泡沫の夏
夏と言えば…ですよね。忙殺されてる僕がちゃっちゃっと書いたものになります。
木々が生い茂り、光の一切通らない暗がりの道。忘れ去られたかのように治されず、所々亀裂の走ったアスファルト。
僕は何を思うでもなく歩いていた。
ぎしりぎしりと不気味な音が聞こえてくる。僅かに腐臭も漂っている。
ざり、ざり、ざり…。
断続的に聞こえる何かの音。
それでも僕は怯えず歩き続けた。たった一つの目的を果たすために。
冷えているが蒸している。暑い。どこかで休みたくなってきたが、腰を下ろせそうな場所には先客がいる。…羨ましい。僕も早く休みたい。
どこまでもどこまでも歩いて行く。休むのにちょうどいい場所を求めて。ここに来るために仕事を辞めた。ここに来るために家を明け渡した。ここに来るためにこのロープを買った。ここに来るために脚立も買った。ここに来るために…あれこれと準備したのだ。
胸いっぱいに空気を吸い込んだ。腐臭と湿気が混ざった、あまりよくない空気だとしても満足だった。全ては目的を果たすため。全ては目的を果たすため。
「やあ、君もアレのためにここに来たのかい?」
背後から声をかけられた。振り向けばクマの酷い、中年の男が立っていた。
「ええ、まあ。」
「あの幸運のラジオを聞いたのかい?」
「そうですね。偶然ですが。」
「いやあ、偶然じゃなきゃ意味がないだろう。特別な番組、なんだから。」
「そう…ですか。ですが皆様沢山いらしてるじゃないですか。」
「まあ、それだけ疲れていたのがいたってことだろうね。ん~、もうじき賑やかになるのか…。やだなあ。」
「賑やかになるでしょうか?」
「見た目的には賑やかになるんじゃないかな。俺もこうしてしゃべっちゃってるし。」
「そうですね…。あ、質問なんですけれども、どこが良いとかありますか?」
「そうだな…。ここは日が差さないと言ってもね、きちんと場所を選ばないと俺みたいになってしまうからねえ…。あそことかどうだろう。ちょうど空いているし、多分大丈夫。」
「なるほど。ありがとうございます。」
お喋りな男性はニコニコと首のロープを揺らしながらどこかへ歩いて行った。
僕は彼の指示した場所へ向かった。
「木は…なるほど、丈夫そうだ。紐のかかり具合は…良し。いい感じ。」
サーカスのライオンのように僕は穴に首を通した。
ザー、ザー、ザー…。
「…という場所には光の刺さない場所がありまして、呪われている、ということから現地の方も立ち寄らない、最適な…スポットがあります。人生にお困りの方、ふらりと寄ってみては如何でしょうか…。きっと貴方もロープが欲しくなりますよ…………………」
ザザッ………………
分かりづらかったらごめんなさい。少しでもヒヤッとした方がいらっしゃれば幸いです。