アクション 14
「そこでワシはあの太陽に目を着けた。太陽からは無尽蔵にガンマ線が放射されている。無料だ。だが照射にムラがあると上手く金にならん。そこでハイエナの出番だ。太陽下りで、安定照射している場所を綿密に確認させている。あとはそのエリアを情報化し、辰砂を買い漁っている企業に売る」
ドクターは水人形の中でゆっくり漂う。
「利益は天文学的な数字でしょう」
「たまらんな!お前のフォトン・ウェポンの儲けより何倍稼げる?」
すると、Zanの顔が満面の笑みから怒りの表情に変わっていく。
「ハイエナ。太陽下りを独占しろと指示したはず。なぜワシの言うとおりになっていない?」
「もう少しお時間を」
「時間はねーんだ!ウチの会社はジリ貧だ!本格化した遺伝子治療のせいで入院患者が激減した!宇宙中の病院から入院食が無くなった。残飯の再生油で生き延びてきたが、もう限界だ。ワシが支社長になった以上、必ず業績を逆転回復させる。いいかハイエナ。ウチは負け犬は飼ってる余裕はねー」
ドクターが呟いた。
「廊下の絵の方がいい仕事をしている……」
重役たちがドクターの皮肉に合わせてせせら笑う。
ハイエナンがフォトン・セイバーを取り出そうと背中に手を回す。
ドクターは見透かすように彼を見下ろす。
「私のフォトン・ウェポンが随分お気に入りの様だ」
ハイエナンの手が止まる。
そんな彼に唾を吐きかける様にZanが命令する。
「あと一週間で決着をつけろ。できん時はドクターに仕事を譲れ」
「一週間!?」
「時間は無いぞ。時計を抱いて仕事をしろ」
Zanがドクターに質問する。
「太陽のガンマ線をどうコントロールする?」
「磁場を利用します。すでにコントロールする技術は出来ています」
「なぜ早く見せん!」
水中のドクターが、スーツの懐から先の尖ったオレンジスティックを取り出す。そして自分の左腕の付け根に突き刺した。
重役たちに戦慄が走る!次々に常識を超えた行為を見せつけるドクター・トッロフィーパ。
水人形が歩き出し、手を伸ばして部屋の扉を開けた。
廊下から黒光りした縦2mの四角柱が、浮かんだまま入って来た。
ドクターが刺したスティックをグリグリひねると、四角柱が様々に変形する。球、三角錐、そしてハンマー、ノコギリ、斧……。
驚く重役たちを、ドクターがあざ笑う。
「浮かんでいるのはOe磁性流体。つまり液体の磁石です。磁場を使えば核爆弾でも封じ込む事ができる。私の技術を使えば、この様に細やかな指示までコントロール可能です。あとは大型化した装置にすればいい」
ここで、短気なZanが思いも寄らぬ事を言い出した。
「おい待て。このOeとかいうの、おもしろいな。こいつをハイエナにくれてやれ。上手く使って商売敵を潰してみろ」
戸惑うハイエナン。
ドクターの表情がくもる。
Zan支社長、ドクター・トッロフィーパ、そしてハイエナン……。彼らのうちの誰かが、このあとプラスにとってかけがえのないものを破壊する。
その目を覆いたくなる様な凄惨な光景を見なければ、この物語のエンディングに辿り着けない。プラスの慟哭を見なければ……。
覚悟も持つ者のみに、
続く




