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ミッション 火傷に注意しろ

ダンジョン攻略再開します。

「熱っ!」


まだ我が家の焼肉パーティは序盤戦だ。いまからフランシスカさんがお父様に焼けた肉を皿に移す所だ。さっきまで焼き加減を何回も確認していた。


「だ、大丈夫か?フランシスカ!」


「はい、油が飛んだだけですから。」


「どうぞ、お父様。」


「ああ。」


「今回はありがとうございました。こんなに早く来て頂けるとは思っていませんでした。」


フランシスカさんは肉を頬張る父親に、しっかりとしたお辞儀を伴って感謝を伝えている。


「若い頃以来の早駆けだったぞ。流石に身体中が悲鳴を上げている。」


「マリリさん、後でお願い出来ますか?」


「いや、それは良い。回復薬は飲んでいるからな。後は気持ちだけの問題だ。」


その後もフランシスカさんが甲斐甲斐しく、焼いていき公爵様の腹のなかに消えて行った。少し食べさせ過ぎかと思える位に。


「フランシスカもう入らぬ。もう良いぞ。」


「そうですか?次のは会心の出来ですが?」


「では、それまで貰おう。」


公爵様はウッと言いながらも、確かに見事に焼けた肉をフランシスカさんから受け取ると口を大きく開けて放り込んでいた。


「お父様、今夜はこちらでお休み下さい。わたくしの部屋ですので遠慮は要りませんわ。」


「すまん、先に休ませて貰うぞ。」


「おやすみなさいませ。」


フランシスカさんはそっと扉を閉めると、カレン達の待つ食堂へと戻って行った。


「カレンさん、ありがとうございました。」


「お父さん、大丈夫だった?」


「はい、少し苦しそうでした、ふふ。」


フランシスカさんはテヘッと効果音が付きそうな、悪戯っぽく笑っていた。思わず俺はスマホで動画を撮りたくなったが完全に間に合わなかった。


「アンタ、それにしても奮発したわね。」


「おう、一番高い奴って頼んで買って来たからな。」


「お金は大丈夫だったの?」


「ああ、ジェシカさんが領主のコインを何枚かパクってくれたからな、白いのも有ったぞ確か。」


「え?!」


「ジャジャーン! 怪盗ジェシカンカン参上ですー。」


ジェシカさんは親指と人差し指の指の間に白いコインを挟んでその手を頭上に掲げている。


「ウソ、白金貨じゃないの!」


「領主が消えていくのが、ゆっくりだったのは此の所為かもしれませんわ。」


「ジェシカさん、彼女がエルフの聖地に着いてなかったら確実に恨まれるわよ。」


「ええー。嫌ですよー。カケルさんがテレパシーで指示して来たんですよー。皆さんも聞いてましたよね?ね?」


「え?」


「いいえ。」


「アンタ、まさか。」


「いや、あの女領主はフランシスカさんに夢中だったから、暇そうなジェシカさんに頼んだんだよ。だってカレンに言ったらきっとジェシカさんを目で追うだろ?」


「ぐぬぬ。」


「恨まれるならカケルさんでーす。」


ジェシカさんは手のひらを下に向けて、胸の前に持ってくると両手を広げて、野球のセーフのサインを繰り返していた。



翌朝になると公爵様は、朝食も取らずに早々に出て行った。もしかしたら、胃もたれしているのかもしれないと思ったがフランシスカさんも公爵様もそんな素ぶりも見せずに接していた。


「あの実は色が違えば美味しそうなのにね。」


領主の屋敷の屋根の上に成る、丸くてパンパンに張った実は相変わらず灰色のままだ。仄かに甘い香りが風に乗って街中まで届いている。


「ああ、匂いはいいな。」


「鳥さんです。」


見ると何羽かの小鳥が実を嘴で啄ばんでるのが見える。その様子は突いているのが巨大な実である事を除けば至って普通の光景だ。


「アンタ良く見てなさいよ。鳥が灰色になったり大きくなったら大変だから。」


「そうなったらどうするんだよ。」


「どうもしないわよ?」


「は?」


「リーリオの兵士がどうにかするんじゃないの。嫌よ、気味が悪いから近付きたくないわ。」


「教会も領主の屋敷に手を出す訳にも行かないと思います。」


「そうよ、だから私達がする事は無いのよ!」


カレンは腰に手を当てて、偉そうにほざいている。


それから3日経ったが特に変化も無い。領主不在の代行は血縁者がいない為に空白となったままだった。それを公爵様が王都へ代官を立てる様に指示を出していた。その間は公爵様は騎士と共にリーリオに滞在するとの事だ。


「マリリさん、孤児達も暫くは良いわよね。」


「はい、ラカカさんの所へ定期的に伺えれば問題有りません。」


「ではドールのダンジョンの攻略を再開しましょうか。」


「はいです。」


誰の反対も無くダンジョンへ潜る事が決まった。最近では剣を振る事が少なくなっていたタリリはかなり気合が入っている。


「どこまで行くんだ、50階層でも私は構わないぞ!」


「うーん、ヨナーちゃんもエイミーさんもいるからまだ、そこまでは行かないわ。」


「前回は6階層までだったぞ。今度は半分の25階層ならどうだ?」


「ねえ、アンタはどう思う?」


カレンに聞かれた俺は、攻略本に目を下ろすとある点を指差した。


「この本には21階層からガーゴイルが敵の主流になるらしい。ただコイツが魔法が効きづらい上に、硬くて厄介らしい。」


「効きづらいのよね?効かないわけじゃなくて。」


「ああ、ここには効きづらいって書いてあるな。魔法主体のパーティだと30階層のボスのガーゴイルがネックになってそれ以上進めないことも多いらしい。」


「わたくし達は基本的に魔法の威力だけで進んでいますから心配ですわ。」


「私のエアリアルスマッシュがあるぞ。」


「タリリ、あれは剣に魔法を乗せているのですよ。魔法が駄目なら過信は禁物です。」


「え、そうなのか?」


タリリの視線が助けを求めるように、俺たちの間を彷徨うがだれも目を合わせようとはしない。

ただ、ミカンちゃんだけが大きく頷いていた。


「それなら21階層まで行って、タリリの例の物を試してみましょう。駄目なら引き返すわ。」


「了解でーす。」


こうしてドールのダンジョンの攻略が再開された。

そして此処はドールのダンジョンのエントランスホールだ。白と黒の市松模様で彩られた円形の部屋だ。以前ミカンちゃんがヨナーちゃんとエイミーさんを寝かそうとした所だ。



以前ミカンちゃんはドールが消えてしまう様に見えるが、実は床や壁の中に隠れているのではと考えた。その為に収納を使おうかとしたがヨナーちゃんとエイミーさんがいた為試す事はしなかった。


けど今回は領主もいなくなったし、皆ジェシカさんと普通に付き合ってしまっていたのもあり、今回の試みとなった。


「ミカンちゃん、あそこでいいの?」


「はいです。」


「アンタ、ジェシカさんお願い!」


俺が少しづつ床につけた手のひらを横にずらして行くと、ミカンちゃんからOKの合図がでた。ジェシカさんは両膝をついてどうにか、エプロンのポケットを俺の指先に合わせている。


「収納!」


「あっ!!」


「当たりです。」


床を収納すると、キッチンの床下収納の様に地面が四角くくり抜かれており、そこには膝を抱えた状態のドールが収まっていた。


「ファイア。」


「熱っー!」


「うわぁ、ちょっとカレンさーん!」


ドールが上半身を起こし掛ける前に、カレンはドールを業火で焼却していた。俺とジェシカさんも危なく燃えそうな近さだったにも関わらずに。だから俺たちは2人でいま猛抗議中だ。


「カレンさん、前髪焦げちゃいましたよー。」


「俺は腕が無くなるかと思ったからな!」


「仕方ないでしょ!ドールのダンジョンのドールなのよ、50階層のモンスターなのよ。」


「ビビりすぎだって言ってるんだ。」


「え、私はそうは言ってませんよー。」


「ほら、ジェシカさんだってこう言ってるじゃない!」


「あれ?」


「だって見てくださいよ、金貨ですよ。金貨。絶対に強い奴でしたよー。」


確かにジェシカさんが指差す先には、黄金に輝くコインが生成を終えようとしていた。


「頂きです、あ!」


ドールが入っていた四角箱の上に浮いていたコインを両手で包み込んでいたジェシカさんがひょうきんな声を上げた。


「うっひゃー!!また、いるよー。」


そこには膝を抱えたドールが何事も無かったかの様に出現していた。


「ファイア。」


「うわぁ!だから!」


まただ、俺が覗き込もうとしたらファイアの火の柱が立ち登り天井を焼き、俺も焼こうとする。


「危ないわね。」


「どっちが!」


そんな俺達をフランシスカさんとマリリさんはやれやれと言った感じで眺めているのをジェシカさんが囃し立てている。


「仲良いですわね。」


「いつも通りですね。」


「ああー。妬いてます?」


「「妬いてません!」」



2人に揃って叱られたジェシカさんはテヘヘと頭を掻きながらコインを回収に向かった。


するとダンジョン奥からコツコツと何名かが歩いてくる音が聴こえてくる。カレンはそれに気付くと真剣なトーンで指示を出す。


「アンタ、ジェシカさん、床板をもどして!」


「ああ。」


「はーい」


どうにか床板を元どおりに出来た俺たちは、何気無い振りを装ってその場に佇んでいた。


「お疲れです。」


「ああ、疲れたよ。ここに居るって事は初めてかい。色々疲れるダンジョンだから気を付けろよ。」


カレンが声を掛けると先頭を歩くゴツい男性からそう返事が返ってくる。その中に少しアドバイスを含めてくるあたり悪い人では無い様だ。


その男達を見送った後、俺たちは6階層へと跳んだ。

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