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ミッション エイミーさんのお母さんを治療しろ。

タイトルを変更しました。

「ヒール」

「キュア」


マリリさんがエイミーのお母さんの胸に手を置いて、魔法を唱えている。少し呼吸が楽になったと言うが完治はしていないようだ。


「申し訳ありません。今の私では病名の特定が出来ません。」


マリリさんが悔しそうにしている。


「いえいえ、薬を飲めば動けますから。」


そう言って逆にマリリさんの頭を撫でて慰めている。


「お母様、娘さんは私達が責任を持ってお預かり致しますので、エミリーさんのご同行をお許し願えませんか。」


カレンはマリリさんの代わりに、お母さんへ丁寧に話している。


エミリーさんはハラハラした様子で見守っている。


「こんな娘で良いんでしょうか。足手まといになりませんか。」


「私達も最近までは初級ダンジョンで精一杯でしたから、最初は足手まといでも良いんです。」


「それではよろしくお願いします。」


そう言ってベッドの上で頭を下げていた。


「アンタはどうなの?」


カレンが耳打ちしてくる。


「何も分からないな。マリリさんに詳しく聞いてみるから。あと、服を脱がせて外傷を見てくれ。アザとか傷とかな。」


「じゃあ、あっち行ってなさいよ。」


「了解。」


俺が席を外すと戸惑う親子を宥めながら、診察が再開された。ミッションでも発動するかと思ったが予想が外れた。仕方なく街並みを眺めている。



最低でも1週間に1度は顔が見たいと言う、エイミーさんの要望もあり暫くは、ドールのダンジョンで稼ぐと伝えて家を出た。



今は帰り道の途中に寄った甘味処にいる。軒先にテーブルが2つと店内に4つテーブルがある店だ。


「エイミーちゃん、いらっしゃい。」

「おばちゃん、久しぶり。」


どうやらミカンちゃんが一目で気に入って馬車を停めさせたこの店はエイミーさんの知り合いのようだ。


「ミカンはこのハチミツゼリーがいいです。」


「エイミーさんのお勧めは?」


「ハニーロールですね。パンにいっぱいハチミツが挟まっていて美味しいんですよ。」


「じゃあ、ハニーブレッドってのは?」


「これもパンにハチミツが塗ってあって美味しいんですよ。」


「え?どこが違うの?」


「え、パンが違うんですよ。こっちがふわふわで、こっちがカリカリなんですよ。」


「そうなの、じゃあふわふわで。」


「基本ハチミツなんだな、砂糖は無いのか?」


「有るわよこっちに。」


カレンがメニューの端を指差している。


「シュガーロール 銀貨1枚かよ。高いな!」


「アンタもハニーロールで良いわよね。」


「ああ。」


注文を終え、暫くするとおばちゃんがお盆にお茶を持ってやって来た。


「まずお茶ね。苦いからね。」


再び戻ってくると、ミカンちゃんの前に木の器に盛られたねずみ色のゼリーの上に濃いハチミツをかけたハチミツゼリーが運ばれて来た。


次はヨナーの前に同じハチミツゼリーが置かれた。

後のメンバーにはハニーロールが、唯一タリリだけがハニーブレッドを頼んでいた。


「甘いです。」

「美味しい。」


ゼリー組みから称賛の声があがる。ハニーロールの組みは一口スプーンで口に運んだら、驚きの表情で見つめ合っていた。


「ふわふわね。」


「これは美味ですわ。」


「ローレンシウム様に感謝を…。」


「もっと下さいよー。はい、あーん。」


「アンタはもう食べたら駄目よ!」


「ラッキー!あーん。」


カレンの鋭い視線を受けながら、ほぼ全てのハニーロールをジェシカさんの餌付けに消費した俺は、少し物足りなさを感じながら、みんなの幸せな様子を眺めていた。


「第1回 パーティ会議!議題は家についてよ。」


スイーツを食べ終えそのまま会議に突入した。何故か俺以外はまだカップにお茶を残している。俺はハニーロール完食と同時に飲み終えた為に、手持ち無沙汰だ。


「エイミーさんもヨナーちゃんも増えて、コイツも別棟だし、これ以上教会に迷惑掛けられないわ。だから、部屋を借りようと思うの。」


「出来れば教会に近い西区が良いのですが。」


「教会から出るとなると、治安の良い所が良いですわ。」


マリリさん、フランシスカさんの順に意見をのべていく。


「私も家賃より、安全を優先するぞ。」


「私の家なら1時間も有れば、楽勝ですよー。アンナも喜ぶしー。」


「却下です。」


ジェシカさんの意見に対して、フランシスカさんは言い切ってから、ハッとする。


「え、あれ?はい、安くて教会に近い所ですよね、だったら西区の幽霊通りですね。」


エイミーさんはフランシスカさんが真逆の事を言い出した事で怪訝な顔をしながらも、記憶を頼りに候補地を提案している。


俺は拳を握りしめて、喜びを身体中で感じている。

遂に来た異世界っぽいイベントが。


「良し、その幽霊屋敷の謎をパパッと解決して格安で物件ゲットだぜー!」


急に立ち上がった勢いで椅子が倒れ、店内の注目を集めるが俺はそんなんじゃあ止まらない。


しかし、エイミーさんは俺に手を振って慌てている。


「いえいえ、教会を挟んで反対側に大きな商店街が出来たので、昔からの店が何軒も潰れて人通りが無くなった所を幽霊通りって呼んでるんです。」


くそ、幽霊は幽霊でもゴーストタウンの方か!一気に疲れが出た。


「そこに行ってみましょう。マリリさんが仕事中はお店をしても楽しそうよね。」


「わたくし、売り子さんがしてみたいです。」


「いいですねー。雑貨ですか?飲食店ですか?」


「ミカンはぬいぐるみをお盆で運びたいです。」


おいおい、長年やって来たプロの方々がどうにもならない場所なんだぞ。大丈夫か?


俺の不安を余所に馬車は幽霊通りを目指してすすんでいる。教会から歩いて10分もかからない所にその通りは有った。


道の両側に全部で10件程の商店が並んでいる。開いているのは薬屋と流行とはほど遠い感じの服屋の2軒だけだった。


その為にまだ明るいにも関わらず、通行人がいない為に通りが薄暗く感じる。


通りの北側に2軒の店があり、南側は全滅だ。その南側の中央に他店舗の2件分の大きさの店があり、貸店舗の貼り紙が貼られている。


「これだけの大きさが有れば、みんなのベッドも置けるわよね。」


「ですが、まずは中を確認しましょう。」


ここからの経緯を追って説明すると、翌日にこの西区の管理者である区長を訪れると初めは面倒臭そうしていたが区長だが、区長の息子さんが俺たちがダンジョンを発見したパーティだと気付くとそこからは、とんとん拍子に進んで行った。


なんと区長自ら案内をかって出ており、息子は代わりに残るように言われたようで最後まで、文句を言っていた。彼としては案内役を横取りされた物だからかなり理不尽そうにしていたが、これが原因で家族仲が悪くならなければ良いのにと他人事ながら思った。


「うん、私は決めても良いわ。」


「ミカンも良いです。」


「手を加えても良いとの事でしたので、わたくしも問題は有りません。」


「地下室と屋根裏どちらもあるのか、うーん迷うな。」


「アンタ、そんな所で寝るつもり?」


「ああ、秘密基地は男のロマンだ。」


「あ、ミカンもロマンが良いです!」


「私達は教会からも近いので問題有りません。」


「ふふふ、カケル君にミカンちゃん。残念ながら幽霊には地下室と決まっているのですー。」


「ずるいです。」


「そうだ、そうだ!」


ミカンちゃんが膨れているが、ジェシカさんの事だから冗談だろう。


あとはタリリと新人2人だが、タリリはマリリさんがOKと言えばOKだから良しとして。新人さんの回答は同じだったが、コントラストの差が激しかった。


「私なんて初心者で何も分からなくて、しかも、えっと…。それでもいいなら、良いです。」


「横になる場所が有れば良い。」


結局のところ全員一致の合格で、その場で1年分の家賃の支払いを済ませ契約が完了した。区長はホクホク顔で帰って行った。なんでも俺たちをエサに他店舗の呼び込みをかけるらしい。



こうして住居を確保した彼女達は、ヨナーちゃんの衣食住の衣を確保すべく、俺を残して新しい商店街へ敵情視察と称して意気揚々と出掛けて行った。


「向こうが幽霊ってのも納得よね。」


「本当ですねー。」


取り敢えず人が多い。王都に比べて道路が狭い事もあり、人が溢れている為にすれ違う馬車のスピードも控えめだ。


また商店街も長くその分店舗数も多いし、その全てが繁盛しているように見える。


「こことそこの店は王都にも有ったわよね。」


「あちらの通りにはドワーフ&ドワーフも有りましたよ。」


「パンプキンズも有ったです。」


有名店が俺たちの店舗の何倍もの広さで営業しているし、客は引っ切り無しで途切れる事は無い。

ライバルは強敵で前途多難だ。


ウチの女性達がヨナーちゃんの為に選んだ服は、黄色のワンピースに白いフリルのついたエプロンと猫耳フードの着いたスウェット、ダンジョン用としてはブレストアーマーとその上から被れる様にゆったりとした厚手のローブを購入した。


俺が聞いたのはそれぐらいで、下着とかシャツとかまだまだ色々と買い込んで来たらしい。帰って来た頃にはヨナーちゃんはお疲れのようで、カレンの背中でグッスリだった。


「ヨナーちゃん、ちっちゃくて可愛いから何着せても似合うの。だからついつい買い過ぎたわ。」


「けれども、着ていた服しか無かった訳ですから、これぐらいは必要ですわ。」


「あーアンタ、ヨナーちゃんはハムスター族なんだって。小さな耳と頭から背中にかけての黒い毛が特徴なんだって、店員さんが教えてくれたわ。」


「じゃあ、その対策はバッチリなのか?」


「え、対策?」


「少数民族のハムスター族の生き残りなんだよな。ハムスター族ってバレるだけでも結構危険じゃないのかと思ってな。」


「そうね、ダンジョンならフードを被っておけば問題ないんだけど、街での服装よね、帽子を被るように注意しておくわ。」


俺は少しだけでも長く、この少女が平穏な日々を送れるようにする為に頑張るかと思った。

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