ミッション 第3王女と会話しろ
(ミッション フロース王国 第3王女を誘拐しろ! 制限時間 12日) ミッション成功!
意味が分からない。落ち着いた少女に聞くと
「ヨナー ・シュリシ ・チューラ」
と名乗った。帝国領にあったチューラ国の第3王女と言う意味らしい。ミッションにはフロース王国 の第3王女と書いてあるのに、この少女はチューラと言う国の王女なのだ。
「本当にフロース王国 の 第3王女って書いてあるの? フロース王国 で じゃなくて?」
「ん?」
もう一度ミッションを見直すと「の」とも「で」とも書いて無い、あるのは空白だ。
「正確に言うと フロース王国 (空白) 第3王女を誘拐しろだな。のもでも無いな。」
「それなら、フロース王国の採掘者によって奴隷にされていた第3王女を誘拐しろって事では無いでしょうか。」
「アンタ、少しづつでいいから文字を教えなさいよ。私も教えるから。」
また俺の信頼度が下がった。そろそろ底をつきそうだ。
俺たちはヨナーを連れて、教会の部屋に帰って来た。腕輪を使えないから予定より遅くなり、閉門時間ギリギリだったのには焦った。
「ヨナーです。ありがとう。」
そう言って下げた頭には小さく細い耳がついている。何かの獣人だ。
12才でさっきまで奴隷だった少女は、俺が食堂を借りて作ってきた唐揚げのせナポリタンをミカンちゃんとならんでほっぺたを一杯にして食べている。
「ゆっくりでいいから。足りなかったら作るし、だれも取らないから、安心してゆっくり食べて。」
あまりの詰め込み具合に、カレンが心配になってそう言う。ミカンちゃんも負けじとほっぺたがぱんぱんになるぐらい口にいれている。
彼女から聞いた話はこうだ。彼女達は天空の民と呼ばれており、ある山の上に街や城を建てて暮らしていた少数民族だった。
彼女達、天空の民は暮らす山に穴を掘り、鉱夫として生計を立てていた。しかし、今から2年前不運にも鉱山でミスリルが採掘されてしまった。
それまで帝国領内でも、小国であった為にチューラ国として独立していたがミスリルが発見された事で事態が急変した。
帝国は交渉も無く、たった3カ月でチューラへと進軍し、その後1週間にして人口2000人のチューラ国は帝国領から消滅した。
その王族は殺され、民の大半は帝国兵の手によって殺された。生き残った者もミスリル鉱山で奴隷として強制労働させられているとの噂を聞いたと言っていた。
彼女自身は帝国兵に攻められた時に、10名の近衛と王城を脱出した。しかし度重なる追っ手によって10名いた仲間も今から1年前に最後の1人が彼女を逃す為に犠牲になった。
ツテもない彼女は1人で彷徨っているうちに、奴隷狩りに遭遇し、ただの奴隷として奴隷商人の元へ商品として売られた。
更に半年が過ぎ、その奴隷商人がフロース王国に奴隷を密輸した際に彼女も一緒に運ばれてきた。それで例の採掘者のポーターとして買われる事になったという。
「うーん。」
重い話を聞かされてつい唸ってしまう。奴隷だった間の事はそれ以上聞かなかったが、想像を絶する物だっただろう。
俺もカレンの前じゃなくて帝国に転移してたら、確実に奴隷一直線だなと思うとカレンに感謝しかない。
「ありがとうございます。」
俺はカレンの手を取り感謝の言葉を述べる。
「え?何、気持ち悪い。」
カレンは手を拭うと、ヨナーちゃんに向き合った。
「貴女はもう奴隷じゃないわ。やりたい事が有れば手伝うし、この国には孤児院だってあるわ。」
ヨナーちゃんが口を開きかけたその時、扉をノックされた。
そこにはシスターさんに連れられた、少女が立っていた。
少女は深くお辞儀をすると
「採掘者のカレンさん、私をパーティに入れて下さい。お願いします。」
と頼み込んできた。
彼女の名前はエイミー、14才で採掘者になって2ヶ月目の新人採掘者だ。ベージュ主体のワンピースの裾に大きめのの赤系のチェック柄が入った服装だ。
背中には小さめのリュックと大きな鉄の盾を背負っている。
シスターさんはエイミーを置いて会釈すると、退出していった。
「エイミーさんはどうして、ここへ?」
「お母さんが病気でその治療費が必要なので。」
「そうなんだ。」
「ぴろりろーん!」
(ミッション エイミーの母親の病気を治せ。 制限時間 7日)
「何という、タイムリー。」
(エイミーの母親の病気を治せって指示だ。取り敢えず会いにいくか?)
(本当にそんな内容なの?)
(同じ日に2人も、何か運命的な物を感じますわ。)
(くれぐれも慎重にお願いします。)
「あ、あの…。」
エイミーさんは俺たちが急に黙り込んで、見つめ合っているから不安になって声を掛けて来たようだ。
「エイミーさん、お母さんはどちらに?」
「東区ですけど。」
「今から挨拶に行くわ。案内して」
「ちょっと待て!今何時だと思ってる?」
「あ、そうね。エイミーさんは今夜はどうするの?」
「あ、あのパーティに入れて貰えるまで、お願いするつもりでしたから。」
申し訳無さそうに俯き加減で返事をしている。
「アンタは床で寝なさい。アンタのベッドで今日だけエイミーさんとヨナーちゃんに一緒に寝てもらうから。」
「いや、俺のベッドここには無いからな。」
「私はいつも床だから。」
そう言うとヨナーちゃんはそのまま床に横になると、丸まり膝を抱えた。
「アンタ。」
俺はヨナーちゃんを抱きかかえると、ベッドに乗せた。抱き上げた彼女の軽さにゾッとした。
翌朝事件は起きた。
その少女はアルマと名乗る小人族だった。小人族とは成長が10才ぐらいで止まる種族で精霊との親和性が高いのが特徴である。
肩に茶色の猫を乗せた少女は、俺が部屋の外でカレン達の準備が終わるのを待っていると、ノックもせず部屋に入って行った。
「その胸板が薄い女がカレンだったか。パーティに入ってやろう。」
「結構です。お帰りください!」
「いや、それは困る。」
「いえいえ、昨日2人増えてますから無理です。」
「私は小人族だ、3属性も使えるのだぞ。どうだ?」
「3属性は既にいますので必要ありません。どうぞお引き取りを。」
「使い魔もいるぞ…。」
「いりません。」
「ふえっ」
「ふえ?」
「ふえええええーーん。」
「ああ、ごめんなさい。」
「騙されるな、カレン。採掘者なら見た目通りの年齢じゃないはずだ。」
「あ、ああ、そう。そうなの?」
「そうだよー、騙されないでー。この人は小山の女人の匂いがするよー。」
「チッ、素直に騙されろよな。」
「え、え?」
「もう依頼なんて関係無い。舐めた態度を取った事を後悔しても遅いぞ。」
「はぁ?どっちが舐めてるのよ。誰が胸板が薄い女よ。」
あかん、カレンが切れている。ベリス辺境伯のスパイ駄目な奴だ。
「あと、そこの女の子も小山の女人の匂いがするよー。」
精霊が指差したのはエイミーさんだった。
「え?!」
「エイミーさんはいいの。お母さんに逢い行くから。心配しないで。」
「無視してんじゃねー!!」
アルマの前には火、水、土の3つの属性の玉が浮かんでいる。それはグングンと光を増している。
俺が右腕を伸ばして人差し指で狙いをつけようとした時だった。
「うるさいです。」
「なあああ!」
アルマの頭上から大量の水が降ってくると、彼女だけをずぶ濡れにした。床やベッドには一滴の水も着いていない。
滝に打たれたかの様に髪の毛から下着までずぶ濡れなアルマはミカンちゃんを睨むと、消えてしまっていた3属性の玉を再び出そうとする。
「そこまでです。わたくしから辺境伯にはお伝えしておきますから、身の回りを整理する事をお勧め致しますわ。」
アルマの首元にはフランシスカさんのレイピアが鞘のまま突き付けられていた。
「クッ。」
アルマはフランシスカさん以外にも、マリリさん、タリリと集まって来たのを見ると、ベッドに避難していた猫を肩に乗せると、カレンに背を向けて部屋から出て行った。
事のいきさつをカレンから聞いたフランシスカさんやマリリさんの意見はこうだ。
「恐らく、本命はエイミーさんだったのでしょう。辺境伯はアルマはバレてもエイミーさんから目を逸らせるなら、平気で謝って来たでしょう。」
「ジャイアント・アリゲーターを倒したその手腕に何か秘密があると探りを入れてきたと言う事ですか。」
「恐らく、年端もいかぬ少女ばかりのパーティに、公爵家からわたくしを同行させている事にも何か裏が有るのではと放置できない理由になっているのでしょう。」
「秘密は有りますが裏は無いと分かって頂く為には、エイミーさんでしょうか。」
「全てを排除しては、懸念がより強くなる可能性があります。その点からもエイミーさんがよろしいかと。」
「エイミーさんに関してはそんなに心配はしていません。きっと母親の治療費を負担する代わりに、その日の、出来事を報告させる程度でしょう。」
エイミーさんは2人の話に頷いている。
「わたくしもそう思いますわ。彼女自身に与える任務はあくまでも簡単な物、最悪報告が無くとも問題ない物でしょう。きっとわたくし達の秘密を探れとか、誰と会っていたのかと言う情報を求められてはいないでしょう。」
うんうんとエイミーさんは必死に頷いている。
「ただ彼女が選ばれた理由はわたくし達のと同じ年齢の少女と言う事と、まだ駆け出しの初心者と言う事でしょう。」
エイミーさんが「え?」と疑問を浮かべている。
「それは彼女の成長具合をチェックすれば、秘密を探るに十分足りると言う事ですよね。」
「その通りと考えますわ。実際わたくし自身の変化には戸惑いすら感じていますのから。」
「それは私もですわ。ではここまでは公然の秘密でも構わないと。」
「はい、ヘンタイさんに関する事は勿論伏せますが、わたくし達がその代役をする事は問題ないと考えています。」
エイミーさんは2人の間で何度も、顔を左右に動かして、2人の話について行こうと必死になっている。突然部外者が現れたと思ったら、今度は自分の扱いを議論されだしたのだ。必死にならざるを得ない。
「マリリさん、フランシスカさん、そろそろエイミーさんの自宅に出掛けるわ。」
エイミーさんを交えた秘密に関する会議が終了すると部屋を出て、自宅の有ると言う東区へと馬車を走らせた。
エイミーさんの家はメインストリートから離れ、民家が密集する場所にあった。小さな家がギッシリと立っている。そんな中の木造の平屋の家がそうだった。
「お母さんただいま。薬飲めた?」
「ああお帰り。アンタこの方達は?」
エイミーさんのお母さんは40代後半の女性で、纏めた髪には白髪が目立っている。格好はエイミーさんと似た落ち着いた色のワンピースにエプロンという格好で少し顔が青白い事以外はごく普通の街で見かける女性となんら変わらない。
「今話題の2人目の聖女様のマリリさんとカレンさん達。」
「ダンジョンを発見した採掘者さん達かい?どうしてそんな方達が家なんかへ?もしかして、アンタこの人達のパーティに入れて貰いたいってゴネてるんじゃないのかい?」
エイミーさんのお母さんは興奮した為か、咳が出始めると止まらなくなって、エイミーさんが背中をさすっていた。
「お母様、私はシスターマリリと言います。エイミーさんよりお母様のご様子が良くないと聞きまして、本日参上致しました。」
「そうかい、わざわざすまないね。」
「お身体の様子を見せて頂いてもよろしいでしょうか。」
マリリさんはエイミーのお母さんをベッドに寝かすと症状を確認していく。そんな様子を俺たちは眺めていた。
新作として
「少女になって剣に戻れない聖剣は俺と手を繋いで旅をする。」
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