ミッション ドールのダンジョン7階層を攻略せよ。
6階層のボスはオークジャイアントだった。そいつは俺たちの足元で木材になっている。さっきまでオークらしく太い声で威嚇しながら襲いかかって来ていたのが不思議になる。
いままで生物の肉感を持っていたオークジャイアントが倒れた瞬間に木製の人形になるのは何回見ても驚かされる。まあ、グロく無くていいが。
「えーと、次はスケルトンだったかしら。」
大した手間もなくファイアで倒したカレンは7階層の事を俺に聞いてくる。
「あれ?フリガナが消えた。」
「アンタが書き忘れたんでしょ。」
「そうとも言う。」
そうなのだ、先程から俺が読んでいるこのダンジョンの攻略本はもちろんこの世界の文字で書かれている。その為にそのままでは俺には読めないから、文字の読み書きの練習がてらこの攻略本にフリガナを振っていってる。
これはカレンが提案してくれて、時間の空いたメンバーが付き合ってくれている。提案したからなのかカレンはいろいろと時間を作ってくれているから助かる。
「んー、カレンさん。合ってますよ。ボスは偽リッチですね。鎌持ったスケルトンですね。」
横からジェシカさんが攻略本を覗き込んでくる。ちょっと近すぎる気がするが、顔には極力出さない様に努力した。
このダンジョンのスケルトンゾーンは暗くは無い。だが市松模様は相変わらず続いている。目がチカチカしていると向こうから白いスケルトンと真っ黒なスケルトンがやって来た。
白いスケルトンは杖を持っている以外はヨロイなどは着けていない。黒いスケルトンも真っ黒な片手剣を下げているだけだ。
「白がメイジで黒がファイターね。白から片付けるわ。」
「ストーン。」
「フランシスカ、エアリアルスマッシュ。」
指示が終わるか否やマリリさんとフランシスカさんの攻撃が決まる。岩塊がメイジを押しつぶし、風の渦巻きが黒い骨をバラバラに吹き飛ばしていく。
「うん、大丈夫そうね。」
「元にも戻りませんねー。」
確かにここのダンジョンは倒したかどうかの判断が分かりやすい。崩れた骨を見れば木片に変化しているから一目瞭然だ。
角を2回程曲がったその時、通路の彼方から黒い固まりが向かってくるのが見えた。
「ファイター 6体。接近される前に倒すわよ。」
「ストーン。」
「ファイア。」
「フランシスカ、エアリアルスマッシュ。」
「ストーンです。」
フランシスカさんは突き出す様にしたレイピアの先から風の刃を飛ばしているが、タリリは振り抜いた剣先からのイメージをしている為に射程距離が延ばせないでいた為に盾を構えて待っている。自慢のショートソードが振れずに欲求不満の様だ。
エイミーさんはカレン達の後ろで俺やヨナーちゃんを守るためにオーバルシールトを構えている。エイミーさんは頭を下げればその盾に全身を隠す事が出来る。
黒いスケルトンは攻撃をする事も無く、木片に変わっていた。その後白いスケルトンが6体現れたが、これも苦戦なく倒した。
そして目の前には「7階層 ボス部屋」と書いてある扉がある。
「ボスは偽リッチと白と黒のスケルトンが5体づつよ。今まで通りに白のメイジを先に叩くわ。」
「準備はいいぞ。」
「こっちもだ。」
「後ろはいいわね、開けて!」
カレンの号令で扉を開ける。タリリは咄嗟にシールドを構えて様子をみる。おれもラウンドシールドを直ぐに構えて来たる不意打ちに備えた。
「まだ遠いわね。」
カレンの声がボス部屋に響く、このボス部屋も白黒の市松模様で染められているのは変わらないが、通路の様に奥行きがありボスはおろか、その前方にいる10体のスケルトンまでも距離があるようだ。
「ファイア、ファイア」
「エアリアルプレス。」
「ストーンです。」
「ストーン。」
先制したこちらの攻撃で白色を倒したかと思ったが何故か着弾がズレ、外しているのもあり倒しきれていない。
「え?」
「あら。」
そこに追い打ちがかかる。前を歩いていた黒いスケルトンからファイアボールの魔法が12発飛んで来た。
「ストーンウォール!」
「ストーンウォールです。」
扉の前に防壁が聳え立つ、それに合わせてタリリと俺はラウンドシールドを構え直す。少し遅れてエイミーさんも盾を床につけ来たる衝撃的に備えた。
熱風と衝撃が体を撃つが直接の被害は無い。
「どういう事よ?」
「黒は杖を持ってますー。」
「ここに来て逆なの!」
ジェシカさんの報告にカレンは憤りを露わにしている。確かにタチが悪い。
「私達の確認不足に過ぎません。黒から殲滅します。ストーン、ストーン。」
「確かにそうですわね。フランシスカエアリアルスマッシュ。」
マリリさんは自らを戒めながらも、土魔法を唱えているしフランシスカさんもマリリさんに合わせて風魔法を唱えた。
「もう、ファイア、ファイア、ファイア!」
ここで黒いスケルトンを倒したので、余裕ができたかと思い前方を見ると白いスケルトンからも6個のファイアボールが飛んで来た。
「ストーンウォールです。」
ミカンちゃんの岩の壁がファイアボールを防ぐが、2つの火の玉がタリリの盾と、俺たちの頭上の天井に直撃して炸裂した。その衝撃で俺たちは吹き飛ばされた。
ミカンちゃんのストーンウォールで4個のファイアボールを防いでいなかったら、全滅の可能性もあった。
俺は倒れたままの姿勢で前方を見ると、絶望的にも新たなファイアボールが8個以上飛んで来ていた。
扉を閉じる時間も無いし、先のファイアボールで各人がバラバラに散らばっているために、アザリアの腕輪を使う事も出来そうに無い。
「ストーンウォール、ハーちゃんです。」
「ストーンウォール、ストーンウォール!」
「ファイアウォール。」
「任せて下さい!」
タリリも俺も起き上がれていなかったが、パーティで唯一エイミーさんだけが盾を構えて扉の前まで駆け寄っていた。
「エイミーさん、精霊さんにお願いして!どんな魔法も通さないって!」
「はい、精霊さんお願いします!」
その直後、ファイアボールが炸裂し轟音と共に熱波が打ち寄せる。俺は地面に伏せたままでその衝撃波をやり過ごすので精一杯だった。
しかしエイミーさんはそれで力尽きたのか、盾を持ったまま膝をついている。
「ヒール!」
マリリさんからヒールが飛ぶ。俺もウエストポーチからポーションを掴み取りエイミーさんへと這う様にして進む。
「ファイア、ファイア、ファイア」
「ストーンです。」
「フランシスカ、エアリアルスマッシュ」
「すみません、大丈夫です。」
エイミーさんはマリリさんからヒールを受けながらも、盾を杖代わりにして立ち上がろうとしている。
「精霊さんとお父さんの盾が守ってくれましたから。」
煤けて黒くなった顔と対処的な白い歯をみせて笑っていたエイミーさんはまだ、俺たちを守ろうとして
奥歯を噛み締めた。
「まだまだです!」
「バンバン」
「うおー!」
「ミカンも行くです。」
エイミーさんが立ち上がったのをきっかけに、タリリも気合で立ち上がっている。女子が出していい声なのか心配になる。
ミカンちゃんも落ちていたメイスに手を伸ばして、掴み取ると立ち上がっていく。
「ファイアボール!」
3人が立ち上がるその横を炎の虎が駆け抜けて行った。その虎の通った足跡は赤く燃えていた。そして虎は白のスケルトンの中で弾け飛び、スケルトンを木片に変えた。
「残りは偽リッチだけね。」
カレンも起き上がった様でボス部屋の中を確認するとそう言った。
偽リッチとは白いスケルトンが黒いボロボロのローブを纏って身の丈以上の鎌を持っているモンスターだ。外観は死神かリッチかと上級のアンデットかと見間違う格好をしているが、実際は只の鎌を持ったスケルトンらしい。
そしてその偽リッチは俺たちが白黒スケルトンに苦戦している間に近くまで来ていた。
「あれ?」
「小さいわね。」
想像していたよりも半分くらいの大きさしか無かった。その鎌も半分のサイズだ。
「ファイア。」
無情にもその鎌を構える事も無く、偽リッチは燃え尽きていた。灰も残らない為に人形だったのかすら分からない。
ジェシカさんはパンパンとエプロンの埃を払うかの様にして立ち上がるとボス部屋のコインを拾いに向かった。
黒いスケルトンのコインを拾い、白のスケルトンのコインを拾い終えるとジェシカさんは周りを見回して首を傾げている。
更に奥にコインが落ちているのを見つけると、走って行った。
「あいたっ!?」
ゴンと言う音をさせて、天井に頭を撃ち付けるとそのまま仰向けに倒れ込んだ。
「ジェシカさん?」
「どうなった?」
俺たちはまるでジェシカさんが巨大化した様な光景に目を奪われていた。マリリさんは近くまで走って行くがその足を徐々に緩めて行った。
ジェシカさんが倒れた少し前で、マリリさんは立ち止まっている。そしてその手は頭上で天井を触っている。
「天井が低くなっています。皆さんご注意を。」
「横幅も狭くなっていますよー。」
この時点で漸く気付いたが、市松模様が部屋の奥に向かって徐々に小さくなっている。それに合わせて通路のサイズも小さくなって行くことで、この部屋の距離感が狂わされていたのだ。
「トリックアートかよ!」
「まだ距離があると油断させるつもりだったんでしょうか。」
「そのようですわ。」
「頭を強打させる為の罠では無いのか、マリリ?」
「ぐっ!」
「違います。」
ジェシカさんはタリリの悪意の無い質問にダメージを受けていた所に、マリリさんの無慈悲な断定にヒールを掛けてくれているマリリさんに背を向けていた。
こうして7階層の攻略が完了すると、俺たちは8階層への階段を降りて行った。
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