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ミッション 孤児を保護しろ

「俺たちにとって一番都合の良いのは、少年が明日までに不慮の事故にあって死んでしまい、腕輪の実験が続けられなくなる事だ。」


「ハア?!」


少年は後退りながら俺たちを見ている。もちろん出口はタリリが抑えている。そしてエイミーさんのお母さんを見るが、その表情はその方法を望んでいない。


「それは少年は嫌だよな。だから領主にお仕置きをするか、このまま何も無かったフリをして実験が失敗だったと思わせるか。」


「でも、精霊石はどうするのよ。きっと領主が見たらバレるわよ。」


「それは闇の精霊にその時だけ石の中にいてもらうか、闇の精霊石を手に入れてくるか。」


「闇の精霊石を手に入れるのは、お父様でも時間が掛かりますわ。比較的多い風の精霊石ですら1ヶ月掛かったと仰られてましたから。」


「光の精霊さん、その腕輪の石に入る事はできるの?」


「はーい、呼ばれたー。」


ポンと言う音と共に光の精霊さんがクルクルと回りながら、俺の頭に乗った。


「何もしなくて良いなら出来るよ。けど暗くなったら帰るけどねー。」


「じゃあ、闇の精霊さんに頼んでも明るい内は石の中にはいられないんだな。」


「そうだよー。嫌なことをさせるんだよー。その石ころー。」


精霊石ってのが無理矢理、精霊を監禁している事だけは分かった。


「その子ねー。ミカンから遠くには行かないからねー。」


「そうなんですか?うちの子は直ぐにどこかへフラフラと。」


「闇と土は水は甘えん坊ー。」


「ミカンちゃんの全部甘えん坊さんなのね。」


「ミカンは違うです。」


「ヨナーも違う。」


ミカンちゃんがプンプンと怒っていると、ヨナーちゃんもミカンちゃんの真似をしている。


「誤魔化せないか…。」


「もう、はいコレ。金貨1枚ね。アイツにも似合うはずよー。」


カレンはわざとらしくそういうと、少年に金貨を渡し腕輪を外す様に言った。


「精霊石って知らなければ、これぐらいで良いわよね。で、アンタも黒髪なんだから、着けなさいよ。」


少年から直接、腕輪を受け取ると左腕を通した。


「どうだ?」


「変ね、似合ってないわね。どうしてかしら?」


「顔でしょうかー。」


「アホか、似合うから買い取った設定なんだろ?嘘でも褒めろよ!」


「似合ってるわ…。プクク」


「ええ…。お似合いですわ。」


「それでアンタは暫く、この家に近づいたらダメよ。」


カレンはビシっと指を突き付けて分かったかと、念を押してきた。


「エイミーさんとお母さんには今まで通りにこの人と朝食を摂って貰わなくては行けないの。大丈夫かしら?」


「はい、私は大丈夫です。」


「私も大丈夫。フーゴさん、いえニーを助ける為ならこの女の戦い勝ってみせるわ。」


「お、お母さん。」


「エイミー、女が騙す時はね、自分自身すらも騙すの。教えてあげるわ。」


そう言って微笑むエイミーさんのお母さんは妖艶でお母さんって雰囲気では無い。


「お母さん…。」


エイミーさんも引いている。猫の獣人の彼はただ頷いていた。そして、エイミーさんのお母さんはエプロンの紐を締め直すとキッチンに立った。


「ニー、夕食には負けませんから覚悟して下さいね。」


「えー、お母さんそんなに食べられないから。」


「採掘者ならしっかり食べなさい。」


「うへー。」


そんな会話を聞きながら、俺たちはエイミーさんの家を出て新しく借りた拠点へと向かった。


「ベリス・ベラルーニだったわよね。あのエルフの女領主。結構な曲者ね、裏で何をしてるのか知りたくも無いわね。」


カレンが大袈裟に震えて見せている。それを見ながら握った右手を口に当て考え込んでいるのがフランシスカさんだ。


「フランシスカさん、あのアルマって方のことは領主様にはお伝えになったんですか。」


「あー、フランシスカさん、あの時カッコよかったですよねー。」


「ゴホン」


フランシスカさんはジェシカさんを上目遣いに睨むとマリリさんに顔を向けた。


「実はまだ何もしていませんわ。しかし、わたくしが進言した所で改める事は無さそうですわ。」


「私が見て来ましょうかー。どんな悪いことしてるのか?」


「駄目よ。危ないから絶対に。」


「そうですね、エルフとはいえジェシカさんを知覚できるとは思えませんが、どんな危険があるか分かりませんから。」


「はーい、了解です!じゃあ、今から何をしますかー。」


すると控えめにマリリさんが提案してきた。


「エイミーさんのお母さんの件がなんとかなりましたので、本日は皆さんに聖女様からの依頼を受けて頂けないかと。」


「どんな依頼なの?」


「そんな依頼あったのか、マリリ?」


「タリリ、一緒に聞いていましたよね。見習いのゼルギウスさんの件ですわ。」


「ああ、あのヤンチャ坊主か!」


俺も思い出した、同部屋だった見習いの狼族の獣人だ。俺がポーターだと分かった途端に態度を変えた、清々しいほどに自分の心に忠実なガキだ。


「あー、茶髪の子ですよね、切れ長の鋭い目してるのにまだ幼い感じが残ってて、可愛いですよねー。」


「あの少し生意気な感じがシスターさん達の間で人気があるのよね。」


カレンは余り接触が少なかったのか、ジェシカさん程毒されてはいないようだ。まるっきり影響無さそうなのが安定のタリリだ。


「気が合うな。」


そう言ってタリリに握手を求めると叩かれた。


「やんちゃとは言ったが、なかなか見所がある奴だぞ。」


「は?」


俺が呆気に取られていると、マリリさんが種をバラしてくれた。


「タリリはあの少年に「カッコイイですね騎士みたい」って言われたのが嬉しくて剣を教えたりしてるんです。」


あの女たらしめ、どうしてくれようか。このまま奴にみんなを合わせるのは危険が危ない。奴をいかに亡き者にしようかと妄想しているとフランシスカさんが話を進めていく。


「どのような依頼なんでしょうか。」


「はい、それはスラムでの浮浪児の保護に同行させよとの事です。」


「何人ぐらいの規模で行くの?アザリアやサイリサスにはスラムなんて無かったから不安しかないわ。」


「騎士が5人でシスターさん達が10人くらいか?いや、全部で20人は必要かもな。」


「いいえ、私達だけですわ。」


「え、大丈夫なの?」


「そんなに物騒なのか?」


「そうですよー。普通の人たちですよねー。」


「マリリさん、因みに普段の構成をお聞きしても?」


「騎士2名、シスター4名、神父1名だそうです。ただし、数日前からの立札による告知を行い、当時は農道を通過するだけとの事です。」


「それなら、保護できないんじゃないの?」


「孤児が看板読めるわけないしな。」


「それで私達が何とかしろって事は分かるけど、見習いを連れて行く必要が分からないわ。」


「そうだな。」


そんな不安要素を抱えながらも、歩いてスラム前迄来ていた。


「ゼルギウスさん、今からスラム街の探索及び孤児の保護を行います。従来の方法とは違いますので離れずについて来て下さい。」


マリリさんが少年に注意事項を説明していく。少年もシスターであり採掘者なマリリさんの言葉には耳を貸している。


道らしき道は無い。城壁沿いに有った道には家が建てられており家と家の間が道になっている。いまは昼下がりといった時間で、家の軒先で女性達は食事の後片付けをしながら子供の世話をしている。


男性はと言うと数人で集まって、安酒と賭け事に興じているようだ。もっとも全員では無

いようで、木材を肩に歩いている男性も見かける。


ただ露天で店番をしているのは女と子供ばかりだ。


「男が少ないわ。」


「採掘者やポーターとして出ているのが、大半と思われます。スラムとは言っても犯罪者ばかりでは無く、多くは低所得者が家族で住んでいます。」


「とりあえず、1人でいる子や子供達だけのグループを探して話をしましょ。」


酒を傾けながら、サイコロを振っていた男たちの内3人のガタイの良い者が立ち上がると道を塞いだ。


「姉ちゃん達、ここに何の用だ?」


「ポーターならダンジョン前だぜ?」


マリリさんはスッと前に出ると、1番体格の良い男に話し掛ける。


「教会から孤児の保護に来ました。ご存知ありませんか?」


「あ?教会がこんな中まで来る訳ねぇだろ!」


男が叫ぶとヒッと小さな声がパーティの中程から上がる。もちろん狼獣人のゼルギウスだ。


俺は鉄貨を何枚か握ると男と握手をした。酒代だ。


「頼むよ、聖女様に怒られるからさ。」


男は手の中を見ると、明らかに期待より下だったのか物を言いたげだ。


「それは挨拶だ。子供達の情報を教えてくれれば報酬は別にだす。親のいる子の情報はいらないぞ。」


「本気なのか?」


「はい。」


男は俺を無視してマリリさんに確認をする。


「銅だ。」


男は俺に向かって手の平をだした。銅貨を3枚乗せた時点で細く白い指がそれを遮った。


「そんな安い情報は求めていません。これに見合う確実な情報をお話しなさい。」


男の手の平の上には銅貨の上に金色に輝くコインが1枚乗っていた。驚きの余りに俺は3人の男達と思わず見つめ合ってしまう。


「ちょっと待ってくれ、10分だけ時間をくれ直ぐに戻る。」


フランシスカさんの迫力と金貨の誘惑に負けた男は金貨を隣の男に預けると、1人奥へ走って行った。


「どちらへ行かれたのでしょうか?」


「知らねえな。アイツ独りで突っ走りやがって。」


(カモだってゴロツキ供を集めに行ったんじゃないだろうな。)


(え、そうなの?)


(彼の方そんな悪人に見えませんでしたわ。)


(そうよね、そう思うわ。)


20分ぐらいして、そろそろおかしいなと疑い始めた頃、男が少年を肩に担いで走って来た。


「待たせた、コイツがここのガキを纏めてる。」


そう言う少年の口から血が出ているし、頰も腫れている。男の腕も何ヶ所か噛まれたり、引っ掻かれたりして血が出でいる。


「すまんシスター。コイツだけでいいから治療してやってくれ。大人しくさせる為に殴ったからよ。」


「はい、それではその子をこちらへ。貴方はこれを」


地面に降ろされた少年をマリリさんは、しゃがんで同じ目線になるとヒールの魔法をかけている。少年の横ではマリリさんに渡されたポーションを持ったままの男が立っている。


「俺に何の用だ!」


「貴方に親がいないならば用は有ります。いらっしゃいますか?」


「そんなもんいねえ、ダンジョンで死んだよ。」


「そうですか、お仲間のケガも治療しますので案内して貰えますか?」


「え?」


「貴方を庇ってこの方と争いになってますよね。あの歯形は貴方のでは有りませんから。」


マリリさんと少年が話している側では、男とフランシスカさんが静かに会話している。


「どうだ?」


「まだまだですわ。」


そう言うフランシスカさんの指先には新たな金貨が摘まれており、男はの手首を持ち上に向けさせると乗せた。


「これを元に子供たちの情報を集めて下さい。2日後にまた参ります。その情報によって別途報酬をお渡し致しますので、宜しくお願いしますわ。」


「お、おう、そうか。」


そう言うと男はまだ飲んでいる男たちに向けて、指示をだしている。その男たちは酒を飲み干すと、バラバラに何処かへと歩いて行った。

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