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82/110

ミッション ニーを捕まえろ

本日からタイトルを変更しました。

これからも宜しくお願いします。


この話の前に1話飛びましたので、81話を追加しています。82話は前回の81話になります。

すみません。

「エイミーさんのお母さんを何とか出来ないの?あと3日よ。」


朝食時に唐突にカレンが聞いてきた。2人を除き意味は分かっているが、当事者のエイミーさんは突然の3日と言う期限を聞き、パンを口に運ぶ途中で固まっている。


「今日もう一度マリリさんに、お母さんを観て貰って3日後の危険性を確かめるか。」


「エイミーさんが良ければ、私は構いません。」


「え、私もお母さんも大丈夫と思いますけど。」


「それじゃあ、食べ終わったら向かうわよ。」


それを聞いてゆっくりと、2人で話しながら食べていたミカンちゃんとヨナーちゃんは慌てて、口の中に詰め込みだした。


ヨナーちゃんが来てから、ミカンちゃんは口いっぱいにご飯を詰めるようになって、逆に食べるのが遅くなっている。そんな2人をカレンは何も言わずに見つめていた。



そのミッションは馬車がエイミーさんの家に向かっている時に発報した。


「ぴろりろーん!」

(ミッション エイミーさんのお母さんを遠ざけろ。 制限時間 120秒)


「何?」


俺はコネクトで全員にミッションの内容を配信する。



(エイミーさんのお母さんを遠ざけろってミッションだ。)


(エイミーさんからお母さんを遠ざけるの?それともお母さんを何かから遠ざけるの?どっちよ。)


(どっちかだ。)


(このままでは時間に間に合いません。急ぎましょう。)


カレンとマリリさんが脳内に直接話しかけてくる。

この感覚は慣れないなと思いながら。


「あの、どうしたんですか?皆さん。」


エイミーさんは自分に無言な視線が集まってくるので戸惑っている。


「エイミーさん、家の鍵持ってるよね。」


「え?家にはお母さんがいると思いますけど。それに鍵は余りかけない方ですけど。ニーがくるので。」


「ニー?」


聞き慣れない単語にカレンが敏感に反応する。


「はい、野良猫なんですけど。勝手に入って来てご飯を食べたら帰っていくんですよ。」


「ただの偶然と思いますが、父親が亡くなった時期からくる様になったので、お母さんが可愛がってまして。」


「それでニーの来る時間は、今ぐらいなのね。」


「え、はい。そうですね。」


「なるほどな。ニーからだった訳か。」


しばらくすると、ミッション失敗の文字が赤く点灯する。予想ならばこの瞬間にお母さんとニーが接触しているのだろう。俺たちが到着するまでニーがいてくれればいいが、気ままな野良猫に大きな期待をかけるのは無理だろう。


ニーを驚かさない為にも2軒ほど前で俺たちは馬車を留めて静かに歩いていく。そんな俺たちの様子を不思議そうに見ながらも、合わせて静かにしているエイミーさんは空気が読めるやれる少女だ。


「ただいまー」


少しだけ空いていたドアをゆっくりと開くと、エイミーさんは心持ち静かに、声を掛けて入っていくが返事は無い。


「お母さーん。」


俺たちも部屋を覗き込むが猫はいないようだ。テーブルの上には空になったパン用の平皿とサラダ用の深皿が2セット向かい合わせに置かれていた。


「お母さん!!」


エイミーさんの叫びに全員がそちらを向くが、マリリさんは既に俺たちの横をすり抜けて走りだしている。


「お母さん!!ねぇお母さん!」


「エイミーさん、代わります。」


床に倒れるお母さんを必死に揺すっているエイミーさんの前に割り込むように体を滑り込ませると、マリリさんはヒールを唱えた。


マリリさんは背中越しにエイミーさんの心配そうな声を聞きながら、今度はキュアの魔法を唱えた。


すると呼吸も落ち着いてきたので、近くにいたメンバーで抱え上げベッドに寝かせた。しばらく側で見守っていると彼女は意識を回復させ目を開けた。


「大丈夫ですか?」

「お母さん、大丈夫?」


「あの、これは?」


彼女は娘が縋り付いてくるのに、驚きながらもマリリさんに自分の状況を聞いてくる。


マリリさんは彼女が倒れていた事を伝えると、今度はその時の様子を聞き出そうと会話を続けていく。


「昨夜は薬を飲まれたんですよね。」


「はい。」


「朝食は取られましたか?」


「はい、少しですが。パンとサラダを少し。」


「それまでは記憶はあるんですね。」


「はい朝食を摂ったあと、片付けようと立ち上がったのは覚えているんですが、その後は…。」


たぶんその時に気を失って倒れたんだろう。ただ猫の餌皿が見当たらない。直に餌付けをしているんだろうか。


カレンとミカンちゃんが床や家具の隙間を覗き込みながら帰ってきた。ミカンちゃんはお母さんのベッドの下をヨナーちゃんとしゃがんで覗き込んでいる。


「猫ちゃんいないです。」

「見つからないです。」


「貴女たち、何を探しているの?」


「猫ちゃんです。」

「猫のニーちゃん。」


「え、エイミー。ニーの事教えたの?」


「うん、駄目だった?」


「ううん、そうでは無いわ。カレンさんたちなら大丈夫よね。」


「うん、ヨナーちゃんは奴隷だったみたいだし、この街に来たのも孤児達を伯爵から助けたが原因なんだって。だからニー君大丈夫と思うよ。」


「お待ち下さい。ニー君ですか?エイミーさん、一度確認しますね。」


マリリさんは俺たちを呼び集めると確認を始めた。


「エイミーさん、ニー君とはもしかして猫人族の男性でしょうか。そしてそのテーブルでご一緒に朝食を取られていたということで、間違いありませんか。」


「はい、そうですけど。それが?」


「エイミーさん、野良猫って…。」


「わたくしも、すっかり動物の猫を探していました。」


「エイミー、ニーの事なんて説明してたの?」


「あれれ?」


エイミーさんは俺たちよりも、お母さんにきちんと説明しなさいと怒られていた。


では、その猫耳男性を探すとするか。けどその獣人と近づくことで意識を失う程に体調が悪くなる理由は何か想像がつかない。


その日は一度帰宅し、翌朝暗いうちに馬車を走らせた。まだミッションも出てはいないし大丈夫だろう。なおエイミーさんとマリリさんにはお母さんの体調が心配な為に、そのままエイミーさんの家に泊まって貰う事にした。



俺たちは向かいの家の陰から、エイミー家の玄関を見張っている。俺の足元にはカレンが座り、まだ眠そうな年少組を抱えている。


タリリは通りを何往復も歩き様子を伺っている。


向こうの通りにはジェシカさんとフランシスカさんが張っている。


「ぴろりろーん!」

(ミッション エイミーさんのお母さんを遠ざけろ。 制限時間 120秒)


(昨日と全く同じミッションだ。来るぞ。)

(了解よ。)


(来たー。そっちにいくよー。)


黒髪の上に猫耳を覗かせた、背の高い少年が歩いてくる。フランシスカさんに気付いた様だが、そのままエイミーさんの家に向かっている。

その格好は野良猫にはとても見えない。柄の入った長袖のシャツに青いスラックスを履き、汚れも見えない。


人違いかと思っていると、その整った顔をした猫人族の少年は軽く、左右を確認するとノックや声も掛けずにドアを開けて入って行った。


(星は入室した。ただちに確保する。)

(何よ、星って。)

(捕まえますよー。)

(室内のこちらも確認しました。ストーンウォール。)

「ストーンウォールです。」


その瞬間、猫人族の周りにストーンウォールの壁が取り囲む。


「くっなんだ?、ハメやがったな!」


「私はシスターマリリです、話を聞いて下さい。」


「シスターが何の様だ。」


「エイミーさんのお母様についてお話が有ります。」


「そいつが何だって?俺は何も強要なんてしてないぞ!」


「このままなら、最悪彼女の命は明日までしか保ちません。」


「「え?!」」

「何?!どういう事だ、教えろ!」


エイミーさんとお母さんが息を飲むのが分かる。猫族の少年も声を荒げているが、心配はしているようだ。


「原因は分かりません。ですが貴方が来る度に彼女の症状が悪化しています。」


「俺は何もしていない!」


「はい、だからお話をさせて頂けませんか。」


「ああ、知ってる事は何でも喋るからコイツを助けろ!」


俺たちが家に入ると、ストーンウォールは消えており、母親が横たわるベッドの横にエイミーさんと猫人族の2人が立ち尽くしていた。


母親にはマリリさんが断続的にヒールをかけ続けている。


(ミッション失敗! エイミーさんのお母さんを遠ざけろ。 )


ミッションは失敗したがマリリさんのお陰か意識はあるようだ。カレンは彼女が落ち着くのを見ると、少年に語りかけていく。


「家は?」


「スラムだ。文句あるか。」


「同居人とかペットとかいる?」


「いる訳無いだろ。」


「そう…。」


カレンはフランシスカさんと交代した。


「その洋服随分と綺麗ですが、こちらのお母様からでしょうか?」


「は?まさか、お前は盗んだと思ってんのかよ。」


「では、どの様に?」


「夜飯を食わしてくれる、奴がくれんだよ。」


「家だけじゃ無かったんだ…。」


少年の答えにエイミーさんは動揺を隠せないでいた。


「聞かれなかったからな。」


「では、その方から他に受け取っていませんか?」


「他ってなんだよ。」


「全て教えて頂きます。リング、ペンダント、ポーション、整髪料、化粧品、そして呪いのアイテムまで、全て。」


「呪いってなんだよ!」


「精霊さん、呪いのアイテムって分かる?」


「おはよー。呼ばれたよー。」


光の精霊さんはポンと頭上に現れると、少年の腕をその小さな指で差した。


「あれだよー。」


俺が少年の腕を捲り上げると、黒い魔石が嵌った銀の腕輪が現れた。


「これは、あの女が俺の黒髪に合うからって渡して来た奴だ。俺はなにも知らねぇぞ。」


光の精霊さんは腕輪に近づくと、鼻を摘んでフラフラと俺の頭に落ちて来た。


「腐ってるよー。臭いよー。」


そんな事を言われた少年は腕輪を外そうとするが、ガッチリと嵌っていて動かない。


「あれ?おかしいぞ。朝は外れたのに。」


「呪いが発動中だからー。無理だよー。」


「マリリさん、呪いの解除って出来ます?」


俺の質問にマリリさんはヒールを掛けながらも、首を横に振って応えた。さて期限はあと1日しかない。腕輪を渡した女性に解除させるか、呪いを解除するか。その選択にミスを許される時間が無い。

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