ッション 馬車を走らせろ
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「精霊もいなくなりました、そろそろ確定とは何かお教え下さいませんか?」
その言葉にカレンはハッとした顔をする、これは忘れていた表情だ。
「あ、そうね。そろそろ良いわね。」
「忘れてたんだろ?」
「煩いわね、タイミングをみてたのよ!」
「それで確定とは?」
フランシスカさんはいらぬ邪魔が入らぬうちに、聞き出そうとしている。前回も聞きそびれたのを覚えているのだろう。
「えーと、確定なんだけど。証拠も無いし、やり方も分かって無いわ。それでも良いなら聞いて。」
「はい、それで構いません。意思の統一は必要ですわ。」
フランシスカさんは御者台に座ったまま、手綱を握る俺を挟んでカレンと向かい合っている。おれは視線が気になるが正面をキープし続けた。
「1番最初はアザリアのダンジョンボス部屋での出来事なの。なんとかって司祭が採掘者をモンスターに変えたの。」
「え?カレンさんいったい何を?」
話し始めていきなりのクライマックスでフランシスカさんは既にパニックだ。けどカレンの説明は止まらない。
「次はラヴァンドの街で例の商人が他の人商店を潰したのも多分そうね。ただ唯一目撃したのは、その商人が逃げる為に馬を暴走させた時ね。商人の側にコインを入れる袋だけが落ちていたのが証拠ね。」
「あの商人もですか?」
「多分そう。やり方が分かったとか叫んでいたわ。」
「確かにその様な事を口走っていました。」
フランシスカさんは思い当たる点があったのか、大きく頷いている。
「そして辺境伯の精霊石なんですね。」
「そうよ。」
今度はカレンが頷く番になっている。そして確信に触れた。
「その全ての共通点はコインなの。」
「コイン?」
「どんな手順が必要かは分からないけど言える事は、その者の望みが叶えられた時にコインが消えて無くなるし、そうで無い場合はそのままだったわ。」
「コインが消えた?安定化してなかっただけでは無く?」
「それは無いわ。安定化していないコインでは望みは叶えられなかったわ。」
「どうしてそれが?見た目では判断できませんわ。」
「コイツの持っていたコインが全部、安定化していないコインだったの。」
「ダンジョンで採掘されたコインだったのでしょうか?」
「それは少しだけね、残りは大部分はミッションの指示だったわ。それで司祭の思惑が外れ動揺している内に司祭を倒せたわ。」
フランシスカさんは今までの会話を反芻して、考え込んでいる。その凛々しい横顔を写真に撮って壁紙にしたい。
「それであの精霊の話に繋がる訳ですわね。テーブルに金貨を並べてお祈りと言う件に。」
「ええ、間違いなさそうと思わない?」
「確定ですわね、ただ辺境伯はコインによる奇跡はあくまでも自在に精霊石を作り出す事だけに留まっているようですわ。」
ただそれも少しのキッカケで崩壊し得る事だ。いま彼女がその事に夢中になっている為に視界が狭まっているだけに過ぎない。いつ本来の機能に気付いても不思議では無い。
そう呟いたあとフランシスカさんは、天中の星空を
見上げていた。
「あの、フランシスカさん大丈夫?」
「もう貴女達は…。もう他には有りませんか?」
「もう無いわよ!私もコイツに巻き込まれてるだけよ!」
「はあ?」
「だってそうじゃない?アンタが来るまではこんな事とは無縁だったのよ。ダンジョンだって4階層止まりだったしー!」
「違うな、俺は少し手伝っただけだ。トラブルメーカーはそっちだろ!」
「あー!またあっちの言葉で誤魔化そうとしたって無駄よ。アンタには感謝もしてるけど、その百倍は大変な思いをしてるのよ!」
「百倍?俺もカレンがいなかったらと思うとスッゲー感謝してるぞ。だけど俺はその千倍は我慢してるぞ。」
「何を我慢してるのよ!」
「お前、寝てる時ミカンちゃんに服を捲くられてる事知らないだろ?何回俺が布団で隠してると思ってるんだ!」
「はあああああ?!アンタ見たの?何回も見たの?」
カレンが真っ赤なのは見れば分かる。けど俺も顔が熱いからフランシスカさんの方を向く。
「ハア、貴女達はこの世界の仕組みを揺るがす事を告白されたばかりなのにお幸せそうで…。」
「それは無い!」
「それは無いわ!」
「ほら、息までピッタリですわ。ああ、わたくしにはジェシカさんの役は重すぎますわ。」
フランシスカさんはこの事を父親に伝えるべきかを考えている。コインと言う世界の流通を支える物にそんな秘密があろうとは。
教会はコイン採掘者の事をギフトマイナーとも呼ぶ。ギフトとは神からの贈り物だ。それをフランシスカは今まで偽造も出来ず、壊れる事も無いコインの事だと思っていた、疑いもせずに。
しかしコインが神からの贈り物を受け取る為の代価だとしたら、見方は180度変わってしまう。国は知っているのだろうか?教会は?神聖国 ミレラーネは?
グルグルと良からぬ事がどんどんと湧いてくる。帝国がこの力を知ったら確実に軍事に使用するだろう。神の奇跡に対抗しうる軍隊などこの国にあるわけが無い。
この国でも権力を欲する者はいる。それが王位の簒奪を企てたら阻止する術はあるのか?そしてその対象は貴族だけでは無くなる。コインの秘密を知ってしまえば平民だろうと子供だろうと関係が無くなる。
その者は正に神の贈り物であるギフトを、自分の欲望のまま使うだろう。まるで神の如く奇跡の力を振るう事は先の商人やベリス辺境伯で証明されている。
カレンさんは自分と同じくこの世界の常識囚われている為に想像力の限界がある。きっと商人やベリス辺境伯と同じ道を歩むのが精々だろう。
しかしこの男はどうだ。きっとその価値と危険性を理解しているはずだ。その使い方1つで街や国を滅ぼし、また多くの人々を救う奇跡を起こす力である事を。
誰かがこの男のこの世界のしがらみから解き放たれた想像力と行動を制御しなくてはならない。そう思い彼女は勘違いな決意をする。
「カレンさん、ヘンタイさんを絶対に離さないで下さいね。わたくしも絶対に離しはしませんから。」
「「え??」」
真剣な眼差しでそう宣言する彼女に、それ以上だれも突っ込む事は出来なかった。
順調に行けば王都には明るくなる前に着くはずだった。しかしここでハプニングが発生した。
前方に青白い小さな1つ火が灯った。
「ん?」
瞬く間にその火が前方の街道いっぱいに並んだ。一体いくつあるのだろうか?そんな事を考えてしまう。
「カレンさん、これは?」
「もしかして今日は亡者の日?」
カレンはそう言いながらも、今まですれ違う馬車も人も無かった事が思い出されていた。
「なんだ?その物騒な日は?」
会話の間にも小さな火は増えていき、もう馬車を一周している。
「アンタ、早く馬車を止めて!」
「ヘンタイさん急いで下さい。この火は亡者の掲げるあの世への道標といわれています。火が辺りを埋め尽くす前に立ち止まり、朝を迎えなければ亡者の仲間入りです。」
「ぴろりろーん!」
(ミッション そのまま進め! 制限時間 &@AH)
(そのまま進め、制限時間は読めない字だ!)
俺はミッションを全員に伝えた。
「え?」
「ヘンタイさん、急いで下さい!」
(カケルさん、どうしたんですかー。)
(カレンさん、何か問題でも?)
ジェシカさんとマリリさんは起きていたのか、ミッションの音で目が覚めたのか寝ぼけもせずに、テレパシーを返してきた。
前方は地平線の彼方まで青い火に覆い尽くされている。その火の中を馬車は進んでいる。
「アンタ、どうしたいの?」
「進むぞ!カレン、フランシスカ済まない。」
「離さないと言いましたが、もう後悔していますわ。」
「背後も火の海よ、もう手遅れよ。」
小さな青い火が揺らめくと、こぼしたアルコールに火が付くように見渡す限りに青い火が立ち上る。
比喩では無く青白い火の海の上を馬車は走っている。
火の海は馬も俺たちも熱くはないし、馬車に燃え移ってくる事も無い。しかし眼下で明らかに燃えている。
しかしミッションに従い、馬車を走らせているが何も起こらない。街道も見えないし、星空も見えない。どれぐらいの時間、どれぐらいの速さで走っているか分からなくなっている。そんな時だった。
「おはよー。」
「フランシスカ、ここは来たら駄目だよー。」
目の前に光の精霊と風の精霊が現れる。
「カレン来たの?」
少し遅れて紅いショートカットで赤いワンピースの少女も現れた。その少女はカレンの作り出す炎の虎のミニチュア版に跨っていた。
「あ、私の火の精霊さん?」
「カレンの精霊さんは初めてみるな、初めまして。」
「貴方がカレンの男ね、ふーん。」
「何を言ってるのよ!」
「「「来るよ」」」
3人の精霊が口を揃えて言う。その声には緊迫感が滲んでいる。
「え?」
「なんですの?」
一瞬視界がブレたと思ったら、目の前には青白い火で出来た山の様な大きさのトカゲがいた。
「なんなのよ?なんなのよ、もーう!」
トカゲの前には緑色のチュニックと革のブレストアーマーに短めのプリーツスカートに革のブーツと言った出で立ちのエルフが文句を言いながら走って来ている。
「ファイア、ファイア、ファイア!」
「フランシスカ、エアリアルスマッシュ!」
「バンバ…。」
「え?」
「あら?」
俺は山の様なトカゲだから、少しは大きくと思い精霊に頼んだが、おかしい。
カレンのファイアはトカゲはもちろん焼き尽くしてもその勢いは衰えず、空を際限なく登っていく。
フランシスカさんの風の渦はトカゲの胴を貫き、そのまま進んでいく。地平線の彼方まで飛んでいく。
レーザーの魔法で足留めしようとしたら、トカゲの下半身が消し飛んだ。そしてその光は地平線まで光の残像を残して飛びその世界に穴を開けた。
しかし何かがおかしい。いやファイアもエアリアルスマッシュの大きさも威力も全部異常だが、レーザーも変だ。
「アンタ、それで周りぐるっと遣りなさい。」
「はい、地平線の彼方がそんな大きさで見える訳が有りませんから。」
女性たちのが先に答えに辿り着いていた様で、両肩を叩かれた。
俺は御者台に立つと両手を広げ、人差し指だけを伸ばした。そこからレーザーを連続して出したままその場で一回転した。
その軌跡は回転軸がズレたのか、円にはならなかったがその役目は果たした。2本のレーザーの軌跡が重なり空間が上下に分割されると世界に金色のヒビが入っていく。
そして世界が元に戻る瞬間、少女の間の抜けた声が聞こえた気がした。
「うそ、帰れるの?」
そうして、俺たちが生者の世界に戻った時には日が昇り王都の城壁が目の前に有った。
ドンドンと扉を叩く音が早朝の廊下に響くと少女の声が父親を呼ぶ。
「お父様!お父様!フランシスカです。」
しばらくすると、鍵が開く音がする。
「失礼します。」
「どうした?いつの間に戻ったんだ。」
怪訝な顔をした公爵様がいた。
「折り入ってお話があります。」
公爵様の寝室を出て、公爵家の私室へと案内された俺たちはテーブルを4人にで囲っている。
「風の精霊さん、私たちとお父様はコネクト出来ますか?」
フランシスカさんは自分の風の精霊を呼び出して、質問している。
「コネクト?何それ?」
「言葉を介さずに意思を疎通する加護でしょうか?」
「うーん?分からないー。」
代わりに俺が光の精霊を呼ぶと軽い挨拶と共に姿を現した。
「お父様とコネクトできますでしょうか?」
「うーん、フランシスカとその人だけならしてもいいよー。」
「それでお願いします。」
「…。」
沈黙が流れる。光の精霊はコネクトを叫ばない。
「あ、あの?何か?」
「仲良くしてー。ぎゅーしてー。」
「ええ?!お父様と?」
「そうだよー。」
フランシスカさんは少し上目遣いで父親を眺めると一言断りをいれると抱き着いた。
「お父様、失礼します。」
「フ、フランシスカ何を?!」
戸惑いながらも公爵様は嫌がってはいないようだ。
「うーん、コネクト?」
2人の頭上で片手を挙げた、光の精霊から光の粒が降りてくる。
(お父様?聞こえますか?)
「おお、何だ?フランシスカか?」
(はい、光の精霊の加護をお借りして言葉を直接お伝えしています。お父様もわたくしを思い描いて念じて頂ければ言葉を介さずに会話できますわ。」
(フランシスカ、聞こえるか?)
(はい、聞こえておりますわ。)
そうして無事に喋らずに会話する事が出来そうだ。
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