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アクション 17

 うさぎ乃屋前。

 

 ハイエナンの黒い光が螺旋を描き、攻撃を仕掛ける。ジャッキーの棒がそれをサバき弾くたびに、赤いフラッシュが瞬く。

 

 ムチの衝撃の連続、そしてとどめを狙う剣の一撃。逆にその動きを読んでのカウンター……。一瞬の攻防が何度も繰り返される。当然ジャッキーの方がダメージが大きい。筆で絵の具を散らした様に、ジャッキーの鮮血が飛び散る。


 ジャッキーの奴、僕をかばってる!


 僕はハイエナンの壊れたサイドカーに向けて、ピコメカを発射した。

 機械の塊が一瞬にして微粒子になる。それをエアロチェアーに飛ばす。背面からサーベル型ソーラーアンテナを出し、微粒子を付着させた。


 スケールアップだ!刀身に0.8mmの穴の列を作った。そこから30キロ気圧のエアーを噴射する(車のタイヤの空気圧は2~3キロ)。防火設備に利用されるエアカーテンの原理で熱を遮断する!フォトンウェポンの熱量を弾くにはこれしかない!


 そして更に、サイドカーのエンジン構造をエアロチェアー下部に取りつけた。ハイエナンのムチ攻撃を回避するには広範囲を高速移動しなきゃダメだ。これが今できる最大のパワーアップだ!

 

 パワード・エアロチェアー、急発進!ジャッキーに幾重もの光のリングを打ち込むハイエナンに飛ぶ。


 ハイエナンの背後から迫る。しかし彼は察知し振り向きざまに剣で攻撃してきた。アンテナサーベルで辛うじて弾き返す。


 僕の体の神経は、事故で焼き切れているはずなのに、もの凄い衝撃が伝わって来る。ジャッキーは今まで何発こんな攻撃を受け止めていたのか!?


 僕はジャッキーから彼を引き離そうと、距離を取って正面に位置した。


 ハイエナンも息を整えようと、顔の前に剣を立てムチを巻く。


 エアロ・チェアーのエンジン音とエアー・アンテナサーベルの風切る音が唸る。


 黒い光の剣とムチが弾け合う音が響き渡る。


 ハイエナンはおもむろに膝をつき、地面ギリギリから天に向かって剣を振り上げた!

 ムチが一気に伸びていく!

 

 僕はムチの動きを読み、先手をうってハイエナンの間合いに入った!ジャッキーも同じタイミングを狙って飛び込んでくる!


 ハイエナンが柄のボタンを押した。ムチの光の先端が花火の様に開き、ドーム型に僕らを包み込んだ!

 

 マズイっ!


 ハイエナンが剣でムチを引く。ドーム型に広がった12本のムチが距離を詰め、僕とジャッキーに襲い掛かった。


 エアロ・チェアーが切り裂かれる!ジャッキーもダメージを負い、10数m弾き飛ばされた。


 ジャッキー……。エアロ・チェアーの残ったエンジンだけが、惨めな音を鳴らしている。


 僕はチェアーが盾になったが、ジャッキーは生身に喰らっている。はるかにダメージが大きいはず。


 ハイエナンがもの凄い形相で近づいて来る。


 その時、リィリィのファンたちが僕らをかばって人壁を作った。ハイエナンが戸惑いの表情を浮かべる。

しかし、敵意を向ける彼らに対して、怒りの心が湧き立つようであった。


 床に落ちているムチを剣先で弾き上げ、剣に巻く。攻撃態勢だ。


 僕は迫って来る彼の足を睨む事しかできない。

 ちくしょう……。その時、彼方からパトカー・ホバーヘリコプターのサイレンが聞こえてきた。


 ハイエナンは勝利を確認するように僕を見下ろす。そして、ゆっくり去って行った。


 

 僕はファンの人たちに抱きかかえられ、うさぎ乃屋に入った。横たえられた畳の上で、ずっしりと思い敗北感に包まれた。


 ジャッキーもぐったりしている。ただ傷よりもハイエナンに負けたことがショックな様だ。

「……くっそー。ハイエナ野郎、手加減しやがった」


 そうだ。パワード・チェアーを切り裂く威力のムチの斉射を受けて、僕らがこれ位のケガで済むはずがない。奴は、わざと外したんだ。


 玄関に運び込まれるボロボロのエアロ・チェアー。そこへムツゴロウとリィリィが帰って来た。


 リィリィは僕たちの様子に驚きつつも、奥の部屋に入って行った。

 

 ムツゴロウが一方的に話し始めた。

「悪いがリィリィは映画に出さない」


 僕は必死にムツゴロウの顔を見ようとしたが、首が動かない。声も出ない。


 ムツゴロウが続ける。

「あの子は映画に出さん。そっとしておいてやってくれ。二人には感謝しとる。心から。……実はリィリィがラッビターを色々ぶつけてしまって、エンジンが正常に動かなくなった。今のまま太陽に接近するのは危険じゃ」

「!?」

「まだポイントが全然足りん事はわかっとる。じゃが修理には相当日にちが掛かる。ラッビターは、もう動かん……」


 僕の体から、チカラと希望が消えていった。

 しかし、この時すでに、別の敵がとてつもない大ダメージを僕らに与えていた事など、知る由も無かった。


 続く

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