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アクション 12

 宇宙エレベータ外壁近くに浮かぶショッピングモール。串団子の様に9個のカプセルドームが連なっている。

 その一番先端のブティック・ショップ・ドームでリィリィが様々なドレスに着替えている。


 怪獣とはいえ身長152センチの彼女である。人間のドレスで全く問題なかった。ドレスに付ける携帯パソコンはイチゴ型を選んだ。ハート型と散々迷ったのは、やっぱり女の子である。


 靴は特注で作ることになった。VRを使って靴のデザインをドレス姿とシンクロさせて決めた。さすがに憧れのハイヒールは無理なようで、諦めさせるのに一工夫必要だった。頑張って履けるようになる!って言う彼女が真剣で、ショップからのNGをどう伝えるか、ジャッキーと二人で悩んだ。


 ……さて、彼女はいつもの法被姿に戻り、買った物は全て袋に詰めてもらった。自宅まで配送してもらうのが普通なのだが、彼女は持って歩きたいと言う。


 彼女を褒めまくった僕とジャッキーは、すっかり喉が渇いてしまった。そこでレンタル・オープンカーで宇宙空間を移動し、ファーストフード・ショップ・ドームに入店した。


 ……注文した品がテーブルに並ぶ。3人それぞれ食べ始めた。ジャッキーは白い粉を顔に付けている。

「プラスぅ。お前本当にチョコパフェ好きだな」

「めっちゃ好き!リィリィは?」

「好きよ。ミルフィーユも大好き」

 ジャッキーが自分の指を、ペロペロ舐めている。

「ガキだね~お前ら」

「そういうお前だってフルーツサンデーとお団子両方食ってんじゃん。この甘党!」


 店内のお客さんが僕とジャッキーに気付いてしまった。

 女の子たちの声が切っ掛けとなり、ドーム内が騒然となった!


 僕らは食べ終わらぬままドームの外へ飛び出した。オープンカーに急いで乗り込む。僕らを追ってたくさんの女の子たちが出てきた。


 運転席のジャッキーがアクセルを踏み込む。

 車は流れる様に宇宙エレベータ沿いの街を駆け巡った。

 規則正しく並んでいた渋滞の列が乱れ、多くのホバーカーが僕らを追いかけてきた。対向車線の車からもカメラのシャッターが激しく切られる。


 でもジャッキーは大喜び!さすがアイドル、目立つのが大好き。いつの間にかリィリィも大喜びしてはしゃいでいる。


 僕らはわざと大きな繁華街を飛び、混乱を作って行った。クラクションを鳴らし、みんなの注目を集めていった。追いかけて来る車は、すでに100台を超えていた。


 進路をうさぎ乃屋に取る。出来るだけ人の多いエリアを通過するコースを飛んで行く。


 ……500階。いよいよ、うさぎ乃屋に辿り着いた。3人とも店に入る。


 僕はチェアーのアームでリィリィを掴んだ。

「お願い。今日買ったドレスにすぐ着替えてきて」


 リィリィは戸惑いの表情。僕はドレスの入った袋を渡す。

「急いで」


 彼女は自分の部屋に入って行った。


 ファンたちを押しのけ、マスコミの記者たちが店内になだれ込んで来た。よっしゃ来た来た、待ってました!

 「ようこそ、うさぎ乃屋へ!マスコミ各社の皆さん。ここで重要な発表があります。僕たちのかねてからの念願だった映画制作が決定しました。ここがその第1幕に登場する太陽下りの老舗、うさぎ乃屋です!」


 どよめきの中、おびただしいフラッシュがたかれる。僕はその音が鳴りやむのを待てない。

「さぁここで、今回の映画のヒロイン、うさぎ乃屋の看板娘を紹介します!」


 ジャッキーが奥に向かって声を上げる。

「出ておいで、リィリィ!」


 ドレスアップしたリィリィが登場した。凄まじいフラッシュの嵐!店内が真っ白に輝く。困った顔の彼女が、より一層かわいく見える。


 ジャッキーが僕に耳打ちしてくる。

「ポイント(お金)をかけない制作発表。大成功だな、プラス」

「任せろ。こういうの得意だから」


 そして新造船ラビッターⅡのお披露目で、記者会見は最高潮に達した。


 記者たちを船に乗せ、進水式ならぬ進宙式を開催!大いに盛り上がった。


 ハイエナ軍団とのトラブルで話題になっていたうさぎ乃屋の映画とあって、全宇宙ニュースでも報道された。


 作戦は大成功!このあと数日、芸能ニュースはうさぎ乃屋の話題で独占となった。人気の中心はリィリィ。その可愛らしさに人気が爆発!ファンの数は一気に数10万人に膨れ上がった。


 すっかり存在を忘れられていたローイー・カンパニーのホイが、いつの間にか彼女のマネージャーと化していた。うさぎ乃屋も大盛況。毎日人が溢れかえった。


 ……この幸せな時間がいつまでも続いてほしい。僕もジャッキーも、おそらくリィリィもムツゴロウさんも、あのホイだって絶対思っていたはず。でもそうはいかなかった。

 この時すでに、僕の力ではどうにもできない大きな悪意が、ひたひたと近づいていた。


 続く

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