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プロローグ
鮮明に焼きついている、小さい頃の記憶。
私の真正面に膝をついて、私の目を強く見つめて、私の両肩をつかんで、母は言った。
「いい? レド、あなたはこれから命を懸けてでも、ライト様を守るのよ」
「……はい、母様」
あまり長くなかったとはいえ、いままで伸ばし続けて肩ほどにまであった髪も切り落とし、覚悟は決めた。
これが一族の決まりだから。不思議と悲しみも異論もなかった。
ただ、徹底的に使命を全うしなければならないという強い感情だけが浮かぶ。
その日から私は「女のレド・フランダー」であった過去も、未来も、全部放棄した。