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ミッション 公爵様に会え

忙しすぎる異世界、俺のスキルは待ってくれない。


その92 ミッション 公爵様に会え


その2日後の夕方にフランシスカさんの父親である、ロドヴィック・アーホルン公爵はリーリオの南門に到着していた。


「なんだ、あの植物は?」


門の外からでも領主の屋敷のある山はハッキリと緑に覆われているのが確認出来た。領主が不在となったものの兵士達は平常通りだった。領主の屋敷をどうこう出来る指揮権を持つ者がいなかっただけでもあるが。


最悪、長年の付き合いが有ったベリス辺境伯から娘を強奪するつもりで騎士をここまで率いて来たが、余りの予想外の出来事に途方に暮れていた。


「何人かここに残して、先に進むぞ。」


そう言うと緑の裾野を目指した。その隊列はリーリオの街の人々の目を引く物であり、行き交う人は足を止めて見送っていた。


しかしその行進は屋敷の手前で行き場を失う。屋敷の城壁に沿うように巨大な緑の壁が出来ており、乗馬したままでは進みようが無かった。


「ロドヴィック様、ここはお嬢様を先にお探しになった方が。」


「ふむ、しかしこれを引き起こしたのが、ベリスなら良いのだがな。」


そんな公爵のため息混じりの言葉を途中で遮る者がいた。


「失礼ですわ、お父様!」


その声に公爵も騎士も振り返ると、そこにはフランシスカを始めとするパーティメンバーが揃っていた。


「おお、フランシスカ!無事だったか!」


先程までの厳しい表情も隠れ、目尻の下がった父親がいた。反対に腕を組んで怒っている娘とのコントラストの差が激しくその様子をカレンは笑っていた。


「フランシスカはどうしてここへ?」


「あれですわ。」


彼女の真っ直ぐな指が指し示すのは、燻んだ灰色のふっくらとした子房だった。それは何枚かの枯れた花びらを残したまま育っている。


「あれは実なのか?」


「昨夜、花が咲いた事を確認していますので、その通りと思いますわ。」


「花の事は良く分からぬが、そんなに早い物か?」


「いいえ、我が目を疑う早さですわ。起きたらこの様な有様ですから。近くで確認しようとここまで来た次第です。」


「お、お久しぶりです。公爵様。」


「初めまして、お嬢様にはいつもお世話になっています。」


「よろしくー。」


「よろしくです。」


口々にメンバーが公爵様に挨拶していく。そんな中恐る恐る挨拶したのがエイミーさんだ。


「あ、あのタリリさん、あの人はフランシスカさんのお父さんなんですよね?貴族様なんですか?」


「ん、そうだぞ。フロース王国のアーホルン公爵家の公爵様ご本人だぞ。」


タリリはエイミーさんの質問にさも当然と言った感じて語り返す。しかしエイミーさんはフランシスカさんを見て固まってしまった。


「ふ、フランシスカさんはそれじゃあ…。」


「ああ、アーホルン公爵家の長女でフロース王国第一王子の婚約者だ。」


「ええ!どうしょう、あわわわ。」


タリリはエイミーさんの背中をドンと叩くと、エイミーさんは前のめりになる。


「気にするな、異世界人も天使もいるこんな世の中じゃ大した事は無いぞ。ハハハ」


「え?異世界人?天使?」


もうエイミーさんの声はタリリには届いてはいない、彼女は笑いながらマリリさんの元へと歩いて行った。


その後は公爵様だけを伴って、我がホームへと帰って来ている。部屋が荒らされる事を心配していたが、扉が破られていただけで特に荒らされた様子も無かったのだけは、あの領主に感謝している。


カレンとフランシスカさんとマリリさんの対面には公爵様が座っている。俺たちはミカンちゃん達と自分の部屋に戻って来ている。


「一昨日の昼過ぎに、この家を包囲されて領主の屋敷まで連れて行かれたと。」


「はい。」


「それでその話し合いをしていたら、突然領主が消えてしまった。そして気付いたら緑に覆われていたと?」


「間違いは有りませんわ。」


公爵様はフランシスカさん達の説明を復唱するかの様に繰り返した。


「聞いていいか?」


「はい、どうぞお父様。」


「色々と隠して居らぬか?」


「はい、もちろんですわ。お父様でも乙女の秘密はお話しできませんもの。」


公爵様は額に手を当て、疲れた表情を見せていた。


「分かった。話せるだけで良いから話せ。まずは王都で会った翌日にこの地にいるのはどうしてだ?」


「カレンさん?どうしましょう。」


「いいんじゃない、家族だけの秘密にして貰えば。話が終わったらドールでもフロースでもね。」


「はい、ありがとうございます。」


「お父様、その件に関してはこのお話しが終わり次第、体験して頂きますから。楽しみにして下さいね。」


「ん、そうか。では何故領主は消えたのだ?」


「それは予想でしか有りませんが、アールヴの森へ行かれたのかと思われます。」


「アールヴの森、エルフの聖地と言ってたな。」


「はい、領主様がそう仰られていました。それ以上の事は聞いていませんわ。」


「それはプロフィテスの大森林とは違うのだな?」


「恐らく、そこで真のエルフになると仰られていました。」


フランシスカさんはコインに関する事を敢えて避けているようで、カレンの腕輪を隠れ蓑にコインの事は隠し通すつもりのようだった。


「ふう。」


大きなため息を吐くと、公爵様はドッカリと背をソファに預け目を瞑る。


「カレンさん、ふふふ。」


「え、いいの?」


そっとカレンに手を繋いで来たフランシスカさんは意地悪そうに笑うと頷いている。それを見たマリリさんは苦笑いをしながらカレンの腕を掴んだ。


フランシスカさんが父親の膝に手を乗せたのを確認すると、カレンはフロースのダンジョンに転移した。


その地面は土に覆われており、壁にも天井にもツタや苔が生えている。全体的に冷んやりした雰囲気のフロアた。


「なっ?!」


突然ソファが無くなり、公爵様が背中から地面に倒れ込む所をフランシスカさんとカレンが手を引き、寸前のところで阻止をしている。


「お父様、気をつけて下さいね。ダンジョンは危ないですから。ふふふ」


「何?」


「外へ出て見ますか?」


公爵様は既に通路の様子からフロースのダンジョンの1階層で有りそうだとは予想はついていたが、マリリさんの提案に従って出口を目指した。


「ふむ、確かにフロースのダンジョンだな。」


公爵様は今し方、出て来た遺跡を見上げると感心している。そしてもう一度ダンジョンに入り人目から隠れると瞬時にドールのダンジョンへと跳んだ。


「ふむ、白黒の丸い形状の部屋か確かにドールだな。」


「お父様、恐らく領主様が消えたのもこのチカラと同じ物だったと思われます。」


「なるほどな、精霊石を作り出す技とどこまで関係があるか分からぬがエルフの聖地へ行ったと言う訳だな。」


「はい。」


「それで御主らは、このチカラを何処でとは教えてくれぬよな。」


「お父様、ダンジョンとだけ教えて差し上げますわ。」


「そうか、ならば万人が手にする物では無いのだな。」


「はい。」


(フランシスカさん、コインは万人が手にする可能性あるわよ?)


(そうでしたわね。)


「お父様、但しわたくし達のと、領主様のチカラは似て非なる物だった場合はその限りでは有りませんわ。」


公爵様は一瞬だけ眉毛をピクリとさせたが、その後は何事も無くフランシスカさんの話を黙って聞いていた。


(これで良いかしら?)


(完璧よ。)


(いえ、墓穴を掘ったようです。)


((え?))


「フランシスカよ、手遅れになる前に頼むぞ。」


「え、あっ?、お父様。」


(フランシスカさん、仕方ないわ。コインの事を白状しましょう。)


(そうです。)


「お、お父様!実は。」


そんなフランシスカを見た父親は目を細めて、カレン達を見た。


「フランシスカは良い友達を持ったな。けどな幾らテレパシーとは言えお互いにそれだけ長い間、見つめ会って居たら、こっちも何かあるなと思うぞ。」


「「「あっ」」」


フランシスカさんは真っ赤になりながらも、コインの事を説明し出した。


「わたくしの目にはただベリス辺境伯が大量のコインを用意して、己の望みを呟いただけに見えました。」


「しかし、次の瞬間にはコインは煙のように消えて、ベリス辺境伯が消えて行きました。」


「ただ、その時にベリス辺境伯はコインは神からの贈り物で精霊石を作る為に使うには値しないと叫んでおりました。」


「フランシスカ達は使えぬのか?そのチカラを。」


「残念ながら。」


「ではあのチカラは?」


フランシスカさんがカレンを見ると、彼女は既にローブの袖を捲り上げ腕輪を見せていた。


「良いんですか?」


「ええ、公爵様なら見せなかったわ。けどフランシスカのお父様なら娘さんをお借りしている分の誠意は見せなくては行けないと思ってね。」


「これはアザリアの腕輪と言います。ダンジョンにて発見しました。」


(そうだったんですね、もしかしてあの時でしたか?わたくし達を助けて頂いた入口で再びお逢いしたあの時では?)


(そうよ。)

(その時でした。)


「コイン以外がダンジョンから産出するとは初めて聞くな。しかもそのチカラは魔道具を遥かに凌ぐか。」


「さあ、お父様。今夜の夕食は家で食べていって下さい。」


これ以上の追記は免れたいとフランシスカさんは話題を切り替えると、公爵様も潮時とばかりに話に乗ってくれた様だ。


「ん、良いのか?」


「カレンさん、マリリさんよろしいですわよね?」


「ええ、アイツに頑張ってもらいましょ。」


だが、俺は頑張らなかった。財布的には頑張りすぎたが。肉の焼ける匂いとジュウジュウと音がテーブルの上魔導コンロの上の鉄板から聞こえる。


「ここで調理するのか?」


「いいえ、お父様もご自分の食べる分はご自分でするのが一番美味しく頂けますわ。ですから今回はわたくしがお手本をお見せ致します。」


そう言うと分厚い肉を2枚、鉄板の上に乗せると微笑んで見せた。


「フランシスカがするのか?」


「はい、腕によりを掛けて致しますわ。」


その横では既に焼けた肉や野菜をカレンがミカンちゃんやヨナーちゃんの皿に入れていく。


「レンちゃん、ミカンは自分でやるです。」


「ヨナーもやりたい。」


「え、そう?熱いからね。火傷したら直ぐにマリリさんに言うんだからね。」


「はいです。」


「はい。」


「じゃあ、ミカンちゃんの貰うねー。あっこれ高い奴だー。美味しいー!」


横からトンビが餌を攫うように、ジェシカさんが肉を奪って行く。その瞬間にミカンちゃんの皿を覆うように小さなストーンウォールが出現した。

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