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ミッション ドールのダンジョン10階層を攻略せよ。

10階層の始まりの部屋は今までと変わっている点は部屋の出口に厚手の遮光カーテンが掛かっている事ぐらいだ。


しかし今はそのカーテンを開く事はしない。光の精霊さんを呼んで話をしている所だ。内容はエイミーさんとヨナーちゃんをコネクト出来ないかについてだ。


「この子達もー?」


「ああ、お願いできるか。」


「んー。んー。」


光の精霊さんは腕を組んで唸っている。出来ないのだろうか。


「それなら、ジェシカさんの事から先にするわね。」


そう言いながらカレンは俺のズボンのポケットに手を入れると少し恥ずかしそうにしながらスマホを取り出した。


「えーと、これで良いのよね。あっ写った。」


「ヨナーちゃん、エイミーさん、私達が時々ジェシカさんって言うのを覚えてる?」


「はい、皆さん言われてますから、精霊さんなのかなって思ってました。」


「はい。」


「それはね、この子なの。」


「初めましてー。ジェシカさんでーす。クブルム出身の永遠の13才です。よろしくー。」


スマホの中のジェシカさんは、両手を振りながらキャラクターショウのお姉さんの様に自己紹介をこなしている。


何故か似合わないシルクハットを被っており、よろしくの声に合わせてマジシャンの様にシルクハットを胸の前に持ってくると左手を伸ばしてお辞儀をして見せた。


「え、え、あの、えー?」


エイミーさんはスマホとジェシカさんがいる辺りを何度も見比べながら、必死に理解しようとしているがその慌てぶりからも納得出来ていないのが分かる。


一方でヨナーちゃんはスマホ自体に興味を持った様だ。かわいい指で突いている。画面を触ると、カメラのフォーカスが反応して画面に黄色に枠が現れては消えて行くのに一々ビクッとしているのが癒やされる。


「カレンさん、カケルさんの秘密はご存知なのでしょうか。」


「ああ、あの世の事ね。」


「はい、その事ですわ。」


異世界とあの世をごちゃごちゃにしているのか、ワザとなのか判断が付かない会話を聴きながら、コテージでの出来事はこの子達との合流前だったかと、思い返していた。


「信じられないと思うけど聞いてね、コイツはね、この世界の人じゃないの。」


「天使様?」


「死んでるんですか?」


首をコテンとしながら聞いているのはヨナーちゃんで、死んでるとか不吉なコメントを返すのはカレンの言葉に影響を受けてしまったエイミーさんだ。


「こんな汚いコイツが天使な訳ないわよ。ヨナーちゃん褒めすぎよ。」


「ローレンシウム大陸でも、他の大陸でも無い別の世界があるそうで、その世界には精霊も魔法も無く、モンスターもいないそうです。」


「そう、コイツはそんな世界からこっちの世界へ引っ越して来たの。」


「どうして、モンスターいない方が良いのに?」


「それはコイツも分からないみたいよ。」


「お父さんもお母さんもいないの?」


「いないわね、だから私達がコイツの家族なの。」


するとヨナーちゃんはおれが座っている横に来ると俺の頭を撫でてきた。


「ヨナーもいない。だから我慢して。」


おれはそんなヨナーちゃんの手を見上げながら、お礼を言おうとしたらヨナーちゃんはカレンに攫われて行った。


「苦しい…。」


今ヨナーちゃんはカレンに抱き締められ、逃げる為にジタバタと絶賛奮闘中だ。ヨナーちゃん諦めろ、マリリさんも、ジェシカさんも、フランシスカさんまで順番待ちをしている。ミカンちゃんだけは苦しそうなヨナーちゃんを助け出そうとカレンの腕を引っ張っている。


「あー、小ちゃい子はOKかもー。」


不意に光の精霊さんがそんな事を言い出した。するとタリリがとんでもない事を言い出した。


「カケル、エイミーを抱擁してみろ。」


「お、おい。タリリそんな事お前が言って良いのか?」


「あ、私には必要ないからな、するなよ!」


タリリは言うだけ言って部屋の隅に歩いて行って、何故か素振りを始めた。


「え…抱擁ですか?カケルさんと2人でですか。」


エイミーさんは顔を真っ赤に染めて俯いたまま、だれとも無しに質問している。言い出した奴は一切聞く耳を持ってない様だ。


「許可したくないわ、けどあの時はそんなだった気もするわ。」


「はい、わたくしも勢いでつい…。」


「じゃあ、また私がお手伝いしますねー。」


ジェシカさんが俺の背後に立つと、腕を取って立つように促してきた。


「カケルさん、目を瞑って腕を開いて下さいね。」


少し期待しながら目を閉じる。


「エイミーさん、ここに立って貰えますかー。」


ジェシカさんの声がスマホから聞こえる。ジェシカさんのここが分かりにくいのかエイミーさんはウロウロしているとジェシカさんに腕を掴まれて、俺の前に立たされる。


「エイミーさんも、目を閉じて下さいねー。」


「3、2、1で行きますので、3、2!」


ジェシカさんは2でエイミーさんの背中を押していた。不意を突かれたエイミーさんはバッチリと目を開けてしまっていた。


その目に映るのは鼻の下を伸ばした俺の顔で、エイミーさんは両手を前に出して俺の顔を強引に横に向けようとした。


「きゃあああ」


その必死な力は俺の顔を90度真横に捻るのに十分だった。グキっと言う音と直後にエイミーさんのブレストアーマーがドンとぶつかって硬い鎧の感触を堪能した俺はその衝撃を受け止られないままに倒れ込んだ。


「ゴフッ」


そこには呆然と立ち尽くすジェシカさんと、腕を前に伸ばしたままの姿勢のエイミーさんが立っていた。


「あーアンタ!マリリさんヒールを!」


「は、はい!ヒール。」


「あああ、すみません、カレンさん、マリリさん彼氏さんをすみません。」


俺に駆けつける2人にエイミーさんはそんなふうに謝っている。


「あ、エイミーさん、コイツそんなのじゃないから。」


カレンのそんなセリフを聞いて、起き上がる気力も無くなった。


結局はエイミーさんとはコネクト出来なかったが、ヨナーちゃんとは光の精霊にみんなと繋いでもらう事が出来た。


するとヨナーちゃんの目が見開かれ、ジェシカさんを指差している。


「ジェシカお姉ちゃん、いた。」


「お、見えるの?ヤッホー!」


「ヤッホー?」


ヨナーちゃんはフランシスカさんに抱かれたまま、ジェシカさんとの初対面を果たしたのだった。


「エイミーさんの件は、またにするわ。コイツの顔を見なくても良いように布袋でも被せるから、安心してね。」


カレンはその台詞でこの打ち合わせを終了させた。


「さあ、10階層もサッサとクリアしましょ。」


「ああ、10階層は属性持ちのパペットらしい。目の色で属性の判断がつくみたいだな。」


「魔法を使って来るって事よね。それでボスは?」


「ボスは属性パペット5種類をある順番で倒す必要があるらしい。火風火土火の順番で倒すとクリアらしい。水は外れみたいだ。」


「そんな順番、ヒントでも無けれは解けるわけ無いじゃない。」


カレンは今まで何回も読んできたであろう、攻略本の内容でまた切れている。おれも理不尽とは思うが答えがあるなら別に良いだろと思う。


こうして、重い遮光カーテンを分けて進むと、10メートル程の直線通路の先には「10階層 ボス部屋」と書かれた豪華な扉が見える。


またその通路の床には赤い絨毯が敷かれており、その上には5体の属性パペットがボス部屋で倒すべき順にきちんと整列して等間隔に並んで立っていた。


並んだ手に嵌めて使用する布製の人形達の瞳は色の付いた魔石になっているのが一目でわかる。


「なるほどな。」


「こう言う事だったのね。」


「赤、緑、赤、黄、赤ですね。」


しかしパペットは近づいても動く気配がない。


「倒していいのかしら、不安になるわ。」


「もしかしたら、攻撃したら一斉に襲ってくるパターンかもな。」


「タリリ、エアリアルスマッシュ!」


「あああー!」


「馬鹿タリリー!」


「ファイア、ファイア」


「ストーンです。」


「ストーン」


「フランシスカ、エアリアルスマッシュ!」


タリリの振り下ろしたショートソードが引き金になって案の定、属性パペットは両手を挙げその中間にそれぞれの魔法の玉を生み出していく。


しかしそれらの魔法は形を成す前にパペットと共に消滅して行った。


タリリはそれでも久しぶりに剣を振れた為に、馬鹿と呼ばれた事すら忘れてご機嫌な様子を見せていた。そんなタリリをため息混じりにやれやれと見つめていた。


「このボスは順番が大切だから、攻撃の順番を決めておくわ、いいわね?」


カレンの提案に皆頷いている。そしてカレンから順番が伝えられていく。


「最初は私が行くわ。次いでマリリさん、ミカンちゃん、フランシスカさん、最後はタリリで良いわね?」


「了解しました。」


「はいです。」


「心得ました。」


「任せてくれ。」


「頑張ってー。」


各人から返事がくると、今度は残りのメンバーに声が掛かる。


「防御はアンタとエイミーさんに任せるわ。」


「ああ分かった。ただ一度倒したパペットの復活を待つ時間があるはずだから結構長期戦になるかもな、そんなに保たないかも知れないからな。」


「マリリさんとミカンちゃんにそっちの援護に入ってもらうわ。」


打ち合わせが終わると、俺とタリリは扉に取り付いてカレンの合図を待つ。シンとする空気が流れた直後カレンからのGOが掛かった。


ボス部屋には各属性5体づつの合計25体の属性パペットがひしめいていた。その布製の人形はピョンピョンと体全体を使って飛び回っていた。


そしてそれは一斉こちらを向くと両手を挙げ魔法を唱え出した。


「きゃあ!閉めてー。早く!」


「マジか!」


「おおっ」


ガシャンと金属音を立てて扉が閉まると、扉に魔法が炸裂した事を示す振動が伝わってくる。その振動はしばらくの間、続いていた。


「あんなの無理じゃない!」


「ある程度数を減らしても大丈夫でしょうか。」


「それは大丈夫そうね。順番が合わない限り何回でも復活するらしいから。」


「じゃあ、ボーナスステージじゃないか?」


「え、何?」


カレンが眉間に皺を寄せたのを見て、すかさず説明を始める。


「俺たちの目的はコインを集める事だろ、無限に再生するからコインを取り放題じゃないか?」


俺のそんな提案にマリリさんは怪訝な表情をしている。


「復活の意味次第でしょうか、倒した物がコインとなって再度魔方陣から召喚されるのならカケルさんの言った通りでしょう。しかしながら、コインに成らずに壊れた人形そのものが復活するのならば、意味が有りません。」


言われてみればその通りだ。このダンジョンの意表をつく性質を考えれば十分にあり得る。そんな俺の表情を見たのかカレンは結論付けた。


「クリアを優先するわ。しかし、さっきの方法ではパペットが密集し過ぎてるから、誤射の可能性が高いわ。」


確かにカレンのファイアで1体を燃やしても、継続して燃えている火柱で他のパペットも延焼していくのが目に見えている。


それではタリリかミカンちゃんに一体づつ倒してもらうか。そのリスクは2人が魔法攻撃に晒され続ける事だ。ドアの横なら攻撃方向も制限できるから防御もしやすいが、部屋の中での乱戦での魔法防御は危険が大きい。


俺たちは赤い絨毯の上で、10階層のボス部屋の扉を見ながら作戦会議を続けた。

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