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チュートリアル


 『ようこそ。パートナーズオンラインへ。プレイヤーの方、そして相棒となるペットの方、来訪を歓迎いたします』


 意識が覚醒するとそこは無機質な白い部屋とも言うべき空間だった。

 俺はその場所で足下を踏みしめた。

 思った以上にしっかりとした感触に思わずこれが仮想現実かと声が漏れる。


 『ではまずはプレイヤーネームを決めて頂きます。ペットの方の名前もプレイヤーの方が入力をお願いします』


 俺が感動している間も淡々と設定用のアナウンスは進んでいた。

 名前は元から決めていたのでそれを言う。


 「プレイヤー名は【テイル】。ペットはみぃちゃんだ」


 そう言って俺は近くにいたみぃちゃんを持ち上げてどこからかこちらを把握しているAIに見せつける。みぃちゃんは超常的な事態に巻き込まれて最初は動揺していたが今は落ち着いたらしく物珍しそうに周囲をキョロキョロしている。


 『プレイヤー名テイル、ペット名みぃちゃん。登録いたしました。では次にプレイヤーの方のアバターを作成してください。このアバターは他プレイヤーとそのペットから見た場合の見た目になります。プレイヤーのパートナーであるペットからは現実の姿と同じように見えるので安心してください』


 目の前に俺の姿が現れる。

 俺は手元のディスプレイを操作してその姿を黒髪で赤色の目をした18歳くらいの少年の姿に変更する。服装は自身が戦うわけでもないので現実でも使用しているカジュアルなものにしておく。


 設定を終えた俺はOKボタンを押下した。

 すると次のアナウンスが流れる。


 『アバターの設定が完了致しました。続いてペットの方への知能向上処理を行います。知能向上処理を開始するためには下記の承諾証の内容を読みOKボタンを押してください』


 目の前に承諾証と記載されたウィンドウが表示される。

 ことはみぃちゃんの健康に関わる問題だ。

 俺は承諾証の内容をすみからすみまで何度も確認して読み、問題ないことを確認してからOKボタンを押下した。


 『では知能向上処理を開始します』

 「みぃ!?」


 淡い光がみぃちゃんに注ぎこまれる。

 バタバタと揺れ動くみぃちゃんの姿に思わず本当に大丈夫なのかと思うが、異常はそれぐらいで程なくして処理が終わる。


 『知能向上処理が完了致しました。これ以降、みぃちゃんは人類なみの知能を獲得いたしました。規定の初期設定が完了致しましたのでこれよりパートナーズオンラインのチュートリアルを開始します』


 音声がそこまで言うのと共に白い部屋に俺とみぃちゃんの黒いそっくりさんが部屋に出現し、それに相対するように魔物と呼べる生物が一体現れる。


 『パートナーズオンラインではプレイヤーは直接戦闘に参加することが出来ません。戦闘は貴方の相棒であるペットが行い、プレイヤーはそのペットの援護をすることになります』


 なるほどポケ○ンみたいな仕組みってことねと納得する。


 『プレイヤーが行える行動は大きく分けて三つになります。それは【命令コマンド】、【付与エンチャント】、【設置セット】です。まずは命令から見てみましょう』


 すると黒い俺が機械音声で声を発した。


 『噛み付け!』


 その言葉に従って黒いみぃちゃんが魔物に噛み付く、だがその噛み付きは明らかに本来のみぃちゃんのものより威力があった。


 『このように命令はプレイヤーがペットに指示を出すことで使用できます。命令した行動をペットが行うとペットの行動に補正がかかります。端的に言えばジャンプしろと命じて、ペットがジャンプしてくれればより大きく飛ぶことが出来るといった形です。では続いて付与について見てみましょう』


 再び黒い俺が動き出す。

 今度は手をみぃちゃんの方に掲げながら言葉を発した。


 『筋力増強ストレングス!』


 黒い俺の手が光ったあと、黒いみぃちゃんの体が淡く光る。

 黒いみぃちゃんはそのまま魔物を切り裂いた。

 そしてその直ぐ後、黒いみぃちゃんの体から光が失われる。


 『このように付与は効果名を宣言することでMPを消費してペットに様々な効果を与えることが出来ます。効果はペットが光に包まれている間は継続します。付与の効果は短時間しか続かないのでタイミングをプレイヤーの方は見計らう必要があります。最後に設置についてみて見ましょう』


 黒い俺は突然走り出した。

 みぃちゃんと魔物の間に行くと目の前の足下に手を向けた。


 『ストーンウォール!』


 その言葉と共にみぃちゃんと魔物の間に石の壁がそそり立った。


 『このように設置はオブジェクト名を宣言することでMPを消費してプレイヤーの周囲にそのオブジェクトを設置することが出来ます。あくまでプレイヤーは直接的なダメージを与えることは出来ないので範囲内に敵味方のペットがいるときは設置することが出来ません。またプレイヤーが魔物の前に出ることに恐怖を感じるかもしれませんが、戦闘中プレイヤーは敵味方のユニットからの透過対象になるので攻撃がすり抜けるため心配する必要はありません。以上が主な機能の解説になります』


 その言葉と共に黒い俺とみぃちゃんが消えた。


 『ここからはプレイヤーの方からの質問の時間となります。ですがその前にプレイヤーの方から多く寄せられる質問とその回答について提供致します』


 ぴこんという音がなり、ウィンドウが一つ表示された。

 俺はそこに書いてある内容を読む。


 Q1:魔物とペットが戦うということになるけど、ペットがトラウマになるような痛みを受けたりしない?

 A1:ペットの方へは他のVRMMOのようにダメージキャンセラ―機能が発生します。この機能によって例え思いっきり魔物に切り裂かれたとしても軽く触った程度の痛みしか受けません。これにより痛みによるHPの減少を表現出来ないためHPが減ると共にペットの方の体を重くするなど動きに制限が加わることになります。


 Q2:MPについて詳しく教えてください。

 A2:MPとはアニマルポイントの略です。MPにはプレイヤー用とペット用の二つがあります。プレイヤーのMPはこれを消費することで付与と設置を行う事が出来ます。MPの最大値は100で時間経過で自動回復します。効果が強い付与や設置ほどより多くのMPを使うことになるので戦いの中で配分を考えながら使用することが大切です。ペットのMPはこれを消費することで技を放つことが出来ます。MPの最大値は成長により変化しますが、プレイヤーと違って自動回復はしないので残量を気にしながら使う必要があります。


 Q3:ペットの成長要素について教えてください。

 A3:ペットには【種族】、【レベル】、【HP】、【MP】、【STR】、【VIT】、【DEX】、【AGI】、【INT】、【特性】、【技】ステータスが存在します。

 それぞれの詳細は下記のようになります。

 ・種族:ペットの種族。5の倍数ごとにペットは上位種族や別種族へ進化する。

 ・レベル:ペットのレベル。上がるごとに【HP】~【INT】の数値が向上する。

 ・HP:ペットのヒットポイント。ゼロになったら敗北する。

 ・MP:ペットのアニマルポイント。技を放つときに消費する。

 ・STR:ペットの力の強さ

 ・VIT:ペットの堅さ

 ・DEX:ペットの器用さ

 ・AGI:ペットの俊敏さ

 ・INT:ペットの賢さ。技の習得や技の威力に補正が係る。

 ・特性:ペットの種族が持つ能力(例:金剛体はVITが上昇する)

 ・技:ペットが放つ特殊攻撃(例:炎を吐く)


 Q4:ペットの種族はどのような基準で変更されますか?

 A4:ペットの種族はペットのレベルが5の倍数になった時にそれまでのペットのそれまでの経験とプレイヤーのペットへの扱いによって自動的に進化先が決められて進化します。一度進化した種族には後から戻すことが可能です。またそもそも進化させたくない時はかわらずの石と呼ばれるアイテムをプレイヤーが保持することで進化を防ぐことが出来ます。ですがペットの進化はこのゲームの肝となる要素の一つであり、あっと驚くようなEX進化など様々な進化先が用意されているので自由に進化させていくことをオススメします。


 「なるほど。大体聞きたいことは質問されてるな。質問はなしでいい」

 『かしこまりました。では最後にチュートリアルバトルを行います。この戦いの内容によってペットの方の第一進化が行われますので気合いを入れて行ってください』


 俺とみぃちゃんの前に犬のような姿の魔物が現れた。

 視界にその魔物の情報が表示される。

 どうやら【孤高犬ロンリーウルフ】という名前のモンスターらしい。


 『ではバトルを開始します』


 その言葉と共に孤高犬がみぃちゃんに向かって突撃を開始した。


 「よし! みぃちゃんやるぞ!」

 「みぃ!」

 「とりあえず、孤高犬を躱せ!」


 孤高犬がみぃちゃんに噛み付こうとするが俺の命令で強化されたみぃちゃんはそれを飛んで躱す。そしてみぃちゃんはそのまま孤高犬をその爪で引っ掻こうとする。


 「筋力増強ストレングス!」

 「きゃぅん!」


 みぃちゃんの爪が孤高犬を切り裂いた。

 想像以上の威力に驚きつつも俺はみぃちゃんに指示を出す。


 「みぃちゃん! 一旦引くんだ!」

 「みぃ」


 分かってると言わんばかりに一言を返して飛び退くみぃちゃん。

 あのまま攻撃を連続して続けていれば孤高犬の手ひどい反撃を受けていた可能性がある。

 体格で劣っている以上、目指す戦い方はヒットアンドアウェイ。

 どうやらその認識はみぃちゃんと俺で一致しているようだった。


 その後もみぃちゃんは孤高犬相手に命令を行わなくても適度な牽制を入れつつ戦いを継続していた。俺は離れた位置からそれを見つつここから先を如何していくかを考える。


 想像以上にみぃちゃんが賢い。

 上手く間合いをはかりながら牽制と急所への一撃を織り交ぜるその姿はまるで歴戦の格闘家のようだ。それにこちらの言葉も完全に理解して合わせてくれている。

 これが知能向上の成果かと思わず思う。

 啓介は特殊な技術で人間並みの知能を持たせることが出来ると言っていたが、実際にそのレベルの機能は働いていると感じる。


 このままでもみぃちゃんは相手に勝利するだろう。

 だけどそれではパートナーとして俺がここにいる意味がない。


 「一気に勝負を決めるなら隙を生み出すのが一番だな」


 俺は走り出した目的地はみぃちゃん達が戦っているところから少し離れた地点だ。


 「沼!」


 足下にMPを使用して沼を作り出した。

 そしてみぃちゃんに向かって叫ぶ。


 「みぃちゃん! こっちだ!」

 「みぃ! みぃーみ」

 「わぅ!」


 沼を見て意図を理解したみぃちゃんは孤高犬を煽りながら沼の方へとやってきた。

 そして沼の手前で大きくジャンプし沼を躱す。

 後ろを走っていた孤高犬はそこで沼の存在にそのまま沼に嵌まって動きが止まる。


 「今だ! 切り裂け! 筋力増強ストレングス!」

 「みぃー、みぃ!」

 「ぎゃぅ~う」


 みぃちゃんの一撃が孤高犬の首元を深く切り裂いた。

 HPがゼロになった孤高犬は光となって消滅し、俺達の目の前にYOU WINと書かれたウィンドウが表示される。


 『お見事です。以上でチュートリアルバトルを終了します。ヒットアンドアウェイで相手を翻弄し闘い抜いたみぃちゃんはそれに合わせた一次進化先【猫又】に進化します』


 「みぃ~!?」


 みぃちゃんが光に包まれる。

 そして光が収まった時、その姿は元のみぃちゃんから少し変わっていた。


 みぃちゃんの面影を残しつつ全体的な体格が少しばかり大きくなっている。そしてその尻尾は先が別れるように二本になっていた。


 「これが進化か、一応みぃちゃんの面影を残している感じになるんだな」

 『その通りです。ペットの姿に愛着を持っているプレイヤーも多いので、出来るだけ姿を変えず面影を残すような形でそれぞれの種族の種族的な特徴を加えています。さてこの進化によって全行程を終了しました。パートナーズオンラインの舞台となる世界への転送を開始します。それではよい冒険を』


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