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因縁


 途中で何度か戦闘があったり、森の中にある湖の絶景に足を止めて、みぃちゃんと水遊びしたりするなどそれなりの時間をかけて俺達はやっと街に到着した。


 「結構、人いるな」

 「みぃ~……」


 パートナーズオンラインで初めて訪れた街は賑わっていた。

 色々なプレイヤーが色々なペットを連れている。


 犬が進化したと思われる生き物に、カエルのような生き物、ゴリラにドラゴンなどまさに動物園かと言った状態だ。


 「てか、みぃちゃん。ドラゴンがいるよ」

 「みぃ?」

 「あれどうやって進化させたんだろう」


 やはり蜥蜴あたりから進化させていったんだろうか?

 そう考えるとやはりこのゲームの進化システムは奥深い。


 「別種族からの進化もあるらしいし、案外みぃちゃんもドラゴンになれたりするかもな」

 「み、みぃ~」


 え、いや~。と言うような態度を取るみぃちゃん。

 どうやらみぃちゃんに取ってはドラゴンはおきに召さなかったらしい。

 俺は格好良くて良いと思うんだけどな。


 「さて、取り敢えず何処に行くか。ええっと、技を覚えることが出来る技の実の販売店に、特性を付与させられる付与屋、ペット用の服装の販売店に、練習試合が出来る訓練場、現実のペットと交流できるような遊具がある広場、クエストを受注することが出来るギルド……みぃちゃんは何処に行きたい?」

 「みぃ!」


 みぃちゃんはこれと言うようにギルドを指差した。

 みぃちゃんには知能向上時に知識もインストールされているはず、ということはギルドがどういうものか考えた上で選んだのだろう。


 色々と準備を始める前にどんなクエストがあるか確認する。

 俺と同じ意図を持ってギルドを選んだのだと思われる。

 さすがみぃちゃん。俺の愛猫。とっても賢い。先を見据えたいい選択肢だ。


 「じゃ、ギルドに行きますか」

 「みぃ!」


 そうしてギルドへと向かって歩き出した。

 その途中で俺は不思議な光景を目撃した。


 「人と人? ペットがいない?」


 それはペットを連れていないプレイヤーだった。

 直ぐ側には同じような人しかいない。

 初めはプレイヤー同士が歩いているのかと思ったがどうもそんな様子ではない。


 「あ! そうか! よくよく考えてみたら人も動物だ。もしかしてペット枠として人間を参加させたのか……? だとしたらよくやるな。そうまでしてゲームに勝ちたいのか。ていうかリアルに頭おかしいだろ……」

 「みぃ……」


 みぃちゃんは異色なコンビに目を引かれたのか何かを考えるかのようにじっとその二人を見ていたが、正直言って俺は関わりたくないタイプだ。

 なので距離をなるべく開けてその二人の横を通り過ぎてギルドへと向かう。


 「MMOならどのゲームでも頭のおかしな奴の一人や二人は見るが、VRだとインパクトが違うな。これからもああいう手合いには関わらないようにしよう」

 「……」


 そうしてちょっとしたトラブルはあったものの俺達はギルドへと辿り着いた。

 扉を開けて中に入ると大勢の人がいた。

 席に座ってお互いのペットを自慢しているものや、クエストボードと思われるものの前で犬を抱き上げながら色々と悩んでいるものもいる。


 「まずは俺達もクエストボードを見るか」

 「みぃ」


 そうだねと言わんばかりにみぃちゃんからも了承が得られたので、俺はみぃちゃんを肩に乗せてクエストボードの場所へと向かった。

 他の大勢の人と同じようにクエストボードの前に立ち、受けるクエストを物色する。


 「どうだ。みぃちゃん。いい依頼ありそう?」

 「み」


 みぃちゃんが指差したクエストを俺は剥がして取る。


 「角付き兎10匹討伐か……。確かにちょうど良い感じだな。よし、みぃちゃんこれにしよう! っとそう言えばこれを如何すれば良いんだ?」

 「なんや、初心者か? その紙をあそこの受付に持って行けばクエストを受注出来るで」

 「これはご丁寧にどうも」


 そのまま外にクエストの紙を持って行けばいいのか迷っていたら、隣にいた親切なプレイヤーがやり方を教えてくれた。

 俺は丁寧にお礼を言ってから言われた通りに受付にクエストの紙を出してそれを受注した。


 もうギルドでやることはないのでギルドから外に出る。

 そして少し歩いたところで道を塞ぐようにプレイヤーが現れた。


 「あ~なたち。ちょっとお待ちになって」

 「俺達のことですか?」


 目の前に立っているプレイヤーはマダムといった雰囲気の妙齢の女性だった。

 ピンクを基調としたドレスにごてごてと趣味の悪い感じで宝石が沢山付けられている。

 

 そして彼女の側にいるペットも似たような感じだった。

 何らかの種族なのだろうか金色の鋼鉄の体を持った犬で、その犬には宝石が無駄に貼り付けられた服を着せられている。


 端的に言ってしまえばとても趣味が悪く、出来れば関わり合いになりたくない相手だ。

 だが直接話しからけれた以上、一応は返答を返しておく。


 「そうね。あたくしの目の前にいる小汚い男と小汚い猫の貴方たちのことだわぁ」

 「あ? 俺のみぃちゃんを指して小汚いだと? 喧嘩売ってんのか?」

 「それ!」

 「は?」

 「それが気にくわないわぁ。あたくしのぽるちゃん以外に名前にちゃんを付けてるなんて、しかもこんな弱くて頭の悪そうな猫ちゃんに、正直言ってはた迷惑だわぁ。だから今すぐそのペットの名前を改名しなさい」

 「冗談も大概にしろよ。そんな話頷くわけないだろうが」


 自分のペットと似たような名前をしているから名前を変えるとか何様のつもりだよ。

 そんな頭のおかしいことをいう変人を無視して俺は別の道を行こうとする。


 ――だがその女とペットの犬は再び進行方向を塞ぐように立ちふさがった。


 「逃がすわけないでしょう?」

 「……なら迷惑行為でGMに報告するだけだ」

 「するならすればいいんじゃなぁい。あたくしはただ道で立ち止まってるだけだから別に何も怖くないわぁ」


 この女は俺の脅しに余裕の笑顔を浮かべる。

 それは何処までやったら違反になるのかしっかりと把握しているものが見せるものだった。


 手慣れてやがる……。

 恐らくマダムがこうやってプレイヤーに文句を付けるのは初めてではないのだろう。

 このまま会話をせずに逃れようとしてもVRMMO歴が殆どない俺は逃げ切れないと悟った。


 「いくら邪魔しようたって無駄だぞ。俺には大人しく改名する気なんてない」

 「そうよねぇ。簡単にあたくしの願いを聞いてくれるとは思ってないわぁ。だから勝負をしましょう」

 「勝負だと?」

 「そうよ。その薄汚い猫とわたしのぱるちゃんでPVPをしましょう。あたくし達が勝てば貴方はその猫の名前を改名するのよ。逆にあたくし達がもし負けたら貴方たちにはもう付きまとわないし、ついでにこれを」


 そう言ってその女はウィンドウを表示し、俺に見せつけた。

 そこには様々なアイテムやこの世界の貨幣であるガルドが記載されている。


 「この課金アイテムも含めた様々なアイテムと資金をプレゼントするわぁ。貴方のような初心者にはのどから手が出るほどに欲しい商品でしょう?」

 「確かに色々とあるみたいだが、別に自分で集めれば良いだけの話だ。興味が引かれるものじゃないな。そう言うわけでその勝負は受けない。誰かと戦いなら別のやつとやってろ」

 「あら? 逃げるのかしらぁ」


 無視だ無視。

 ここで反応をしたら脈有りだと思われて絡まれ続ける。


 「おほほほ! それも仕方ないわよねぇ。そんな雑魚そうなペットじゃ、とても勝てないものねぇ~。貴方も可哀想に、そんな駄目駄目なパートナーを持っているから戦うことも出来ないなんて」

 「……ふざけるなよ。俺のみぃちゃんは、俺の愛猫は、賢くて強い最高のパートナーだ! お前に馬鹿にされるいわれはない!」


 乗るべきではない。それは分かっている。

 ――だけど家族同然に思っている自分のペットをここまで侮辱されて引き下がれるか!


 「受けてやるを勝負を! 俺とみぃちゃんが勝利してお前に吠え面をかかせてやる!」


 俺のその言葉を聞いた瞬間、目の前の女は罠に獲物が掛かったことを喜ぶようににやりと笑みを浮かべる。


 ……ここまで来た以上は引き返せない。

 全力でこのクソ女達を倒してやる。


 「じゃあ、始めましょう! PVPを!」


 ステリーからのPVPの申し込みがありました。とウィンドウが表示される。

 俺はその対戦申し込むを受け付けた。

 やがてこの路地裏は対戦用に変更され戦いが始まることになった。


ギルドに行ったら荒くれ者に絡まれるのがテンプレですが、

ペットが戦う世界で荒くれ者を出してもなぁ~と思ったので、

エセマダムがその役を担うことになりました。


エセマダムはヒロインとかではなく敵でしかないので安心してください。

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