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アクション 20

 ラッビターⅡの修理が完了した。あれから二週間も経っていた。

 ムツゴロウは僕たちの体を気遣って、一人で試運転に出発していた。


 僕らはうさぎ乃屋の前で、署名運動に励んでいた。

 気持ちを奮い立たせ、ファンと交流をしていた時、店内からけたたましい警報が鳴り響いた。


 警報なんて、ここに来て初めて聞く。

 僕はエアロ・チェアーを反転させて、急いで中へ飛んだ。


 店内に入ると、通信用スクリーンに向かって泣き叫ぶリィリィがいた。

 ビッグモニターにはラッビターⅡの船内が赤く映し出されていた。

 背後には巨大に迫る太陽が。船内システムの異常を知らせる警報が鳴っている。


 一体何が起きたのか!?

 僕はピコメカを使ってコンピュータにアクセス。破損状況を確認した。


『船体破損箇所、両耳部分の欠落、および船外船内パーツ類、剥離進行中』


「パーツの剥離!?」

 船内の壁など、あらゆる部分の角がめくれ上がり、剥がれ始めている。

 警報の音がどんどん大きくなっていく。

 舵の前で倒れているムツゴロウに向かって、リィリィは泣き叫ぶしかなかった。


 久しぶりに見たリィリィの顔が、再び大きな涙に濡れている。

 僕の胸は張り裂けそうだ。

「いったい船に何が起きてるんだ!?」


 僕はエアロ・チェアーを動かし、店の外に出た。

 ジャッキーが気付いて追って来る。

「お前、一人でどこ行くんだよ!」

「リィリィを頼む」

「ダメだ。俺も行く」

「ダメだ。僕はおっしょうさんを助けに行く。僕たちにもしもの事があったら、リィリィのこと、お前が守れ」

 僕はジャッキーを睨み、ついて来ない様制した。


 うさぎ船へ飛ぶ。ハッチを開けて乗船。

「ドライブの時みたいに、トンボとハチのロボットじゃ追いつかないな」

 ピコメカを使って、エアロ・チェアーのアームを大きく変形。櫓を掴んだ。

 

 頭の中でシミレーションを超スピードで繰り返す。

 太陽の重力圏から、分解していく船体をどう引き上げるか。

 

 ……最善策は思いつかない。とにかく太陽に向かう!


 船体が浮上する。その時、隣のショップからハイエナンがサイドカーを発進させるのが目に入った。

『あいつ、何かたくらんでる』瞬間的に思った。しかし、それを推理する時間は無い。

 太陽に向けて宇宙座標を合わせる。

 眼下にうさぎ乃屋の屋根が見える。その下にいるリィリィへの思いが、命懸けの出発を急かす。


 光速移動へ。窓から見える宇宙エレベータが大きく歪む。

 光のゲートを潜り、最高速で太陽に向かう。


 ラッビターⅡの交換パーツに違和感を感じていたのに、日々の忙しさに追われて検証しなかった。

『僕の責任だ』やり場のない怒りがこみ上げる。


 しかし、意外にもそんな怒りを鎮めたのは、背後をつけて来るハイエナンの存在だった。


 色々な仮説が脳を活性化させていく。

 ムツゴロウが居そうな場所は見当がついていた。映像に映っていた太陽の黒点の形が、ラッビターⅡの位置を教えていた。下手なデータより今の僕にはわかりやすい。


 光速移動から通常移動の空間に戻って来た。短くて長い時間だった。それは僕が冷静になるには、とても有効な時間だった。


 思っていた通り、うさぎ船の正面にラッビターⅡが見えた。すでに太陽の重力圏深部に引き込まれている。ムツゴロウの運転技術で、なんとか低温コロナホールに入っていた。しかし、太陽面爆発・フレアの炎が届く高度だ。いつ飲み込まれてもおかしくない。6000℃の炎の海に落ちれば、船体は一瞬にして消える。パーツの剥離も進行している。いつ分解してもおかしくない!


 死のダイブだ!覚悟を決めている時間は無い。

「行く!!!」

 ジェットコースターの急降下の様に、心の抵抗を無視して太陽に落ちていく。

 窓の外の炎が銀色に踊る。『なぜ生きている!?』そうあざ笑うかの様だ。


 ラッビターⅡが炎の手に捕まれた!太陽ガスの渦が巻く。中心温度は1600万℃。人知が太刀打ちできる温度じゃない!レーダーからラッビターⅡの影が消えた時、ムツゴロウは死ぬ。


 うさぎ船もガス渦に突入!水素の核爆発の中に入って行く。さすがにハイエナンもここまではついて来ない。


 彼の無線を傍受し続けていた時、ついにモニターに映像が映し出された。

 この瞬間を待っていた!彼が僕との距離を置いた時、必ずどこかと交信するはずだと読んでいた。その相手こそ、今回の事件の黒幕だ。


 モニターにスキンヘッドで醜く太り、先の尖った大きな耳の50代男が現れた。

 僕はゴーグルパソコンに記録を命じた。

「こいつが、黒幕か!こいつの顔を忘れるな」


 黒幕の男が言う。

「ぉーし、間に合ったなハイエナ。太陽下りのジジィがくたばるシーンが観たかった」

「Zan支社長。太陽下りは一週間は俺に任せると言ったはず」

「なんだと?お前がOeを使って仕組んだ罠じゃないのか?」

「違います!」

「じゃーこりゃ誰の仕業だ?」

 

 Zanと呼ばれる男の背後で、大きな水人形の中に浮かぶ黒髪オールバックの30代男が笑っていた。

 その男を見た時、僕はサラダ油に顔を押し付けられた様な不快感を覚えた。


 Zanがサラダ油男に話しかける。

「ドクター・トッロフィーパ。これはお前がやったのか?わしはハイエナにOeを譲れと命令したはず」

「お言葉ですが、Oeはバカには扱えません。ただ成果は観せたかったので」

 ハイエナンがZanに食い下がる。

「これを見せる為に、俺を太陽まで飛ばしたんですか!?」

「バカヤロウ!お前にじゃない、わしが観る為にお前はそこにいるんだ!」

「卑怯だ」

「なにぃ!?おい犬!お前たちみたいな輩にまともな仕事をさせてやった恩を忘れんな!お前が何年もかかった事を、ドクターはたった一度のチャンスでここまでしてみせた。会社にとっての人材価値の違いを理解しろ、このマヌケぇ!」


 ムツゴロウのラッビターⅡの影が、レーダーの外に出かかっている。これ以上の深部に落ちれば追跡できない。船の外温は推定1万℃を越えている。ガラスに僅かでもヒビが入ったら最後、一瞬で蒸発する。


 ラッビターⅡの影が、レーダーの端で点滅を始めた。やばい、消える!


 うさぎ船、エンジン全開!追うんだ!

 老船がきしむ!

 Zanの馬鹿笑いの声が響き渡る!


 続く 

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