アクション 3
僕は精一杯、平静を装った。
「では、2ヶ月後。失礼します」
さっきとは逆に、今度は僕がジャッキーを引っ張って行った。
大樹のエリア、宇宙エレベータ脇の宇宙空間。ゆっくり漂うウミガメ型ドーム。背中に巨大な帆が2本立っている。ここは宇宙図書館で、たくさんの人達が情報を求めて集まって来ている。
僕らはここで作戦を練ることにした。ジャッキーが早速僕が頼んだ物を見つけて持って来た。
「プラス。あったぞ、ここ1か月のニュース・スティック」
これはいわゆる新聞。スティックをねじると光が放たれ映像が浮かぶ。1か月分まとめて購入すると、スティックが色エンピツ・セットの様。
「よし、じゃ1本ずつ見ていこう」
様々なカラーの透明スティックから、一番キレイと思ったやつを取り出した。ピンク色のやつ。
スティックをグ二っとねじる。パキンという音と共に、閃光の中から映像が現れた。
経済のニュースや動物の赤ちゃんのニュース。う~ん、どれも映画には……。難航しそうだぞ、これは。
次々に映像を飛ばして見ていると、ジャッキーがブツブツ文句を言って来た。
「お前どうすんだよ。ポイント(お金)持ってないぞ俺ら。どうやって作る?ノーギャラじゃ張り合いないし、期限が2か月って、絶対に無理」
「大丈夫。勝算は我にあり。今僕らに一番必要な事は、みんなに知ってもらう事。ギャラより先にプロモーション」
「頭ン中の作戦を話せ」
「よし。あのね、ポイントも時間も無いから、オール・ロケーションで撮る」
「ロケか。あては?」
「ない。だから注目されてるニュースからロケ先を探すしかない。話題性で勝負だ。共演者は現場で自然に出て来る。わざわざ俳優を捜す必要がない」
「イケてんな」
「単純で助かるよ、ジャッキーって」
早くも3本目のスティックだ。流れてきた映像は『太陽下り』。激流川下りの宇宙版だ。太陽の炎を避けながら突き進む、娯楽アトラクション。100年もの歴史があると、ニュースが言っている。
革ジャンを着た軍団が、特殊なサイドカーに客を乗せ、太陽表面ギリギリを遊覧するシーンが映し出された。このハイテク・マシンを駆る連中と、昔ながらに船頭が櫓を操る宇宙船の店がケンカしているらしい。
かつて12軒もあった老舗が、たった1軒だけになったと伝えている。
ふと隣を見ると、ジャッキーがこぶしを握っている。
「映画の舞台、ここにするぞ。太陽か~、俺にピッタリじゃね」
「待て待て。太陽の温度を知ってるか?200万℃だぞ」
「弱い者イジメしてる奴が好かん」
「やめやめ。頭冷やせ」
「港は、宇宙エレベータ500階」
「……蒸発しちゃうからね」
「太陽が勝つか、俺が勝つか」
「言ってる事おかしい」
「決定」
「……」
僕はジャッキーとホイの3人で、宇宙エレベータ500階にやってきた。全く不本意だ。
続く