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第1話 この世界と2人の姉妹についての話

 もしも、他人の経験を自分のものにすることができたなら。

 そう思った事はあるだろうか?

 例えば、好きなスポーツ選手や歌手を見て、その人が行った大会やライブの体験を、観客ではなくその人自身になって経験してみたいと思ったことはないだろうか?

 あるいは、スポーツ選手の経験を自分のものにできたり、有名な作家の経験を自分のものにすることができたなら、自分もプロスポーツ選手なったり、あるいは有名な作家を目指すことができるのではないかと考えたことはないだろうか?

 プロ野球選手を目指す子供が、プロ野球選手の経験を言葉や映像でなく、実際に、あたかも自分が体験した事であるかのように感じることができたなら、その子供は他の子供よりもはるかにプロ選手になれる確率が高いだろう。

 世の中にはスポーツのやり方、絵の描き方、楽器の演奏方法など、様々なことを教えるための学習機材が溢れている。しかしながら、初心者がその技能を学ぶには多大な努力を要する。学習機材をもとに楽器の練習を始めた人が、一人前に演奏ができるようになるまで努力を続ける事はむしろ稀であり、多くの人は途中で楽器の練習をやめてしまうものだ。

 しかしながらそんなとき、音符が読めない、コードの意味がわからない。指の動かし方がわからない人が、楽器の演奏をしている人の経験をそのまま自分のものにすることができたなら、その人は一から多大な努力を要することなく、すんなりと楽器の演奏をはじめ、一人前になることができるはずだ。


 これは、過去に存在した人の経験を自分のものにすることができる、しかしながら個人を特定することまではできず、誰の経験を自分のものにできるかはランダムである、また、その人の経験は得られるがその人の記憶を得ることまではできない。そんな夢のような機械、「メモリートレースシステム(他人経験定着装置)」が開発されてから15年程度が経過した世界の話。






「「いってきまーす。」」

 挨拶をして2人の少女が家から出てくる。

 2人は姉妹であり、姉の名前は沢井(さわい)ネムコ。高校1年生。背は平均より低め、胸や体型も平均より控えめで、髪は黒で肩ほどまで伸ばしている。

 成績は良くもなく悪くもなく、とくに目立った部分のない少女である。ただ一点、少女は右目に眼帯をしており、それだけが平凡な少女において異様に目立っていた。

 姉妹の妹の名前は沢井アミ。同じく高校1年生。背は高く、胸も大きい。髪は黒で腰ほどまで伸ばしている。姉のネムコと異なり眼帯はしておらず普通の女の子である。それどころかむしろ、すれ違う男性が振り返るくらいには可愛い顔をしていた。

 彼女達は双子だがあまり似ておらず、初対面の人には大抵、妹のアミが姉だと間違われる。彼女達の両親はそれほど背が高くなく、高校1年にしてアミが家族の中で1番背の高い人間になったため、ネムコはこれはアミが隔世遺伝したに違いないと勝手に考えていた。

 しかしながら、あまり似ていなくても姉妹仲は良く、アミはよくネムコに甘えており、ネムコは可愛い妹を守らなければと考えていた。

 さて、ネムコが眼帯をしているのには理由がある。

 どういうわけか、彼女の右目は光にとても弱いらしく、目に光が当たると焼け付くような痛みが走るのだ。

 それも、目を閉じていても瞼に光が当たるだけで目が痛むのである。暗闇でなら右目を開けることができるが、ネムコが赤ちゃんのときに右目に異常があることを見抜いた看護師が右目を保護してくれなかったら、とっくに右目は失明していただろう。

 そんなわけでネムコは日常的に眼帯をしているのだが、片目でモノを見ているせいかあまり物がよく見えないらしく、幼い頃から常に左目に力を入れて生活を送っていた。

 そしてその影響か、ネムコは目力がどんどん強くなっていき、何もしていないのに目があった鳥や猫が逃げだすほどになっていたのであった。

 そしてついには、妹のアミにイタズラをしていた男子のイジメっ子を強力な目力で睨みつけるだけで泣かせるようになり、歴史の授業で独眼竜、伊達政宗が紹介されてからは瞬時に「独眼竜ネムコ」がネムコのあだ名になっていたのであった。

 まったく失礼な話だとネムコは思っていたが、それも中学生までの話である。

 ちょうど中学生3年生の終わり頃、両親の転勤でネムコ達は引っ越しをすることになり、高校ではネムコの物騒なあだ名を知っている人がいなくなったのである。

 これはネムコにとって嬉しいことであった。女の子が高校生にまでなって独眼竜などと呼ばれたらたまったものではない。さらに、ネムコは自分の目力が強いということに気づき、意識的に目に力を入れないようにしていたのであった。それにより、ネムコは目力を同級生が恐がるという事態を避けることに成功していた。

 それでも通学途中に無意識に目に力を入れていることがあり、そんな時には周囲から人がそそくさと離れていくのだが。

 そうした無意識のことはさておき、高校一年目の春、沢井さわいネムコは高校生活にも慣れ始め、それなりに充実した生活を送っていたのである。


 だが、高校生から始まるメモリートレースシステムの装着授業から、彼女の生活は少しずつ変わっていくことになるのであった。



読んでいただいた方ありがとうございます。

予定は未定。設定を思いついたら書いてみるしかないから、書いてみるしかない。けど展開は考えていない。

設定は広げやすいと思うけど上手くまとめられるかなぁ。

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