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アクション 11

「赤血球が酸素を運べない様に変形してるって言われたの。怪獣の世界では治せない病気。人間の次元では遺伝子治療が完成してるって聞いて、こっちに連れて来たの。でも怪獣のデータは当然無くて。研究に時間とお金がたくさん要るの。私が働いてお金を貯めなきゃ。でも、怪獣の私を雇ってくれる所なんて、どこにも無かった。そんな時……」

「ムツゴロウさんに会ったんだ」

「そう。力自慢の弟子を探してたの。おっしょう様は私の話を聞いてくれて。そして、とっても優しくして下さった。船の操縦まで教えてもらって……」


 彼女の顔が、思い出を話す優しい表情から、急に凛々しくなる。

「お母さんの為、おっしょう様の為、ハイエナン達に負けられない。私、映画に出る。うさぎ乃屋にお客様を呼び戻さなきゃ」

「よし!よーし、頑張ろう!」


 僕らの頭上から、オレンジ色の光が降り注いだ。



 仕事を終えたムツゴロウとジャッキーがうさぎ乃屋に帰って来た。2人とも疲労困憊。


 ジャッキーは広い玄関に置いてある見慣れないはずのソファにどっと座り込んだ。なんの疑いも無しに。実はこれ、僕がデータ分析の合間に作った反射神経を鍛えるマシンなのだ。


 太陽下りはプロミネンスの動きを至近距離から素早く回避しなければならない。このソファはその特訓用。ジャッキーにモニター役を頼もうと思っていたが、自ら座ってくれた。


 彼の重さに反応して、ソファからモニター付きのハンドル・スティックが持ち上がった。その画面中央に表示される指示に、0.5秒以内に反応できないと電流が流れ、ソファごと回転する仕組みになっている。

 

 ジャッキーの目はうつろ。突然出てきた指示に、当然反応できない。ソファの回転が始まった。

「なんじゃコラぁ!?」


 回転、回転、回転、回転が増す!どんどん激しくなる!ちょっと設定無茶すぎたかぁ~!!?


 大絶叫と共にゆがむ顔。疲れ切った彼の顔に血が逆流してくる。リィリィもムツゴロウもその様子を見て声が出ない。


 しかし、さすが相方。「止めてくれ」とは言わない。それどころか意地になってこの特訓ゲームの攻略を試みだした。なんて愛すべき男だろう。そのうちおかしな声を出しながらゲームに挑む彼を見て、リィリィとムツゴロウが大笑いし始めた。


 毎日の仕事と新しい船造りに疲れ果てたが、みんな充実した日々を送っていた。



 そして数日後、いよいようさぎ乃屋2号船、ラビッターⅡが完成した。リィリィの事ばかり考えていたので、外観は彼女似になってしまった。でもそのお陰でみんなに気に入ってもらえたので、合格としよう。


 ムツゴロウが奥の部屋から何か持って出てきた。それはうさぎ乃屋ロゴ入りのオレンジ法被だった。僕は毎日船頭をやっているうち、ムツゴロウとリィリィの法被が羨ましくなっていた。それはジャッキーも同じだと思う。


 ムツゴロウがピカピカの新品を僕とジャッキーにくれた。

「これでわしの弟子が3人になった」

 ジャッキーが僕に抱きついて喜ぶ。早速ソデを通している。僕の法被はリィリィがゆっくり着させてくれた。


 ジャッキーが法被のソデに頬ずりしている。

「俺、本物の船頭になったみたい……」


 リィリィもすごく喜んでいる。僕は嬉しい気持ちに押されて、またまたドッキリなアイデアをぶちかました。

「リィリィ。近々記者会見するよ」

「え、なに?」

「映画の制作発表だ」

「無理。私、法被と浴衣くらいしか持ってない」

「だからぁ~、あしたドレス買いに行くぞ~!」

 当然ジャッキーが話に割って入る。

「おい、俺も行くっ!……でも、仕事はどうすんだよ?」


 戸惑うリィリィがムツゴロウの顔を見る。するとじぃさんはありったけのシワを寄せて笑って見せた。

「よかったな。行っておいで」


 リィリィの表情がみるみる明るくなっていく。それを見て僕も嬉しくなった。更に心に企んでいる事を思い出し、ニヤケずにはいられなかった。


 続く 

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