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精霊銀を受け取れ

沢山書き過ぎて発熱しました。

今日はこれで寝ます。

おやすみなさい。



「それでカケルさんは、元の世界にお戻りになりたいのでしょうか。」


予想していた質問だが、実際にされるとグッと来るもんがある。


「両親や妹にも何も言わないでこっちへ来たからな、それなりには気掛かりにはなってるな。また向こうの世界にはモンスターもいないし、こんなに盗賊もいなかったから命の危険は無く安全だったし。」


「だから帰れるものなら帰りたいんだが、ここまで来た方法が分からない。車に乗って家に帰る途中で気が付いたら、アザリアの街に立ってた。」


「その数分後にカレンに会ったんだ。」


カレンと目が合う。


「そうだったんだ…。」


「ああ、だから俺はあの時、本当にこの世界の事は何も知らなかったんだ。カレンに拾って貰わなけれはきっとのたれ死んでたと思う。精霊もいなかったしな。」


カレンはまだ不安そうな顔でこっちを見ている。


「だからな、その恩も返しちゃいないし、それに。」


最後まで言う前に背中をドン押された。


「それに何ですか?こんなにも美女が勢揃いしてるんですよー。勿体ないですよー。」


ジェシカさんに押され、カレンと抱き合ってしまう。ジェシカさんはマリリさんとタリリさんの手を引いて来ると俺の方に押すと抱き着かせた。


そこへミカンちゃんが走り込んで来て、飛び乗ってくるとその衝撃が伝わってきた。


ジェシカさんはフランシスカさんをどうしようか悩んでいたが、結局1人だけで抱き着いてきた。


「ごめんなさい。」


フランシスカさんは独り言を呟くとカレンの方へ飛び込んでいる。


「どうだー!これでも帰るって言うのかー!」


暑いし、ぎゅうぎゅうだけどいい匂いだ。カレンと俺はまだお互い依存関係かも知れないが、ここまでされて決められないのは俺のじゃない。


「俺は一緒にいる。いつまでも、どこまでも。」

「いいの?」

「よっしゃー!」


「じゃあ、みんなみーんな、一緒ねー。」


光の精霊がそう言いながら、俺たちに向かって飛んきて、当たったと思った瞬間に俺たちを囲むように光が粒のようにキラキラと舞い上がっていく。


それがチカチカと光りを反射しながら、ふわふわと降りてくる。


「んーコネクトー。」


その声と共にポンと精霊も姿を現し、俺たちの頭上をクルクルと飛び回ったあとで、カレンの頭の上にうつ伏せに寝転んだ。


「アンタ、今の精霊の加護じゃないの?」

「お恥ずかしながら、聞き覚えが有りません。」

「わたくしも存じ上げませんわ。」


「今のはどんな効果があるんだ?」


ん、返事が無い。さっきまで頭上を飛んでいたはずだが。


「あれ、おーい?」

「きっと寝たです。まっくらです。」


ミカンちゃんの声で窓の外を見ると、すでに夜の帳が降りていた。


みんなバラバラと離れていき、ソファに腰を下ろしていく。


「あら、いつの間に。」


マリリさんが左手の人差し指を見ると、銀の指輪がはまっていた。その指輪には細い溝が模様の様に掘られており、その溝の中を金色の光がゆっくりと走っているのが見える。


フランシスカさんは左手を頭上にかざしながら、角度を変えて確かめる様に見ている。



「マリリさん、もしかして精霊銀でしょうか?まさかとは思いますが…。」


「え?!精霊銀ってミスリルよりも希少な金属よね。」


「ええ、希少さだけで言えば、ミスリルどころか、世界樹の枝よりも遥かに希少です。」


「王国の歴史上では、第3代国王のグイドが炎の精霊銀の力でダンジョンから溢れ出た魔物を討ち果たして国を守ったと有ります。」


フランシスカさんの説明を受け、マリリさんも記憶を頼りに説明をしてくれる。


「教会の伝承によると2件のみです。1つは疾風の巨人 グリューンです。彼は己の発した声よりも速く動いたと言われています。」


「2件目は不死者 マーガレットです。彼女はどんな傷を負っても瞬時に回復した事から、そう呼ばれています。」


確認されている3人だけでもバケモノだらけだ。そんな精霊銀がここだけでも7つもある。俺の精霊は大丈夫なのか?心配になってくる。そんな気持ちはジェシカさんも同様で。


「そんな凄い物がここに7つも有るんですかー!」

「本当に非常識よね。」


「伝承が本当ならば、皆さん魔法の行使には極力ご注意をお願いします。」


「本来の効果だけでは無く、精霊銀には精霊へのパス、繋がりを強力な物にする事が知られています。」


「疾風の巨人グリューンをエルネスト伯爵が配下にすべく、当時たった1人の家族だった娘を拐い人質に取りました。そして娘に奴隷の首輪を付けられた事を知った彼は逆上し、精霊の力を暴走させてしまい、伯爵領全てが更地となりました。」


「犠牲者は15000人、領民全てがその一瞬で亡くなりました。」


マリリさんは深刻そうに、そして慎重に言葉を選んで話している。


「目撃者もいないのにどうして、そんな事が分かるんだ。」

「そう言えばそうですねー。みんな死んじゃったんですよねー。」


「それは本人からの証言でした。グリューンは王城に単身乗り込み伯爵の悪事を報告すると、もうこの国には愛想が尽きたと告げ姿を消したそうです。」


「娘さんの首輪取れたんですかねー。」


俺もそれは気になった、最後は精霊銀の力で引きちぎりそうな気はするが。


「その後2人を見たと言う報告は残っていませんが、奴隷の首輪の魔石や加護石程度、本物の精霊銀の加護の前では用をなしません。」


「これだー!」


マリリさんのお陰で閃いた。収納を使わずに奴隷の首輪を解除できるぞ。


「俺たちが外す適当な演技をしている裏でジェシカさんの指輪を使って首輪を外せば、収納を使わずに解除できませんか!」


マリリさんは暫く考えるが、あまりいい顔はしていない。


「私達も持っていますから、それで外していると思われるだけですわ。」


「精霊銀なんて歴史上3つしか無いんですよね、誰も見た事有りませんよね、だからだれも分からないとは思うんですが。」


「いえ、その特徴は書き残されていますわ。白く輝く銀には精霊紋が刻まれ、その中を精霊が行き交っていると。」


「この溝が精霊紋なんですねー。溝の間が確かに光ってますよねー。」


「王国での記録も同様です。王国の歴史を習う上で避けては通れない事ですから。」


「うーん、言い逃れが難しいですね。」


「やっぱり、アンタは面倒事ばっかり持ってくるんだから。」


カレンはわざとらしく大きなため息をついた。


「ミカンは嬉しいです、レンちゃんは嬉しく無いです?」


ミカンちゃんが本気で悲しそうな顔でカレンを見る。


「ミカンちゃん、カレンさんは本当は嬉しくてふっわふわなんですよー。だけど恥ずかしいから怒ってるフリをしてるんですよー。」


ジェシカさんはニヤニヤとした笑みを浮かべながら、ミカンちゃんに伝えている。


「レンちゃん、ふわふわです?」

「ジェシカさーん!」


ほら、カレンが顔を真っ赤にして飛び上がった。

カレンが指輪を暴走させない事を祈って、3人が追いかけっこをしているのを傍観する。


フランシスカさんとマリリさんがこちらを見ている。そんなどうするんだこの指輪って非難の目で見られても困る。俺にはどうしようもない。


だが、1人そんな雰囲気も関係ない奴がいた。


「マリリ、凄いぞ!!」


そいつは今、外から駆け込んで来てマリリさんに忠犬のように尻尾を振っている。


「タリリ、エアリアルソードの一振りで、木を切り倒せたぞ。もう、そこの林は綺麗サッパリだぞ!」


「誰もいないのは確認しましたか?ケガをさせていませんよね、タリリ。」


「ああ、大丈夫だぞ。問題無い!」


「それでは皆さん、時間も遅く申し訳ありませんが、引っ越ししますのでご協力をお願いします。ジェシカさん、倒木の回収をお願いしますわ。」


「え?何故だマリリ?」


「このコテージを隠す林も無くなりましたし、切り跡から色々と邪推されるのも遠慮したいですから。」


「す、すまん。」


「これからは、事前に教えて下さいね。タリリ。」


1メートル程のかなり高い切り株を残して、5本の木が切り倒されている。その断面は滑らかな平面だった。


「おい、無駄な切り方だし、コテージに倒れてきたらどうするつもりだったんだよ。」


俺は木を収納しながら、倒れてる方向がまちまちな状態を見てタリリに文句を言わずにいれなかった。


「だ、大丈夫だ。実際倒れてないだろ。問題無い。」


くそ、マリリさんじゃないと反省すらしない。コイツはマリリさんが傷つけられたりしたら、すぐに街1つ滅ぼしそうだ。タリリに精霊銀だ。なんとかに刃物より1億倍は危険だ。


精霊銀に引っ越しと続き、俺が異世界人だったことや決意表明はなんだか既に忘れ去られているようだが、御者台の横に座るカレンの横顔を見てると、まあいいかと思う。


「ん?どうしたのよ、何よ。こっち見てないで真っ直ぐ見て走らせなさいよ!」


俺は頬を指差して


「ケチャップついてるぞ。」


「バカじゃない、お風呂入ったわよ。」


彼女はそう言いながら、手の甲で頬を拭っているのを見るのが楽しく感じている。


ああ、カレンの恥ずかしい秘密の暴露を聞き逃したなと今更ながらに後悔しているが後の祭りだ。


夜空を見上げると、見た事も無い星座と蒼く輝く月が浮かんでいる。月には兎はいないが、あの形は猫か、いやハーちゃんだなと1人たわいも無い妄想をしながら夜道を進んで行った。


本日はたくさんお読み頂き、お疲れ様でした。



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