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ミッション ベリスの精霊と会話しろ

「カレンさん、わたくしはお父様へ報告にいっても宜しいでしょうか。相手が辺境伯ならもし手を出したら以前の伯爵程度ではすみませんので。」


「フランシスカさんは、手を出すの前提なのね。」


「それは皆さんも同じと思っていますが?」


「ええ、今すぐにでも乗り込みたいわ。」


「「ふふふ。」」


「私とフランシスカさんとアンタで行くわ。ミカンちゃん、ヨナーちゃんとエイミーさんをお願いできる?」


「はいです。」


「私は教会へ報告に参ります。」



カレンは腕輪を使ってフロースのダンジョンに転移した。すぐに外に出るとそろそろ夕暮れが近くなっていた。


馬車を1台借りると王都へ向けて手綱を握った。その馬車の上での何気ない会話から始まった。


「そう言えば、フランシスカさんのそのヨロイはあの女領主からよね?」


「はいそうです。」


「確かミスリルよね?」


「悔しいですが良いものなのは確かです。」


「確か普通のミスリルじゃ無かったよな?」


「アンタ、精霊銀とミスリル銀は違うのよ?」


「あ、そうそう、カレンがそんな事言ってただろ?確か風の精霊が宿ったミスリルとか。」


「はい、ベリス辺境伯は確かそのように…。」


「アンタ、物に宿った精霊ってのはその…。」


少女2人はそれぞれ、言いかけるが黙ってしまう。


「風の精霊さん、いらっしゃいますか?」


「いるよー。」


フランシスカさんの問いかけに、ポンと精霊はワンピースを棚引かせて登場した。


「早速ですが、このブレストアーマーには精霊さんが閉じ込められていますか?」


「んー?なんだろ?」


「どうしたんですか?」


「とーっても、忙しそう。」


風精霊は右を向いては手を羽ばたいて、左を向いては両手を大きくふり駆け足のポーズを取った。それを何度も繰り返している。


「そうですか。」


「どう言う事だ?」


「わたくし達の知識に有る精霊を宿した精霊石やミスリル銀はあくまでも精霊が自らそこにいる事を良しとしている物です。」


「そうよね、山頂の強風が年中吹き付ける場所や火山の火口の中とかに有ったミスリル銀などに、精霊自身が居心地が良いから入ってるのよ。」


「はい、その精霊に常に何かを強要出来るなんて事は有りません。本当に必要な時に力を貸して貰うそれだけでも金貨100枚以上の価値と考えられています。」


「だから、こんな風に精霊が忙しくしてるのは変だって事か?」


「そうだよー。私なら逃げるか、フランシスカを食べちゃうなー。」


「え?!」


「ふふ、カケルさん。本来なら精霊とは畏怖の対象でも有りますわ。嵐、竜巻、人々の脅威は全て精霊と繋がっていますから。」


「ああ、そうか。」


「アンタはどうせ、光の精霊さんも小さな女の子って位にしか見てないのよね。」


「ぐっ!」


「ねーねーフランシスカ、出してあげて!」


「分かったわ。どこでしょうか?」


「胸の真ん中。」


風の精霊が小さな指で、ブレストアーマーの中央部を指し示す。そこにフランシスカさんは左手を当てる。


「あー、疲れたー。クタクタだよー。」


今までブレストアーマーを指差していた、風の精霊さんが突然そんな事を言い出した。手首をプラプラとさせ、ワンピースにも関わらず胡座をかいていてフランシスカさんの目の前で空中に座っている。


そんな風の精霊を俺たちが眺めているのに気付いた風の精霊は口を開いた。


「この子ね、軽くする、速くするともう一つ、覚えておくってのもしてたんだって。」


「覚えておくですか?風の精霊らしくありませんが。」


「じゃあ、まだ大丈夫か?」


「何がなの?」


「俺たちの秘密がヨロイの風の精霊から漏れる可能性があったって事だな。」


「へへーん。エルフから何回も精霊飛んで来たけど、追っ払ったー。」


「そんな事が。」


「あっ!ほら」


そう言うと風の精霊は馬車の後方に飛んでいくと、1人の風の精霊を羽交い締めにして戻って来た。


「この方は?」


「わたしはベリスの精霊よ、離しなさいよ!どうして子のはこんなに力強いのよ。わたしはエルフ付きの特別な風の精霊なのよー。」


フランシスカさんはそっとその精霊の頭に、左手を乗せた。


「何してるのよ?勝手に触らないで!貴女なんかベリスに比べたらそよ風よ。もちろんベリスは空駆ける竜よ、竜巻なんだから!気安く触らないで!」


それにしてもこの精霊はよく喋る。その分注意力も低いようで精霊銀には気付かない。


「いい加減に邪魔しないで、その鎧の子と話をさせなさいよ。離して離して離しなさい!」


「ねぇ、貴女が居ないと領主さまは魔法使えないのよね?」


「そうよ、決まってるでしょ!」


「じゃあ、ラッキーね。ここにずっといてもらいましょ。」


「え?!駄目よ、そんなの怒られちゃうわ。もう帰るわ!。早く離してー。」


カレンの意地悪な言い方で、ベリス辺境伯の精霊は慌ててジタバタと手足を動かしているが、羽交い締めからは逃れられない。


「次きたら、黒い魔石に閉じ込めちゃうから。」


カレンはベリス辺境伯の精霊をつつきながら、わざと低い声を出す。


「えー貴女もベリスと同じこと出来るの?見掛けによらないわね。」


(カレン!辺境伯がどんな方法でやってるのか聞き出せ。)


(そのつもりよ。)


「へー、辺境伯も出来るのね。私はこの腕輪の力で精霊さんをポイって入れるんだけど。こんな風には流石の辺境伯様も出来ないわよね?」


「ぐぬぬ、その腕輪からは凄い力を感じるわ、まるで大精霊様みたい。けどベリスも凄いのよ。テーブルに金貨を並べてお祈りするだけで、魔鉱石が精霊石になるんだからー。」


(確定ね。)

(ああ、確定だ。)

(何が確定ですの?)

(あ、直ぐ説明するから。)


「辺境伯様はやっぱり凄いのね。負けたわ。辺境伯様はその精霊石で何をしてるの?私のような者では想像出来ないわ。」


「んー、いろいろよ。川の向こうから首輪の着いた人を速く動けるようにしたり、強くしたり。最近は首輪の人がいないから、街の子供達でいろいろしてるかなー。」


「だめね、私頭が良くないから、いろいろでは分からないのよ。」


「仕方ないわね、王都の人族の女から旦那に近づく女をどうにかしてくれとか、ベリスは頼まれてるのよ。分かった?」


「貴女説明が上手いわね。もっと聞きたいわ。」


「あ、残念ね。ベリスが呼んでるわ。貴女離してくれないかしら。」


「良いわ、けど今の話は辺境伯様は内緒にしてなかった?」


ベリスの精霊は目を見開いて驚く。失敗したと思う心の中がその顔に表れている。


「あ、わわわ、私知らないし。ああ、どうしようー。」


「貴女さえが私たちと会話してない事にすれば、大丈夫よ。私たちは喋らないわ。」


「じゃあ、契約する?契約してー。」


「どんな契約?」


「お互いに今話した事を他の人に喋らない事、喋ったら存在出来なくなるわ。」


「喋らない事ね、了解するわ。」


「それじゃあ、契約ー!」


その言葉で俺たちとベリスの精霊の周りに、つむじ風がクルッと立ち起きると緑色に光って消えた。


「フランシスカさん、離して貰える?」


「分かりましたわ。」


「貴女達、秘密だからね。忘れないで!」


そう言い残すとベリスの精霊は空に駆け登ると、たちまち空に同化して見えなくなった。


「アンタ、絶対に喋らないでね。精霊の契約って絶対なんだから。存在出来なくなるってのも、大袈裟じゃない可能性もあるのよ。」


「マジか、これからどうすんだよ。公爵様にどうやって説明するんだよ。」


「あー。」


「それなら筆談かコネクトでするしか無いですわ。」


「どうして、こんな危険な契約をしたんだよ!」


「もし言葉どおりなら、辺境伯の精霊をしかもエルフの風精霊を消せるのよ。直接対決には切り札が必要じゃない。」


「それは確かに大きな切り札ですわ。ただし諸刃の剣ですが。」


「ごめんなさい、勝手にして。」


「まあ、良いですわ。危険なのは口の軽いご両人ですから、ふふふ。」


「テメエ、俺は死ぬ自信があるぞ。どうしてくれるんだ!」


「精々その悪い口を閉じておきなさい。」


カレンが頬を右手で俺の唇を摘んできたので、手綱を片手で持ち俺もカレンの頬に手を伸ばす。


「そんな、汚い手で触らないでよ!」


「パク!」


唇を摘む指先の力が緩んだのを見計らい、口を開け細い指を咥える。


「ぎゃあああああ!ヘンタイ、ヘンタイ!」


「う、ヘンタイさん最低です。カレンさんの指臭そうですわ。」


「フランシスカさん、それはそれで酷いから。」


カレンは指を引き抜くとローブで拭っている。

すこし遠目から、自分の指の匂いを嗅ぐ少女の眉間には深いシワが刻まれていた。


「フランシスカさん、匂い嗅ぐ?」


「いいえ、遠慮いたしますわ。その吐きそうな表情で十分理解しましたわ。」


そんな会話をしつつも、カレンは再度、指の匂いを嗅ぐと吐くマネしている。そんなに嫌なら嗅ぐな、匂うなと思う。


そんなたわいも無い話を続けて、馬車を暗い夜道を走らせ続けた。王都から来る馬車とすれ違う事も無く、野営をしている馬車の横を何度か通り抜けたがいずれも問題なく進んでいる。


「王都につくのは、まだ夜明け前よね?」


「大丈夫ですわ、門は開けさせますから。」


「フランシスカさん、あの王都なのよ。真夜中なのよ?」


「はい、寧ろ王都のが顔見知りも多く楽ですわ。」


その言葉を信じて闇夜を進んでいく。リーリオの孤児達の事を思い、締め付けられる胸を耐えながら。

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