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アクション 7

 港から見知らぬ人たちが手を振ってくれている。こういう時って、みんなが親しい人に思えるから不思議。


 正面パネルに宇宙座標が浮かび、進路案内が始まった。サイドカーが軽く揺れ、いよいよ動き出す。

「このゾクゾクする期待感、たまんない!」


 宇宙エレベータの巨大な外壁に沿ってスピードが上がる。オレンジ色の街並みが宝石で、渋滞の列がネックレスの様。更に奥には母星エバンスが碧く輝いている。『100万ポイントの宇宙絶景』の表現は伊達じゃない。


 景色に見とれているうちに、一気に光速移動に入った。エレベータ、月、エバンスがグニャリと曲がる。時間と空間にズレが生まれた瞬間だ。


 太陽からの光が7色に分かれる。直線の虹が現れては消えていく。音声案内に誘われて、僕はあれをやってみた。自分の体が考えてから2秒後に動く、セルフ・マリオネットだ。


 時間は光速に近づくと遅くなる。だから頭に思って動き出すまでに時間差が生じるのだ。僕はチェアーのアームをゴーグル・パソコンの指示で動かした。


 ホントだ、2秒後に動く!自分の気持ちを追いかけてアームが動く。この不気味さ、クセになる。何度も繰り返したくなる。もう病みつき。


 遊んでいるうちに、惑星ヴィーン、惑星マーキリがグニャリと曲がって登場し、通過して行った。


 いよいよ太陽が登場!間近にする太陽はバカでかい。宇宙の全てが太陽になった感じ。でもサイドカーは止まらない。どんどん近づいていく。太陽表面に向かって真っ逆さま。ジェットコースターどころじゃない!


 巨大な渦の火柱が立ち上ってくる。僕を狙っているかの様に、正確に迫って来る。

「マジ?いきなりかい!」

 太陽下りのスーパースタント、開始だ!


 落下の重力を感じてチェアーが警戒音を発する。ゴーグル・パソコンのレンズに重力を表す数字がカウントされていく。エキサイティング!動かないはずの腕が、バンザイしそうになる。


 サイドカーが火柱をギリギリで回避する。

 行く先に火炎渦プロミネンスが群れを成し、暴れ狂っている。

「あれに向かって行くの!?どこが温度の低い地点なんだ!」

 6000℃の炎がガラス越しに流れていく。

「本当に大丈夫なのか、おいハイエナぁ!?」


 カプセルのガラスは熱いのか冷たいのか。触れてみたいが体は動かない。興味が僕をますます興奮させる。


 炎の波のはるか前方に、うさぎ船が見えた。ガラス張りだからジャッキーの興奮ぶりが良く見える。めっちゃ喜んでんな、アイツ!


 巨大な火炎輪をギリギリで避け飛んで行くムツゴロウ船頭。炎の動きを読んで、ストップ、バック、ターンを次々に繰り返す素晴らしいテクニックだ。プロミネンスはうさぎ船をかすめ、弧を描いて太陽に突き刺さる。飲み込まれたら100%死ぬ。


 僕の乗っているサイドカーが、一気にうさぎ船の後方に接近した。運転手は明らかにムツゴロウを意識している。挑発するようにうさぎ船の頭上を越えていく。そしてより太陽に近づいて行く。


 わざと大きなプロミネンスに近づき避けていく。炎が機体を360度包み込む。もの凄い圧力が体を押す。


 太陽面から緑に変色していくひときわ大きなプロミネンスが発生した。スクリーンに映し出された外気温度の表示が7000℃を越えた。

  

 サイドカーがクライマックスとしてこのプロミネンスに向かう直前、なんとうさぎ船が進路に割り込んで来た。

「危ないっ!」僕は聞こえるはずの無い声を上げた。


 僕ら2機の前方から巨大な火炎膜が広がる。その圧力がうさぎ船をサイドカーの真上に押し上げた。


 ムキになったサイドカーの運転手がスピードを上げ、うさぎ船の前方へ浮上し進路を妨害した。


 面舵一杯に避けるうさぎ船。その直後、真横から猛スピードの火炎矢が襲い掛かった。


 炎に爪を立てられたうさぎ船が、制御不能になって太陽に落ちていく!回転きりもみ状態だ。うさぎ船の中でムツゴロウとリィリィが壁に激突しているのが見えた。ジャッキーが櫓を掴み、動かそうとしている。

 

 うさぎ船の眼前で太陽面爆発・フレアが起こる!惑星を飲み込む程の超・巨大火炎流が、彗星規模のプロミネンスを次々に吸収し膨らんでいく。


 ジャッキーが雄たけびをあげる。うさぎ船はあまりに小さく、抵抗する術がない。


「ジャッキーっ!」


 続く 

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