、農民や商人の方々からも意見を聞きたかったため、それぞれ5人ずつ集めた計22人で行われることとなった。
場所は王城内大会議室である。
「あ、あの、こ、この度はこのような場にお招きいただき、誠にありがとうございます。」
一般の方々の代表者と思わしき人物が代表のあいさつのようなものをした後、全員でそろって「ありがとうございます。」と言って一礼をした。
「とりあえずお座りください。えーっと、この場所では爵位等を気にせず、できるだけ自身の思ったことをしっかりと伝えてください。あなた方が伝え渋ることによって生活に困ってしまう領民が出てしまうかもしれないのです。心して臨むように。」
そうなのだ。ここにいる人たちはこの国を代表して今会議をしている。もしこんなところで「おかしい」と思ったことに対して発言ができないのであれば、その「おかしい」と思った法律がこの国で成立し、生きにくい世の中になってしまうかもしれない。
現在ここにいて爵位を持っていない一般の人は国民の生活が懸かっているという状況を理解し、プレッシャーで押しつぶされそうになっていた。
でも、ここでしっかりと発言しないといけないということはしっかりわかっているのだ。
「では、まず町の治安維持のための法律を決めていきましょう。」
会議は午前中に始まったはずが夜遅くまで続き、それでもまだ終わらなかったために、翌日も続けられることとなった。
王国側と国民側の意見がそれぞれ一致し、どちらとも異論のない状態になるまで会議が続けられたためにここまで長い時間がとられてしまったのだ。
実は法律に関する会議は1日目の夕方あたりですでに終わっていたのだが、その後、雑談程度に話し合われたこの国の方針や税率、社会福祉等の話が白熱し、長く続いてしまったのだ。
その会議の中で気になる話題があった。
以前、私の国での税を大幅に見直し、他の国ではよくある農作物の収穫量の何割を税として徴収するというのがなくなった。
これはあまりに衝撃的なことであり、一部の民からは「こんなに減税をして国の経済は大丈夫なのか!」といった声も出たほどだ。農民は多額の税を負担がなくなり、自由に使えるお金が2倍にまでなった人もいたそうだ。
農民はお金を使うことに慣れていない。そのお金は基本的には貯蓄に回されたのだが、その貯蓄に目をつけるような人が現れた。
それは、一部の地主である。
地主は、この件を受けて土地の貸出料を大幅に増額、逆に税廃止前よりも生活が厳しくなってしまう人も出ているようだ。実際、ここに来てくれた農家のおじさんも被害を受けているらしく、生活が厳しいらしい。
あまりにもひどい。
「フィネメイゼ、地主から貸出料申請の書類が届いていたと思うが、どうなっている?」
「ハッ、今すぐに調べます。1度離席させていただいてもよろしいでしょうか。」
「よい。今すぐ行ってこい。」
フィネメイゼはそのおじさんが被害を受けているという地主の書類データを取りに行った。ほかの地主も悪さをしているのだろうが、なんせ情報が少なすぎるのでまずはおじさんのところの地主だけだ。
これはまずいことになったぞ。
民の暮らしを楽にしようとしたのに、そのことを逆手にとって逆に民の生活を圧迫するような不届き者がいるなど、断じて許せることではない。
沸々と怒りが湧き出てくるのがわかった。




