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アクション 32

 僕は壁全面のガラス窓を突き破った!


 目の前にウォーターゴーレムがいる。躊躇せずエアロ・ヴィークルの先端をぶち込んだ!

 しかしゴーレムは高速で回転!身を翻す。


 振り回された野太い水の腕が、ヴィークルの機体と接触。僕は弾き飛ばされた。


 散乱するガラス破片の上に、叩きつけられる。


 奴が手放した銃も床の上でカラカラと回転し、背中に大穴を開けて横たわるブヨブヨおっさんに当たり止まった。


 体内のピコメカが、脳に異常個所を知らせて来る。

 しかし僕はそれを無視。ガラス破片の床を強く叩いて上半身を起こした。


 目の前に3mの水人形がそびえ立つ。そしてその中に腕を組む男。


 壁に激突したヴィークルのアクセルは全開のまま。エンジン音がけたたましく鳴り響いている。

 僕は片膝をつき、ゆっくりと立ち上がった。


「やっと会えたぞ、このサラダ野郎。よくも……、よくも、よくも、よくもテメェはぁーっ!」


 サラダ野郎はΨの形をしたアゴ髭を指で撫でながら、思案顔を見せた。

「誰だ、お前」


「テレビ観てなかったのか、このボケぇ!」

「あん……。あ、お前、うさぎ乃屋のガキだ。ナノ・テクを使ってた。という事は、お前の目的はこいつか」


 サラダ野郎が涼しい顔で振り返った。

 そこには胃の形のカプセルが。

 中の水溶液は赤く染まり、水面にリィリィが浮かんでいる。

 コード線が全ての指先に突き刺されている。


「リィリィッ!」

「待てぇ!近づくな。タダでこいつを返したんじゃつまらない」

「おお、お前……。直ぐにリィリィを解放しなきゃ、お前の細胞一つ一つを焼いて潰すぞ」

「おお。お前の友達の様にか?」


 僕の中で辛うじて保たれていた理性が無くなり、感情の全てが怒りと攻撃欲と残虐性に変わった。

「ブチ、殺すっ!!!」

「お前の様なガキがナノ・テクをあれ程操るとは。大したサイエンティストだ。褒めてやる。俺を目標にしろ」


 サラダ野郎が水人形の中で両腕の義腕を外した。

 ブルーの光粒子が腕の付け根から放射される。

 煌めき沢山の泡を立て、腕の形に変形していった。

 更にその腕をゴーレムの外に突き出し、コブシを握って見せた。

 光粒子が弾け合う。チェーンソー同士の刃をぶつけ合う様な凄まじい炸裂音だ。


 まずこいつをぶち殺す。でないとリィリィは助けられない。ここでジャッキーの仇を取る!


 ゴーグルパソコンからハイスクールのmyパソコンにアクセス。

 画面のコンピュータ言語が、凄まじい速さで現れては消えて行く。


 右手の人差し指をゴーグルに当てると、手の中からピコメカが輝いた。

 それを壁に埋め込まれた瑠璃(濃い紫みの青)色の大型コンピュータに放つ。

 光りが表面から吸収されると、壁一面がバラバラに崩れた。


 粒子と化したコンピュータは大蛇の様に床を這い、僕の体に巻き付いた。

 

 サラダ野郎がせせら笑って僕を見ている。


 大蛇が僕を変身させていく。


 昆虫のオケラをモチーフにした鎧を形成。

 ゴージャスな唐草模様が入っているのは、宇宙エレベータのゴンドラビルのイメージが強かったから。


 学校から出された卒業までの論文課題が、『最高の宇宙服』。

 そしてこの鎧こそが僕の『結論』だ。


 『全環境対応 惑星探査用宇宙服 version2 変形式』。

 この論文を完成させる為に、僕は毎日ピコメカを使用し、研究していたんだ。


 ベースボール・グローブの様に大きい手は、指が1本ずつ分かれ繊細な動きが可能。

 更に表面のトゲが超音波で振動し、合金から羽毛まで切り裂くスーパー・ブレードになっている。

 

 後頭部から背中を包むプロテクター、半卵型カプセルには、過酷な惑星探査に役立つ機能が満載されている。

 腰から下は金属製のマントが燕尾服の様に二つに割れ、先が尖っている。ソーラーパネルであり、大気がある星では拡大して飛翔する為の翼になる。

 オケラを模したのは形状からでは無く、万能性だ。

 

 スーパー・コンピュータと合体したことで、僕のゴーグルパソコンも一気にパワーアップした。


 エアロ・ヴィークルを起こし、武器として構える。


 サラダ野郎が光粒子の腕を交差させて、音と輝きを倍加させた。

 けたたましい轟音。奴の顔に光りが反射する。


 僕の脳裏に、ボロボロにされたジャッキーの顔が浮かぶ。

「その腕だな。僕の親友に酷い事をしたのは……。最初に目を焼いてくれたって」

「あぁ。もっと根性あるかと思ったんだが、泣き出してね。痛がってたんで殺してあげたんだ」

「!?」

「途中まではカッコよかった。でも命乞いをしてから見苦しくなった」

「黙れ」

 僕は奴の光粒子の音をかき消すように、ヴィークルのエンジンを吹かした。

「あいつはな、あのバカは死んでも命乞いなんてしないんだよ」

「いや、したんだな~これが。こうやって上を向いて、汚い涙をぽろりと」

「黙れぇーっ!!!」


 奴が口元で笑ってみせる。


 病院でジャッキーの左目が見開いた時に見えた涙の痕。 

 僕は血まみれの目元にハッキリと見た。

 

 ジャッキー……! 

 

 鎧のグローブの爪がアクセルに食い込む。

「あいつはなぁ、リィリィを助けられない自分が情けなくて、悔しくて、涙が……、涙が止まらなかったんだーっ!!!」


 エンジン全開!エアロ・ヴィークル爆進!!

 ハンドルを掴んだ僕の体が宙に浮いたまま、コンマ数秒の瞬間にサラダ野郎に突っ込んだ!


 続く  

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