アクション 37
Ver.2がみんなの精神エネルギーで光り輝く。
溢れてこぼれ出す両手の光を、頭上に掲げた。
光は噴水の様に立ち昇り、部屋の中央に巨大な瓶を造っていく。
金色の大瓶に、更にたくさんの光が注ぎ込まれる。
宇宙エレベータ中の正義の情熱が、たっぷりと満たされていく。
怪獣が気圧され、サメ顎を180度開いて飛び掛かってきた。
僕は瓶を倒し、その口めがけて大量の光を注ぎ込んだ!
「さぁ飲め、化け物!世界中からのリクエストだ」
飲み込まれたピコメカの光が、怪獣の胴体に浸透していく。
金色の体は薄く広がり、大きな円盤プレートに変わっていった。
それは研究室の壁を突き破り、外の空間にまで広がっていく。
そして円盤はゆっくり回転し始めた。
僕はフクラハギのバーニアを噴射し、円盤の上へ。
「コイツを、くらえっ!」
両手グローブのスーパー・ブレード(手の甲のトゲに超音波で振動を起こす)を円盤に押し付けた。
ケモノの皮膚を引き裂いた様に、赤い光が吹き出す。
円盤の中央から悲鳴を上げる怪獣のサメ首が飛び出した。
奴は意味不明な異次元の言葉で絶叫する!
僕は光化した皮膚を両手で剥ぎ、無理やり掴み上げた。
電気の配線を引きちぎる様な破裂音。更に大量の赤光が!
怪獣は自由が利かなくなった体に苦しみながら、僕に振り向いた。
「キサマ何をした?手に持っている光は俺のっ」
「察しがイイなバカヤロー。精神エネルギーがお前の記憶に残る悪い経験に作用した。それをピコメカで物質化したモノだ。……覚悟しろ。全部、剥ぎ取ってやる!」
僕は光る『悪い経験』の先っぽを両腕に巻いた。
翼竜型の翼を展開!バーニアも全開!
「ジャッキー、いくぞっ!!!」
円盤怪獣の上を反時計回りに滑走する。
バリバリとエグイ音を立て、帯状の光の皮膚を剥ぎ取っていく。
赤光がライン状に吹き上がる。怪獣が激痛に悲鳴を上げる。しかし大回転を止める気はない。
「この野郎、どんだけ悪い事してきたんだ。光が全く減らないぞ」
怪獣は激しく首を振り苦悶する……。
精神と肉体を分離することは、こんなにも痛みを伴うものか。
ただこいつはそれだけの罰を受ける実績を作ってきた。
ヨダレを垂らしたサメ首が動きを止めた。
そしてゆっくり、円盤に吸い込まれていく……。
その円盤からサラダ野郎の2本の青い腕が、僕を掴もうとしてくる。
何度もジャンプし、その悪あがきから逃れた。
……僕の両腕には光の大玉が出来ている。しかし目の前にはまだまだ『悪い経験』が光っていた。
円盤を蹴って、更に滑走を続ける。
その時進路の正面から、怪獣がサメ首を突き出した。
目の前に再び巨大な顎が!
ジャンプ!!
円盤を蹴り、咄嗟に真上に飛び上がった。
しかしサメ首が伸びる。ノコギリ歯の列が僕に迫る!
その時、ジャッキーの凄惨な姿が僕の目に浮かんだ。
彼の体が輝きを放つ!
「ジャッキーッ!」
僕は腕に持った『悪い経験』の玉を、サメの口に突っ込んだ!
光りがスパークし、どんどん大きくなっていく。
サメの口が大きく広がった。
こいつ、絶対に許さねぇ!!
ミシッ、ミシッという音が大口から聞こえる。
僕はありったけの精神エネルギーを両手に込めた。
グローブが輝く!
「テメェの悪を、食い改めろーっ!!」
おぞましい音を立て、怪獣の口が裂けた!
異次元語の悲鳴をあげる怪獣。
サメ首が炎に包まれる。
炎は一気に円盤上を回転し、残った『悪い経験』を焼いていった。
炎で光の腕の発光器が破裂する。
炎の中のサメ首が、泣き声を上げる。
動かないアゴをガクガクさせ、首を左右に揺らす。どの動物も最期は同じ動作をするが、怪獣もまた同じだった。
……間の抜けた音を立て、炎が消える。
怪獣の円盤が回りながら小さくなっていく。どんどん、小さくなっていく。
怪獣はサメ首と竜の姿に戻った。しかしそのスケールは僅か1m。
僕は床に膝をついた。
「こいつから悪さを取ったら、これっぽっちになった」
ハイエナンがホッとした表情で近づいて来る。
「お前が光を飲んだら、消えて無くなるんじゃないか」
「なに言ってんの、僕はアイドルだよ。みんなからリクエストを貰えば、輝くに決まってんじゃん!」
続く (まだまだ終わりません!)




