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vsまよさん


 その後も俺達はレベル上げを続けた。


 みぃちゃんはさらに進化を果たした。

 残念ながらEX種族とやらではなく普通の進化だったが、シュレディンガーキャットと呼ばれる種族になった。頭に小さな箱が開いている方を下にしてくっついている可愛らしい感じの見た目だ。


 これまでの妖怪系とは少し違ったその見た目に思わず見とれてしまうこともある。

 その度にみぃちゃんは恥ずかしそうにしていたが。


 そんなこんなで順調に進んでいた俺達は最近は決戦に向けて別のプレイヤーとのバトルの経験を積んでいた。


 「ゴリラって、もしかして動物園の方とかですか?」

 「そうだよ。まあゴリラを飼っている一般家庭は殆どないから見ればわかるよね」


 そう言って苦笑したのは今回の対戦相手であるまよさんだ。

 ゴリラを優しそうに撫でながらまよさんは続ける。


 「動物園の檻の中じゃ窮屈だろうと思ってね。飼育員が交代でパートナーズオンラインに連れてきてるんだよ。所謂仕事ってやつなんだけど。だからって愛情を持っていないわけではない。私と太郎はベストパートナーだからね。油断していると負けちゃうよ」


 そう言ってウィンクしてくるまよさん。

 俺達はその言葉で身を引き締める。


 「初めから甘くみてなんかいませんよ。今日はよろしくお願いします」

 「みぃ!」

 「こちらこそよろしく……ではバトルスタートだ!」

 「うほ!」


 俺達とまよさん達との戦いが始まった。


 「まずはこれだね。ヤシの木」


 まよさんはまず自身の近くにヤシの木を作った。

 太郎はそのヤシの木を蹴り、実を自分の手元に落とした。

 そしてそれを投げつけてくる。


 「躱せ! みぃ!」

 「みぃ!」


 高速で迫り来る飛来物をみぃちゃんは横によけることで躱した。


 どうやらまよさんは俺と同じように設置を織り交ぜつつ戦うタイプらしい。

 次々とフィールドにヤシの木など木を植えていく。

 太郎はそこから木の実を落としてそれを投げつけたり、木を盾にしたり、移動に使用したり、あるいは木を引きちぎって振り回して武器にするなど縦横無尽に暴れる。


 その攻勢にみぃちゃんは近づくことが出来ない。

 ならこちらも遠距離攻撃で対応するのみ。


 「鬼火!」

 「みぃ! みぃみぃ!」


 次々と炎の玉を生み出し、太郎に向けて放つ。


 「甘いよ! 太郎! ハウリング!」

 「うほー! うほうほうほ!」


 だが太郎が胸を連続で叩くとそこから現れた衝撃波によって炎の玉は打ち消された。


 「遠距離攻撃を無効化できるのか」

 「そうさ、そしてこんなことも出来る。太郎! ウッドストライク!」

 「うほー!」


 太郎の叫びと共にみぃちゃんの近くの木から尖った枝が突き出してきた。


 「みぃ!?」


 みぃちゃんは唐突に飛び出してきたそれを何とか躱す。

 だが態勢が崩れたところに太郎の投擲があたり吹き飛ばされてしまった。


 「みぃちゃ……みぃ!」


 太郎が使ったのはみぃちゃんの鬼火のような魔法的な属性攻撃だろう。

 ここにある木全てからあれを出せるとなるとかなり不味い。

 既にフィールドにはまよさんが多数設置した木で溢れかえっていた。

 その全てが太郎の武器になる可能性があるのだ。


 遠距離戦はもう無理だ。

 幸いまよさんは設置で大量のMPを消費している。今なら接近戦にもつれ込んだとしても付与によって戦況を変えられる可能性は低い。


 「いくぞ! みぃ!」

 「み!」


 みぃちゃんと共に俺達はまよさんが作ったジャングルの中を駆け出した。


 「そう簡単には通さないよ! 太郎! 投げて当てろ!」

 「うほ」


 太郎から投擲が何度もやってくる。

 みぃちゃんは持ち前の機動性で何度もそれを躱していく。

 だが飛び退いた先はウッドストライクの攻撃範囲だった。


 「貰った! ウッドストライク!」


 絶好のチャンスにまよさんは予想通りウッドストライクを放ってきた。

 だがそれは計算通りだ。


 「ここだ! 存在不確定シュレディンガー!」

 「みぃ!」


 ウッドストライクが当たる直前みぃちゃんの姿がぶれる。

 そしてウッドストライクはみぃちゃんを通り抜けた。


 「く! 躱された! 太郎!」

 「うほ!」


 ウッドストライクを躱したみぃちゃんは太郎の直ぐ側までやってきていた。

 太郎の強烈な殴りをみぃちゃんは躱す。


 「筋力増強ストレングス、キャットスラッシュ!」

 「みぃー。みぃ!」

 「うほーっ!」


 みぃちゃんの一撃が太郎を切り裂く。

 みぃちゃんは更に打撃を加えようとするが――


 「させない! 効果向上エフェクトアップ、太郎、ヒットショック!」


 なけなしのMPを効果向上に使い強化された太郎が地面を殴る。

 そして叩いた場所を中心に衝撃波が発生し、みぃちゃんはそれによって吹き飛ばされた。


 「みぃ~!?」

 「投げ当てろ! 太郎!」

 「させるか! 木に向かってキャットスラッシュ!」

 「みぃ!」


 みぃちゃんが吹き飛ばされながら切り裂いた木が倒れて太郎の投擲を防いだ。


 「こちらが設置したものを利用したか! やるね!」

 「そちらこそ! あの状況から戻されるとは思いませんでした!」


 再び距離が開いた状況になり、太郎の投擲とウッドストライクのコンボが始まる。

 だが何もかもが戻ってしまったわけではない。


 実は先程まよさんの意識がみぃちゃんと太郎に向いている間に、太郎近くの陣地に仕掛けを施していたのだ。


 太郎が新しい木から実を落とそうとしてその木に向かって蹴りを放つと、それがずぼっと木に埋まった。


 「うほ!?」

 「な!?」


 突然のことに驚くまよさんと太郎。

 だが元からこのことを計画していたみぃちゃんは一気に突っ込んだ。


 「太郎! く……足が嵌まって反撃が……!」

 「いけ! 筋力増強ストレングス、キャットスラッシュ!」

 「うほぉー!!!」


 身動きが出来ないため腕を振り回して何とか防ごうとする太郎。

 みぃちゃんはそれを躱して強力な一撃を何度も太郎にたたき込んだ。


 やがて太郎のHPがゼロになり光となって消えた。

 WINテイルとウィンドウが表示され戦闘状態が終了する。


 「いやー。やられたね。あの木は私が設置した木ではなかったのか」

 「そうです。みぃちゃんが一度目の接近をしたときに木に擬態させた罠を設置したんです」

 「いい手だったよ。まるで気付かなかったし、私たちの攻撃パターンにクリティカルヒットする罠だった」


 そう言ってまよさんは手を出してきた。

 俺も手を出してその握手に応じる。


 「何度も同じ攻撃の仕方を見ればそれを利用できないか考えるものだよね。その考慮が抜けていた私たちの完全敗北だ。良い勝負をさせてもらった。ありがとう」

 「こちらこそ、オブジェクトを利用した連係攻撃は勉強になりました」


 握手したあと手を放す。

 まよさん達と俺達は晴れ晴れとした気持ちでその後別れた。


 「プレイヤー相手にもそれなりに勝てるようになってきた。もう少ししたら彼奴らに挑もう!」

 「みぃ!」


 みぃちゃんと気合いも新たにして別のプレイヤーとの対戦の申し込みに向かった。


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