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ミッション 腕輪を解放せよ。

忙しすぎる異世界、俺のスキルは待ってくれない。


その89 ミッション 腕輪を解放せよ。



(精霊との契約によって、今から話す内容を口に出来ません。)


(まず契約とは関係ない本題からお聞きください。わたくし達はベリス辺境伯と事を構える事になります。)


(なっ?!)


(どうやら辺境伯は精霊石よる、身体的及び精神的な実験を領民や帝国からの奴隷を用いた実験をしているようです。)


(奴隷となると処罰の対象になるが、保護していたなどいくらでもいい訳は出来よう。)


(いいえ、問題はその精霊石を辺境伯が自在に作り出せるという事です。)


(誠か!)


(辺境伯からの今年の贈り物はこのブレストアーマーでした。この鎧にも風の精霊が辺境伯の手により閉じ込められていました。)


(ふむ、こちらの希望していた精霊の宿ったミスリル

銀の鎧だな。)


(はい、そしてその精霊は3つの目的により使役されていました。軽くする、速くすると覚えておく事を強要されていました。)


(覚えておく?)


(ベリス辺境伯様から、風の精霊が遣わされて来て、この鎧の精霊が覚えておいた事を聞いて持ち帰る為です。)


(そんな事まで可能か。)


(はい、その証拠がそのベリス辺境伯の精霊との契約です。かの精霊は今の情報を話してしまった事をお互いに秘密にする為に、喋らない事と言う契約を結んで立ち去りました。)


(辺境伯が危険な事は分かったが、お前の理由は何だ。)


(スラムの子供たちです。)


(教会か?)


(はい、精霊石の呪いと不審火による火事および税未納の罪による投獄の危険が迫っています。)


(ふむ、しかしスラムでは手は出せぬな。)


(はい、それは元より承知しております。ですから最悪わたくしの事は逆賊として下さいませ。)


「ならんぞ!高々辺境伯如きで我が娘を逆賊などにはせぬぞ!」


「「え、逆賊?」」


突然の公爵様の激怒に俺たちの顔面は蒼白だ。背筋を冷たい汗が伝う。


(ですがお父様それでは、当家にご迷惑をお掛けしてしまいます。)


「安心して暴れて来い。我が娘の我儘ぐらい揉み消してやる。」


「ありがとうございます。」


娘が去った後、公爵は親の顔を辞めていた。執事を呼びつけると国境の街リーリオに向けた派兵の指示を出した。



時間は戻り昨夜の夕刻、マリリさんはタリリを伴い教会を訪れていた。すでに採掘者も疎らで何人かシスターさんはカウンターから離れ片付けをしている。


「シスターマリリ、保護進んでいますね。」


そう言いながら近づいて来るのは聖女様だ。穏やかそうな表情からは結果に納得されているのか伺い知ることは出来ない。


「シスターメッサリナ、お伝えしたい事が有ります。お時間を頂けませんでしょうか。」


聖女様はマリリさんの表情を読むと、以前の私室へと2人を案内した。


「シスターマリリ、タリリさん、お掛けなさい。」


聖女様はソファを勧めると自分も向かいに腰を下ろした。


「それで何を聞いておけばいいのかしら。」


「ある方が孤児達で精霊石の実験をされています。」


「精霊石?そんな高価な物を?」


「はい、現時点で3点確認しております。それぞれ近づいた異性を死に至らしめる物、異性が近付くと死に至る物、ある場所から離れた場合に死に至る物です。」


「それが孤児達に?」


「孤児に1つ、孤児を世話する女性に2つです。」


神妙な空気が流れる。聖女はしばらくして重かった口を開く。


「領主がスラムをよく思ってない事は知っていました。だからその件での相談かと思いましたが、その上を行きましたか。」


「そのある方は領主でいいのよね。」


「…。」


聖女さまの問いかけにマリリさんは無言を貫く。その名前を出してしまえば教会にも影響が及ぶおそれがある為に。


「良いのよ、言いなさい。シスターマリリ。」


しかし先輩の聖女はそれを是としない口調でマリリの名を呼ぶ。


「はい、ご想像の通り、領主様です。」


「様なんて付けなくていいわ、あんな奴に。」


マリリさんは姿勢を正して、言葉を告げるとテーブルに額がつきそうな角度で頭を下げた。


「孤児を明日保護完了しだい、領主に実験を中止させます。その時には除名処分をお願いします。」


「除名処分では済まないかも知れないわ。教会からも追っ手を出す必要に迫られれば私が動く事になるわ。覚悟は出来てる?」


「はい、お手柔らかにお願いします。」


マリリさんは額を付けたままの姿勢で返事を返す。お互いその表情は窺い知れない状況となっている。


「本来なら、この場で拘束も有り得るわ。ですが貴女がわざわざ来てくれたのですから、子供の保護が完了するまでは時間を与えます。考え直すならそれまでにお願いしますね。」


「ありがとうございます。」


マリリさんが顔を上げた時には聖女様はソファから自らの机へと歩きだしており、2人の視線が重なることは無かった。


マリリさんが退出すると神父により教会騎士と司祭が集められた。その中には何人かのシスターも混ざっていた。聖女はまるで何かを警戒するかの様な超えのトーンで静かに指示だけを伝えた。



そしてその日の夜、カレン達は全員が元店舗だった家に集まっていた。


「明日、彼の情報を元に孤児を教会に保護すると同時に精霊石の破壊をジェシカさんとアンタに頼むわ。」


「了解ですー。」


「ああ、頼まれた。」


「そしたらここに集合ね、領主の所に乗り込むわ。それで良いわね?」


その言葉に全員が頷いているが、だれの顔にも緊張が浮かんでいる。採掘者になった筈がテロリストになるのだ不安も緊張もある。


「けどエミリーさん、お母さんと待ってても良いのよ?」


「お母さんが殺されようとしたのに、何もしないで待ってるなんて出来ません。」


「それでもよ、普通はそこは涙を呑んで我慢のするのよ。」


「お願いします、連れて行って下さい。」


「分かったわ、その代わりに安全第一よ。」


「はい。」



翌朝マリリさんを中心にフランシスカさんが頼んでいた捜索によって新たに3つのグループを保護した。全部で15人を連れてマリリさんは教会へと歩いて行った。


「エリスさん、よく頑張ったねー。」


ジェシカさんはそっとエリスさんの腕輪に左手を置く。


ジェシカさんの声はエリスさんには届かないが、腕の精霊石から闇の精霊が飛び出して来た事で、アランとエリスは腕輪の呪いから解放された事が理解出来た。


「エ、エリス姉さん!これって?!」


「そうね、教会に行きましょう。」


「姉さん歩ける?」


「アラン、私を独りで歩かせる気?肩を貸しなさいよ。」


「ああ、ああそうだな!」


そう言って2人はお互いに手を伸ばして、指先がふれるとサッと離れた。


「姉さん?」


「大丈夫みたい。」


「いいねー。青春だねー。」


こうして2人はジェシカさんにストーキングされながらも連れ添って歩いて行った。


そしてここはラカカさんの小屋の前の軒先だ。ラカカさんが今朝のスープを売っているが客はいない。


「おはようございます。今日新たに15人の子供達を保護しました。貴女で最後です。」


「おはよう、飲むかい?」


俺はコインとカップを渡す。


「毎度、こっちも頼むよ。」


代わりに腕を捲って差し出して来たので、精霊銀の指輪で闇の精霊を解放した。その精霊は一瞬おれの方へ来かけたがラカカさんには向かわずに消えて行った。


「教会へは行きませんよね?」


「ああ、ここにいるよ。」


その意思は固くおれ程度では説得は出来そうに無い。


「もしもの時は逃げて下さい。もう腕輪ほ呪いは有りませんので。」


「ああ、そうするよ。」


俺は一気にスープを飲み干すとその場を後にした。


カレンとフランシスカさんは情報提供者の男とスラムを急いでいた。確認された腕輪は全部で6個も有った。


そしてその内の3つが現在も稼働している。残りの3つの腕輪は残念ながら犠牲者を出していた。


1人の男性は歩き続けなくては徐々に死に至る呪いであったが、全く歩く事はせずに報酬として渡された金で呑んだくれていた。


そして少し呪いが発動した時に鬱陶しくなり、力尽くで外そうとした為にペナルティが発動してその場で力尽きた。


また2人目の男は子どもを毎日攫って来なければ、即死に至る呪いであった。目をつけていた孤児がいなくなったために、衝動的に子供を攫おうとしたがその子の親に見つかると憲兵へ連行されていった。


そして0時が過ぎた頃、牢獄に激しい悲鳴が上がったので兵士が駆けつけると男は既に生き絶えていたという話だ。



最後の犠牲者は6才の男の子だった。その呪いは腕輪を誰にも見せるなと言う内容だったが、小さな子供では隠す素ぶりも不自然だった。


その子は必死に隠していたが、気になった仲間の孤児が袖を捲り上げた瞬間に男の子は苦しそうに転げ回るとしばらくして動かなくなったと言う。


その話を伝え聞くカレンとフランシスカさんは始終無言だ。案内役の男は頭を掻きながら、スラムの中を人を避けながら進んでいく。


「ここだ。頼むから助けてやってくれ。」


男は小屋から垂れているドア代わりの布を捲ると、中に彼女達を招き入れる。


中には男が2人胡座をかいてた座っていた。1人は後ろ手に縛られて転がされていた。


「その2人はモンスターを倒せって指示とコインを持ってこいって指示だったらしい。で、そこに転がっている奴はスラムに火をつけろって指示でその瞬間を見られてこの有様だ。」


「そう、処分は任せるわ。」


カレンはそう言いながら、3人の腕輪から精霊を解放していく。そしてその精霊はキョロキョロと周りを見渡したのち、スーッと消えて行った。


「ありがとうございました。これは約束の報酬です。引き続きお願いしますわ。」


「おう、調べておく。2日くれ。」


「では2日後にまた。」


フランシスカさんは金色に輝くコインを男に手渡した。その様子を3人の男達は信じられない物を見る目で眺めていた。


そしてその原因は彼女達がその場所に着く前の事、案内役の男はその3人が身につけていた有り金全てを呪いの解除料として巻き上げていた事だった。


そんな事を知らない彼女達は来たる決戦に向けて備える為に、みんなの待つ場所へと足をすすめるのだった。

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