スティーブ
マイクたちの演奏が楽譜以上にいい曲に
なっていたのはブルックが良く知っていた。
「私行ってくるわ」
ブルックは楽譜を持ってバンドの楽屋へ行った。
「ジャネット、亮が一緒に踊ればいいよ。
だって歌詞が二人の恋の話なんだもの」
小妹が笑った。
「亮そうそれもいいわね。二人でダンスをするの」
「ジャネット、僕は踊れないよ」
「そんな事ないって、やれば出来るよ」
ジャネットは亮の手を握った。
「亮、今どこ?」
電話の向こうは不安そうな尚子の声だった。
「タイムズスクエアの
コクーンホールに居ますよ」
「行って良い?」
「はい、待っています」
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「ボス、大変です」
部下の男がジャックのところへ走ってきた
「どうした?」
「ブルックがリハーサルを始めています」
「そうかしょうがないだろう、彼女も本気だ」
「それが照明もしっかりやっていて」
「大学の仲間だろう」
「はい、多分」
「まあいい、昨日キャシーが言っていた通り
たった一日でグラスボイスが治るはずない。
後半には声も出なくなるだろう」
「それでいいんですか?」
「ああ、客のブーイングの嵐で
立ち上がれないくらい落ち込むだろう」
「わかりました」
「そうだ、ただあの日本人の出入りに注意しろ、
あの男が居なければブルックは動けないはずだ」
「はい」
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そこに、コクーンの入口で待っていた
亮に美咲から電話があった。
「亮大変よ、一文字がニューヨークに戻ったわ」
美咲は動揺をしていた
「わかりました」
「私達は一文字に付くからそっちへ行けない、ごめんなさい」
「そうか残念ですね」
「それより、そちらが上手く行ったら
ジャック・チョウに命を狙われるかも知れないから
気をつけて、007じゃないんだから二度は死ねないわよ」
「あはは、大丈夫ですよ、美咲さん」
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「亮」
尚子が入口で亮を見つけて腕に抱き付き
一緒にステージへ行った。
それを見ていたジャネットとブルックと小妹が
驚いてみていた。
「あっ、ナオコ!」
ブルックが尚子を指さして声を出した。
「ブルック知っているんですか?」
亮はブルックが尚子を知っているのに驚いた。
「あのアメリカンアイドルの尚子ですよね」
「はい、そうです」
尚子はお辞儀をした。
「亮、尚子とどういう関係ですか?」
ジャネットは尚子に嫉妬して聞いた。
「けっこう、古い友達なんです。5年くらいの」
尚子は対抗意識を持って腕を離さなかった。
「小妹、白尾尚子さんです」
「小妹です、よろしくお願いします」
小妹は尚子を睨みつけて挨拶をした。
「なんか私みんなに嫌われているみたい」
尚子は亮の耳元で囁いた。
「初対面だからね、みんないい人だよ」
「私犬みたいに唸りそう。ワンワン」
尚子はアメリカ人には通じないワンワンと吠えた。
「あはは」
亮は日本人だけわかる冗談が嬉しかった。
※ちなみに英語は「bow-wowやwoof」
フランスは「Quah-quah」「Wouah- Wouah」
ドイツ語は「wau-wau」「Wuff wuff」
2度目のリハーサルは照明と一緒に行うリハーサルで
すべて順調に行われた。
問題だったバラードは少しテンポが速くなって
明るい曲になっていた。
亮は歌い終わったブルックの
喉を見て再び施術を行った。
「もうこれで大丈夫リラックスして
唄えばいいですよ」
「ありがとう、初めて10曲唄ったので何か興奮している」
「はい、これがブルックの実力です」
「私、練習をして尚子のように来年の
アメリカンアイドルを受けてみます」
「大丈夫、ブルックなら10万人のトップに立てますよ」
「ありがとう」
~~~~~~
亮は時計を見ながら飛行機の到着時間を気にしていた。
「ブルック日本から衣装が届くので、
今から飛行場に迎えに行ってきます」
「はい、気をつけて」
ブルックは心配そうな顔で亮を見た。
「はい」
亮が笑って返事をすると小妹が心配になって言った。
「亮、私も一緒に行くわ」
「いや、こっちで何かがあると大変だ、
小妹こっちでブルックを守ってくれ」
「了解、大丈夫?」
小妹は真剣な顔をして返事をした。
「車で飛行場の往復だから大丈夫だよ、
それに僕にはこのピストルがある」
亮はインスリン銃を手に取った
「うふふ、亮のお気に入りだ」
小妹はうれしそうに笑った
「尚子さん、ジャネットとMIYABIからスタッフの
弁当を運んでください」
客席の出口に亮が立つとモニカが客席から
車のキーを持って追ってきた。
「待って亮、乗せていくわ。
スティーブを迎えに行かなくちゃ」
「ああ、助かります」
二人が乗った車が地下の駐車場から出てくると
外にいたジャック・チョウの部下の車が後を付けた。
「モニカ、スゲー200系トヨタランドクルーザーだ
北米仕様5.7ℓ 386馬力 トルク55.4kg」
「うふふ、良い車だわ。私亮に会った時から
すっかり日本通になってしまったの」
「新型の300系は5年待ちだそうです」
「ああ、欲しい!」
亮は子供のように社内をキョロキョロと見渡たした。
「亮、やっと二人きりになれたね」
モニカは助手席の亮の方を向いてうれしそうに言った
「ああ、そうですね」
「気の無い返事ね」
「別にそう言う訳じゃないけど、
君にはスティーブがいるし僕にも」
「そうか、日本人は遠慮深いのね。私の事嫌い?」
「いや、好きですよ」
「よかった」
モニカが嬉しそうに笑うと亮が真剣な顔をして言った。
「浮気はダメですよ」




