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アクション 22

 ハイエナンの部下達が、惑星よりデカい火柱に押し戻されてくる。

 

 僕はピコメカを使い、エアロ・チェアーを立て直した。

 脳内会議、スタート!

 極微細な事でもヒントにして悪状況を打破する、これが僕の必殺技だ。

「どうする。奴はかなり太陽の中心に引きづり込まれてる。すでに水素の核爆発の圧力で潰れて……。圧力、そうだ!」


 僕は眼を動かし、ゴーグルパソコンに設計図を描いた。

 うさぎ船を、ラッビターⅡに向ける。

 ムツゴロウは救助され、ラッビターⅡを離れていく。よし!


 うさぎ船の櫓の先端から、ピコメカを発射。

 光の軌跡が直進していく。


 ピコメカがラッビターⅡを包んだ瞬間、機体がバラバラに分解。

 そして再構築されていく。

 

 正四面体の装置を3機造った。それをうさぎ船の前に縦に並べて配置する。


 ピコメカを通して装置の起動を指示。ゆっくりと音を立て始めた。

「クーラー装置、起動確認」

 巨大な冷却装置の盾。太陽の水素を取り込み圧力を下げる。液化した水素を逆に外へ噴射する。この時、水素は一気に気化し、超低温を作り出す。


 「ハイエナンが居る場所はおそらく5万℃~10万℃。クーラー1機の耐熱時間はおよそ3分。タイムオーバーの可能性は高い」

 うさぎ船は今にも分解しそうだ。クーラーが無くなれば一瞬で木っ端みじんになる。 

 でも、僕はこの9分間に、本物のアイドルになれるかどうか、運命を掛ける!


 うさぎ乃屋のジャッキーから通信映像が入った。

「行くなプラス!奴は助からん。もう死んでる」

「お前らしくもない。早く行けってなんで言わない」

「冗談じゃない!あんな奴、死んでしまえばいい」

「それ本気?僕とおっしょうさんを、命懸けで助けたのに?」

「……」

「アイツは自分がした事の責任をとった。子分たちの分も全部しょって。アイツは悪い奴か?今回の事件には黒幕がいる。悪い奴はそいつだ。そいつをぶっ倒す」

「……プラス、リィリィが泣いてる」

 モニターに映るリィリィ。大きな瞳が、また涙で濡れている。声も出せず、ずっと僕を見つめている。

 本当に優しいコ。ハイエナンを助けてと言いたいけど、僕の事も心配して……。わかってるよ。

「リィリィ。君にひどい事をした奴だけど、僕は助けに行く。アイツ、謝ってたよ。ひどい事を言ったって。後悔してるって」

「プラス君!」

「もう、友達なんだ……」

 リィリィはピンク色の可愛い肉球の手をモニターに押し付け、また泣き出した。


「ジャッキー。ハイエナンの親会社がラッビターⅡの部品に細工してた。宇宙エレベータから送られていた電磁波が、太陽の磁場で狂ってコントロールが効かなくなった。僕は逆にこの電磁波を利用する」

 眼を動かし、ゴーグルパソコンにピコメカへの指示をインプットする。

「クーラー装置は元々ラッビターの部品。そのクーラーと太陽が作り出す静電気を電磁波に流す。これで強力な磁力を発生させる。宇宙エレベータを釣り竿にして、僕とハイエナンを吊り上げる」

「できんのか、そんなこと!?」

「やるさ。静電気が作る磁力が宇宙エレベータに届くまでおよそ8分半。その前にハイエナンをキャッチする。クーラー3機が爆発するまで約9分。太陽圏からの脱出時間を考えると……」

「やべぇ、ギリじゃんか!」

「うん、ギリギリだ。……宇宙エレベータで一本釣り!9分後にまた連絡する」

 発進!!



 ハイエナンは太陽中心まで大きくループしながら落ちてるはず。直線で突き進めば追いつくはずだ。

 クーラー出力を全開!金色に光る太陽面爆発・フレアに突入する!


 ゴーグルパソコンにカウントダウンが表示される。

 宇宙エレベータから流れて来ていた電磁波に、静電気が伝わる。

 光が宇宙を走っていく。


 うさぎ船が太陽中心に向かう。炎を割いて突き進む。

 ゴーグルパソコンをレーダーにリンクした。

 ハイエナンのいる場所を探る。もうかなり深い所まで引き込まれているはず。


 

 反応、ゼロ……。

 かなり深い所まで探ったがいない。より深部まで進んで探すしかないが、3機のクーラー装置の内、先頭1機の表面温度がめちゃヤバい。うなぎ上りだ。

 

 太陽下り船の耐熱技術はマスターしたはずだった。しかし直進で突き進む摩擦熱は想像をはるかに上回った。核爆発の中を超スピードで進んでいるのだから当然だ。


 ハイエナンはもう消滅したかも……、そんな弱気が心に浮かんだ時、レーダーに反応があった。

「ハイエナン!?」

 レーダーに映る影はガス渦の中を横ぎって移動している。

「奴だ!まだ生きてる!脱出を試みている」


 うさぎ船の周りのガスが渦を泣き始めた。プロミネンスが湧き立つ準備をしている。

「違う、これは規模が小さい。奴はこれには乗らない!」


 クーラー装置の1機目が爆発!残り6分。うさぎ船の内外温度が上がり始めた。

 船のエンジンオイルが沸騰し始めたと警報が鳴る。

 船体の耐熱板が今にも剥離しそうだ。

「マズイ!」


 船内は光に満たされ、影が全く無くなった。

 うさぎ船の背後から、太陽に戻るプロミネンスの炎の手が掴みかかる。

 その手は船体の尻を掴み、上部エンジン噴射口が大破した。飛び散った破片が、火炎渦の中で溶けていく。


 船内温度、60℃!金属のエアロ・チェアーもチンチンに熱くなっている。

 ゴーグルパソコンに赤い警告文が光る。船体にミクロの穴が開き始めていると!


 僕は虚ろになる意識を奮い立たせ、ハイエナンを捜した。

 クーラー装置、2機目爆発!

 早すぎる!まだ2分も経ってない!何で!?

 

 続く

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